現在も日本の物流を支え続けるバンの代名詞ライトエース。特に、初代のコーチという名前から、ワゴンに名称を改めた2代目(ライトエースワゴンとしては初代)モデルがとんでもないクルマなのである。ミニバンというよりも、もっと豪華なクルマだった、M20系ライトエースワゴンを振り返る。
文:佐々木 亘/写真:トヨタ
【画像ギャラリー】ヘッドライトが独特すぎ!! ミニバン超えの走り「ライトエースワゴン」をギャラリーでチェック(11枚)画像ギャラリー■MPVってレクサスLMと同じかよ!
ライトエースワゴンが登場したのは、1979年。ワゴン脚光と銘打ち、クルマを「使われるのではなく、思うままに使いこなす」もの再定義する、新参者として登場した。
この時代のワゴンと言えば、キャブオーバーでバンを少し豪華にしたようなクルマが多い。しかしライトエースワゴンは、キャブオーバースタイルこそ他車と同じだが、当時の乗用車の代名詞でもあったセダンに近づこうという努力が各所に見えたクルマだ。
また、豪華で広い室内を「もうひとつの部屋」と考え、セダンには無い圧倒的な居住性を大きなウリにした。
ミニバンという言葉がまだ生まれる前だからこそ付けられた別名は、マルチパーパス・ビークル。つまりはMPVということだ。現在日本でMPVを名乗るのは、一部の高級ミニバンのみで、最近ではレクサスLMが代表的な例であろう。
無限の使い勝手があるとも言われるライトエースワゴンとは、一体どんなクルマだったのだろうか。
【画像ギャラリー】ヘッドライトが独特すぎ!! ミニバン超えの走り「ライトエースワゴン」をギャラリーでチェック(11枚)画像ギャラリー■セダンに学んだライトエースワゴンに商用車のイメージは微塵もない
車内に入ってしまうと、圧倒的なヘッドクリアランスと大きな窓以外は、意外とセダンに近いなと感じてしまうのがライトエースワゴン。
まず、この時代のワゴンとして異色だったのがフロアシフトという点だ。圧倒的にコラムシフトが多数派なのだが、ライトエースワゴンは4速フロアシフトにこだわった。それもマイクロバスのような動きの大きなシフトではなく、シフトストロークが短くてスコスコ入る。意外と、スポーティな走りを楽しむことができるのだ。
足回りにはフロントにアッパートーションバータイプのダブルウィッシュボーン式を採用、リアは非対称半楕円リーフスプリングが備わった。また当時高級車のために開発されたアンチハーシュネス機構(いなし機構)を、ワゴンに採用したのも異例である。
しかし、バン由来のワゴンを垣間見えるところも。最小回転半径は、8人乗りの大きなボディでなんと4.2mという小ささなのだ。ここはセダンに似せずに、取り回しの利を取ったのだろうか。
ラジアルタイヤを装着し、室内はフルトリム。遮音材をふんだんに使い風切り音対策も施される。ベッドのような厚いシートは、2列目3列目がフルリクライニングするし、ツインエアコンや豪華な音響設備も備わるのだ。
セダンと比較しても、その魅力は補ってなお余りあるだろう。ハンドルの角度がキャブオーバーバンの雰囲気を残しているが、昭和の時代に生まれた高級ワゴンは、間違いなく新しい乗用車のカタチであった。
【画像ギャラリー】ヘッドライトが独特すぎ!! ミニバン超えの走り「ライトエースワゴン」をギャラリーでチェック(11枚)画像ギャラリー■殻を破った高級ワゴンはヴォクシーへと昇華する
1985年には3代目ライトエースが登場し、ワゴンもフルモデルチェンジ。平成に入り4代目がタウンエースと統合され登場する。そして1996年、ライトエースノアとして、セミキャブスタイルに変わり、乗用車として一気に進化していくこととなった。
ライトエースの立ち位置としては、現在のヴォクシーの先祖ということになる。ヴォクシーのちょいワル路線や、独創性のあるデザインは、ワゴンの殻を破ったライトエースワゴン譲りか。
ライトエースワゴンもヴォクシーも、時代の先を行くニュービークル。ヴォクシーの先祖は、超個性的なクルマだった。
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