豆腐、角刈り、スマホ……。世の中を見渡すと「四角いカタチ」は浸透している。が、自動車業界ではそのカタチがどうにも根付かないかもしれない。
先日明るみになった「日産キューブ、2019年12月末で生産終了(販売は来年春まで」の報。これを耳にした時「またか」と思い、「まさか」とも感じた。振り返ると、四角いカタチのクルマが誕生しては消えていく。これが日本車の歴史の一端だ。
日産キューブも「またか」の一台に加わるわけだが、「まさか」という衝撃もある。キューブは現行日本車の「四角いクルマの雄」といっていいからだ。売れ筋コンパクトカーのなかで、これほど個性がほとばしるカタチはない。
そこでモータージャーナリストの清水草一氏に、四角いクルマのキューブの歴史やその魅力を解説してもらうとともに、歴代&現行モデルのなかから、四角いクルマを選出し、勝ち負けをつけてもらった。
文/清水草一
写真/ベストカー編集部 ベストカーWEB編集部
初出/ベストカー2019年11月10日号
【画像ギャラリー】世界の四角いクルマとこれから出る四角いクルマ
和ダンスが海外ジャーナリストに絶賛された日
■初代キューブ(1998〜2002年)
初代キューブはよく売れたけど、箱のバランスが崩れた安グルマで、別物だと思っている。
一方、2代目は、左右非対称のデザインで、バックドアの左側はウインドウだけ。このデザインを見た時はさすがにタマげたね。このキューブは史上初めて成功した和風自動車デザインであり、金字塔なのだ。
■2代目キューブ(2002〜2008年)
といっても、初代に続いて2代目も国内販売専用で、和ダンスのような和風デザインが世界に進出することはなかった。
ただ、モデル末期(2008年)にポルトガルで行われた日産オールラインナップ世界試乗会で、デザインが海外のジャーナリストから絶賛されたこともあって、ついに3代目は海外進出! 北米、欧州、韓国で販売された。
■現行3代目キューブ(2008〜2020年)※来年春まで販売する見込み
でも3代目は、外国人にも理解できるように、和風デザインの純度が落とされていたような気がする。ボディやウィンドウの丸みや無意味なお尻の出っ張りなど、やりすぎな部分が散見された。
結果は惨敗。イギリスでは一部マニアに人気を集めたというが、やっぱりオタク&変態的な人気にすぎなかったんだろう。現地生産じゃなかったから、値段も高かったし。
それにしても、あの傑作の系譜が、こんなにいとも簡単に消滅してしまうなんて。日産は自らの遺産の使い方がヘタだなぁ。本当にもったいない。涙が出ます。
日産へ直撃「ズバリ、キューブ生産終了のワケを教えて!」
清水さんが「本当にもったいない」と涙している。同様になぜキューブが消えるんだ? と涙するユーザーは多いはず。ならばその理由を聞くしかない。日産広報部へ直撃だ。
Q1/1998年に初代キューブが誕生しましたが、その狙いは?
キャッチコピーは「アソブ、ハコブ、キューブ」。コンパクトボディに多くの荷物を積め、月販が1万台以上の時期もありました。運転のしやすいサイズ感などがお客様に受け入れられたのだと思います。
Q2/2代目になるとガラリとスタイルが変わり、まさにキューブという四角いカタチになりましたが……。
はい。デザインは「一番いいシカク」を作ることを目指しました。具体的には「あっと驚く」個性的なデザイン、「クルマらしく」愛着の湧くデザインですね。
Q3/左右非対称のガラスエリアデザインなど、あっと驚きました。3代目はどんなデザインでしたか?
2代目のイメージを引き継ぎながら、クルマのスペックで競うことなく個性的なデザインで、存在そのものが他車と一線を画したクルマ、という立ち位置ですね。
Q4/ユーザーからの評判はどうでしたか?
先代同様、個性的なパッケージングデザインなどが好評をいただいていました。
Q5/2〜3代目ともにパッケージングデザイン、つまり四角さがユーザーに好評なのに、なぜ生産終了なのですか?
……理由につきましては、ご回答致しかねます。
Q6/現行型は11年間ほったらかし状態でしたが、次期型の開発計画もあったのでは?
それも回答致しかねます。
Q7/コンパクトカーのラインナップを減らすなら、個性の強いキューブよりマーチという感じもしますけど?
今回の生産終了はラインナップを減らす意図ではありませんから……。
Q8/最後にキューブを含め日本では四角いクルマが根付きません。なぜでしょうか?
キューブのお客様の購入理由の多くが「四角いスタイル」。四角いという個性は愛されていたと思うのですが……。
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