2013年11月の正式発表から4ヶ月。BMWのプレミアムブランド“BMW i”の1号車「i3」、その屋久島試乗会の様子をプレイバック!(本稿は「ベストカー」2014年4月26日号に掲載した記事の再録版となります)
文:鈴木直也
■CO2フリーを目指す屋久島で一番気になるレンジエクステンダーに乗った!
BMWのEV“i3”の屋久島試乗会に行ってきました。
屋久島は電力の95%を水力発電で、CO2フリーを目指している、という理屈はこのページのどこかで説明してるかもしれないけど、注目すべきはこの試乗会へのBMWのチカラの入れかた。いつも以上に手間もお金もかかってる。
何故かって?
BMWはこれまでずっとスポーティでプレミアムなクルマで売ってきたわけで、それがBMWというブランドの最大の武器となっている。そのBMWのアイデンティティを来るべきEV時代にどう確立するか? それがきわめて重要な課題だから。
経済紙などがよく書くのは、EVは水平分業でモーターや電池などを調達できるから「参入障壁が下がって、やがて家電みたいな価格競争がおきる」というシナリオだが、そういう時代のプレミアムカーのあるべき姿を提示するのがi3の役割。スタートで失敗するわけにはいかないのだ。
でもさすがにBMW。この難しいテーマにi3でみごとな模範回答を出した、ぼくはそう思いました。
まず、「EVはモーターや電池などがコモディティ化する」という部分、ここにBMWは反論しない。
125kWのモーターに21.3kW/hのリチウム電池というEVの中核部分については、まぁ普通のレベル。モーターがちょっとパワフルだけど、テスラ・モデルSのような極端なことはやってない。たとえば、新興国のEVベンチャーでもこの部分だけなら追いつける。
でもそれ以外、自動車メーカーでなければできない部分については、高度な技術力を惜しみなく駆使して差別化をはかっている。
焦点となるのはアルミのプラットフォームにCFRP成形のボディを載せる軽量構造だが、ごく少量生産ならともかく量産車にこういう構造を採用するのはむちゃくちゃハードルが高い。
しかも、ただ軽くするだけじゃなくそれを環境負荷に配慮した工場で再生可能エネルギーだけで超エコに作る、というのもミソ。
BMWは生産プロセスまで含めた自社EVの“ブランド化”を考えてるわけで、もうこの時点でリーフを含むライバルEVをあざやかに抜き去ってる。
また、走りっぷりや実用性についても、i3は実に周到に考えて作られたEVだと思う。
BMWといえば“駆け抜ける喜び”だが、前記のとおりそこにはテスラ・モデルSほどの力点は置いてない。もちろん、軽量/低重心を活かして並のEVよりずっと軽快でスポーティな走りは可能だが、そういうのがお好みならi8もあるし、なによりエンジン付きBMWにいくらでも魅力的なクルマがある。
そんなことより、EV最大の弱点である航続距離の問題を、レンジエクステンダーエンジンを用意することで現実的に解決しているのが注目すべきポイント。これが実にクレバーな判断なのだ。
EVを企画するエンジニアは、どうしても“排ガスゼロ”にこだわりがちで、コストやパッケージ的にもレンジエクステンダーエンジンを搭載することに抵抗感がある。
しかし、i3のレンジエクステンダーモデルに乗ってみると、それが“電池切れ”の不安から解放してくれる、どれほどウレシイ装備なのかが実感できる。

正直にいえば、レンジエクステンダー用の2気筒650ccエンジン(C650GTスクーター用)が起動すると遠くでヘリコプターが飛んでいるようなエンジン音が聞こえてきて、ほぼ無音のEV状態と比べるとちょっとガッカリはするのだが、電欠を防止するための非常措置と考えれば「ないよりあったほうがぜんぜんイイ!」のは疑う余地がない。
じっさい、日本でもi3を予約した人の7割強がレンジエクステンダーモデルだそうで、これが背中を押して「EVに乗ってみよう!」と決断した人がかなりいるってこと。
i3を前にすると「EVがコモディティ化するなんてまだまだ先。むしろ現時点で売れるEVを量産しようとしたらハードルめちゃくちゃ高いじゃん!」と痛感する。
リーフが世界初の量産EVとして登場してからたった4年。あらためてEVの進化の速さに驚きを隠せないi3の試乗会でした。






















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