こんなクルマよく売ったな!!　【愛すべき日本の珍車と珍技術】軽自動車の激戦区で手強いライバルに果敢に挑んだホンダの秀作[ゼスト]が今こそ欲しい！

　これまで日本にはたくさんのクルマが生まれては消えていった。そのなかには、「珍車」などと呼ばれ、現代でも面白おかしく語られているモデルもある。しかし、それらのクルマが試金石となったことで、数々の名車が生まれたと言っても過言ではない。

　当連載では、これら「珍車」と呼ばれた伝説のクルマや技術などをピックアップし、その特徴を解説しつつ、日本の自動車文化を豊かにしてくれたことへの感謝と「愛」を語っていく。今回は、室内の広さと使いやすさにこだわった軽自動車、ゼストを取り上げる。

文：フォッケウルフ／写真：ホンダ

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■軽自動車でもファミリーカーとして使える能力を徹底追求

　ゼストはライフから派生したザッツの後継車として開発されたモデルで、4代目ライフとプラットフォームを共用している。

　クラストップレベルの広い室内空間と低床で大開口の荷室。小排気量ながらパワフルな走りを実現することで、パーソナルでの使用はもちろん、家族4人が一緒に使っても過不足なく、日常の生活圏内から休日の遠出まで多彩な用途に対応できる軽自動車を目指した。

　ゼストが登場した当時は、まだスーパーハイトワゴンが軽自動車クラスの主流になっておらず、スズキワゴンR、ダイハツムーヴといったハイトワゴンが売れ筋だった。ゼストはその2台に挑むべく、開発に際してはミニバンをはじめとする乗用車づくりで独自に培ったノウハウが注入された。

　 “「ゆうゆうどうどう」スタイリング”を標榜したスタイル。軽自動車クラスでトップレベルの広さを実現するために掲げた“「のびのびらくらく」スペース”。日常のアシ以外にも可能性を感じさせる上質な走りをもたらす“「きびきびすいすい」ドライビング”という、3つの要素を磨き上げることで、ライフやザッツでは崩せなかったワゴンR、ムーヴの牙城を攻略することを狙ったわけだ。

　外観は、どこから見ても頼もしさを感じさせるものとした。厚み感を強調しながら、張り出しを強めたフェンダーを四隅に配置することで、どの角度から見ても安定感のある全周台形フォルムを形成している。

　フロントは左右ヘッドライトの間隔を広げ、その間にメッキを施した直線的で太いフロントグリルバーを装着してサイズ以上の印象を与えるワイド感を演出。

　ボディサイドはセンターピラー部でキックアップしたベルトラインによってサイドウインドウを後方へ向けて狭めるとともに、リアピラー部をガラスで覆ってリアガラスとの一体感を表現しながら、スムーズな弧を描く流線型ルーフラインを実現。ダイナミックで伸びやかな勢いを感じさせ、軽自動車規格のサイズながら“「ゆうゆうどうどう」スタイリング”を実現している。

　リアはサイドにまわり込むコンビネーションランプと、テールゲートの幅いっぱいに伸びたガーニッシュを備え、ボディを大きく見せる面構成と相まってワイドな印象が際立っている。上級グレードの「ゼスト スポーツ」では、専用デザインの外装アイテムを加えることでロー＆ワイド感をいっそう強めたものとしていた。

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■低床パッケージングを生かして優れた実用性を発揮

　“「のびのびらくらく」スペース”の実現には、ミニバンをはじめとした乗用車開発で得たノウハウが注入された。

　全高を1635mmに抑えながら、ステップワゴンに匹敵する1340mmの室内高を実現。そして、エンジンなどのコンパクト化により、ゆとりある室内長／荷室長を確保。室内幅は当時の軽自動車クラスにおいてトップレベルとなる1315mmを達成した。

　荷室の広さも特筆すべきポイントのひとつ。低床設計としながら、テールゲート開口地上高530mmという低さにしたことで、荷室高は1100mm、テールゲート開口高は1020mmを確保。

　高さのある荷物の積載が容易なうえに、大容量かつフラットなフロアとしたことで、重い荷物でもスムーズに積み降ろせる。

　車内は前席と後席で感じる雰囲気が異なるよう作り込むことで、ぞれぞれの心地よさを追求している。前席は高めのアイポイント設定と合わせて開放的で見晴らしのよい空間とし、後席は包まれるような安心感を演出しながら、荷室の使いやすさを追求した。「ゼスト スポーツ」は、こうした基本的な作りを継承しながら、前後席ともブラック基調とすることでスポーティなイメージとしている。

　好みの温度を設定すれば、温度、風量を自動的にコントロールできるフルオートエアコン、ゼスト専用の音響チューニングを施した高音質のオーディオシステムのほか、スマートキーを携帯することで、フロントドアやテールゲートの解錠と施錠が行えるHondaスマートキーシステム、さまざまな使い方に素早く対応できる簡単・多彩なシートアレンジ、使いやすい場所に用意した豊富な収納スペースなど、快適性と実用性を高める機能が充実していることも、ライバル車に対して十分な競争力をもっていた。

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