1977年に初代が発売されたホンダ「アクティトラック」。ホンダ初の4輪モデル「T360」や、1967年に発売された「TN360」の後継モデルにあたる軽トラックだが、2021年6月にその歴史に幕を下ろすことが明かされた。
日本独自の軽トラックというカテゴリーのなかでも、個性的な設計で存在感を示していたアクティトラック。今回はライバルであるスズキ「キャリイトラック」、ダイハツ「ハイゼットトラック」などと比較しつつ、いかに日本の軽トラックが独自に進化を遂げ、優れた製品であるかを紹介したい。
またホンダには後継となる軽トラックは存在せず、アクティトラックの終了は軽トラック市場からの撤退を意味する。この撤退が今後ホンダにどのような影響を及ぼすのかも考察したい。
文/渡辺陽一郎
写真/編集部、HONDA
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■国内シェアを失いかねない軽トラック市場撤退
ホンダ「アクティトラック」が、2021年6月に生産を終えるという。販売店のホンダカーズに尋ねると「軽トラック市場の今後の動向と、新車を開発した場合の採算性を考えて、生産を終える話は聞いている。ただし1年以上先のことだから、詳細は不明だ。後継車種のことなども聞いていない」という。
次期型を投入するなら話は別だが、OEM車も導入せず、ホンダが単純に軽トラック市場から撤退すると問題が生じる。まずアクティトラックを使うユーザーが、次のクルマに乗り替える時に困ってしまう。新たな軽トラックを選び、販売店も見つけなければならない。
ホンダカーズも、軽トラックを売れず顧客を失う。そればかりか、軽トラックのユーザーが複数のホンダ車を併用している場合、そのクルマまで、別のメーカーに奪われる可能性がある。例えばアクティトラックが廃止されて、ユーザーがスズキ「キャリイ」に乗り替えると、スズキのセールスマンが有能であれば、併用するアクティバンまでスズキ エブリイに置き換わる可能性が生じるわけだ。
逆にアクティトラックが残れば、これを購入した新規のユーザーに、N-VANやN-BOXを売り込むことも可能になる。このような相乗効果を考えて、マツダ、スバル、三菱は、軽商用車の自社開発と生産から撤退しても(三菱ミニキャブミーブを除く)、OEM車を扱う。軽商用車の需要を繋ぎ、既存のユーザーを囲い込むいっぽうで、新たな販路も拡大もするわけだ。
そして農業の盛んな地域では、全保有台数に占める軽自動車の割合が50%を上まわり、そのうちの60%以上が軽商用車になる場合もある。
開発者によると「軽トラックは農作物や農器具の運搬に加えて、日常的な買い物や用事などの移動にも使われる。長距離を移動する時は、併用する乗用車に乗るが、近隣の移動はすべて軽トラックで済ませることが多い。従って軽トラックの需要は手堅く、販売台数は軽乗用車ほど多くないが、安定した需要を見込める」という。
このように日本の自動車ビジネスで、軽トラックの位置付けは大切だ。それなのにホンダは、提携やOEM関係を好まず、かつてSUVのOEM車を扱ったことはあるが、今は用意していない。商用バンのパートナーも単純に廃止した。
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