北海道・札幌では2019年11月28日にホワイトアウトするような雪が降り、関東でも谷川岳(群馬県)など山間部で2cm近い積雪か観測された。今シーズンで一番強い寒気が流れ込んだことによるものだが、日本各地で雪の便りが届いている。
そうなってくると、準備が必要になるのがスタッドレスタイヤだ。夏用タイヤから冬用タイヤへの交換の目安は、外気温が7℃を下回ったらと言われている。これは冷えて温度が下がると、夏用タイヤではゴムが硬くなりグリップが弱くなってしまうため、制動距離が伸びるなど問題が出るためだ。
東京でも最低気温が7℃を下回る日が増えてきたこともあり、例年路面が凍結するような地域に住んでいる人はスタッドレスタイヤへの替え時といえるだろう。
さて、そんな時に気になるのが、新品のスタッドレスタイヤを購入したが、慣らし運転は絶対に必要なのか? ということ。駆け込みで購入したから、雪が降る日までに間に合わなかった…なんて経験をした人もいるのではないだろうか?
今回はそんな悩める人が多い、スタッドレスタイヤの慣らしについて、 斎藤聡氏に解説してもらう。
文/斎藤聡
写真/編集部、 Adobe Stock
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■絶対ではないが、やっておきたい慣らし走行
最初に書いておきたいのは、絶対に慣らしをしなくてはいけないというものではないということです。タイヤメーカーは、スタッドレスタイヤに履き替えてすぐに雪道に走り出ても、ちゃんと必要な性能が発揮できるように作っているからです。ただ、いろんなメリットがあるので、できれば慣らしはやったほうがいいと思います。
慣らしのひとつ目の目的は、トレッド表面に張った薄皮を摩耗させてやるためです。いわゆる”皮むき”っていうやつです。
スタッドレスタイヤに限らず、タイヤは製造過程の最後のところで加硫という工程を行います。トレッドデザインの刻まれたモールドと呼ばれる釜の中に入れて、内側から空気で圧力を加えながらゴムを加熱します。
この時に、硫黄を混ぜて加熱することでゴムの弾性限界が上がります。またトレッドゴムが、モールド(タイヤを成形する釜)内壁に作られたトレッドパターンのオス型に押し付けられることで、トレッドパターンがタイヤに刻まれ、タイヤとしての性能と形が完成します。
加硫温度は150℃以上といわれており、20分前後加熱される(数字はあくまでも目安です)ので、タイヤの表面に少し硬めの薄皮が張っています。これがほぼなくなるまで摩耗させてやるのが慣らしの目的です。
薄皮一枚なのですが、このゴムはその内側のトレッドゴムほど氷雪上性能はよくないのです。現在売られている国産スタッドレスタイヤのほとんどは、慣らしをしなくても、すぐにそれなりの性能が期待できるように、トレッド表面に凹凸を付けたリブレット(微細溝)加工などが施されています。
そのため、慣らしをしないで雪道に走り出てもそれなりに走れてしまいます。ただ一皮むいてやると、グリップ感がはっきりわかるくらい変わりますから、少し早めにタイヤを履き替えて、100~150kmくらいは慣らしをすることをお薦めします。
ふたつ目の目的は、タイヤに慣れる……つまりドライバー側の慣らしです。
世代が新しくなるほど、スタッドレスタイヤはドライ路面でも走りやすくなっていますが、そうはいっても冬用タイヤなので、ゴムはサマータイヤに比べるとグッと柔らかいものが使われています。
サマータイヤと同じように走らせると、発進やブレーキ、カーブでタイヤへの負担が大きすぎて、タイヤと路面の間に微細な滑りが起こって、トレッドブロックの特にエッジ部分が摩耗しやすくなります。
これがタイヤの(性能の)寿命を短くしてしまう原因になります。ブロックのエッジが丸まってしまうと、雪道での踏ん張り感が乏しくなったり、ハンドルを切り出した時の手応えが曖昧になったりと、せっかく買ったスタッドレスタイヤの本来の雪道性能が落ちてしまいます。
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