これまで日本にはたくさんのクルマが生まれては消えていった。そのなかには、「珍車」などと呼ばれ、現代でも面白おかしく語られているモデルもある。しかし、それらのクルマが試金石となったことで、数々の名車が生まれたと言っても過言ではない。
当連載では、これら「珍車」と呼ばれた伝説のクルマや技術などをピックアップし、その特徴を解説しつつ、日本の自動車文化を豊かにしてくれたことへの感謝と「愛」を語っていく。今回は、ロフト感覚をもたらすオートフリートップを採用した前代未聞のワンボックス、ボンゴフレンディを取り上げる。
文/フォッケウルフ、写真/マツダ
多目的に使えるワンボックスワゴン
いまでこそダイハツからOEM供給を受け、ダイハツ グランマックス、トヨタ タウンエースとともに3兄弟となっているマツダ ボンゴだが、1966年に初代モデルが登場以来、同社の歴史にその名を刻んできた名車である。
54年という長い歴史を持ち、キャブオーバースタイルのワンボックスバンならびに小型トラックといった商用車の販売を中心としながら、「ボンゴ ブローニイ」をはじめとした乗用タイプが1980年代のRVブームに乗って登場した。
さらに、1998年には電気自動車として「ボンゴEV」を官公庁や法人向けにリリースするなど、ビジネスからパーソナルまで、幅広いユーザーに支持され、マツダの屋台骨を支えてきた。
今回クローズアップする「ボンゴフレンディ(以下フレンディ)」も、そんなボンゴシリーズの中核を担うモデルとして1995年6月に発売されている。
ミニバンやSUVが市民権を得る以前に、箱型ボディによる広い室内と効率的なパッケージングを活かし、「家族や仲間が楽しみ、くつろぎ、休日を過ごすためのレジャー基地」というコンセプトを具現化。ファミリーカーとしてだけでなく、レジャー用途に適したクルマとして人気を博した。
フレンディの最たる特徴は、開放感ある吹き抜け空間として、また、宿泊や遊びのためのスペースとして多彩に活用できるロフト(屋根裏)感覚の「オートフリートップ」を採用しているところ。オートフリートップは、電動でルーフがポップアップして車内が2階建てになるという仕組みで、大人2名がゆったりと就寝できるほど広かった。
乗用ワンボックスワゴンとしては特殊な仕様だったが、当時、流行していたオートキャンプの用途に最適なクルマとして話題となったのはもちろん、それまで移動手段として評価されていたクルマが、別の価値を持った「道具」として有効活用できることを広く知らしめた。その観点からフレンディはじつに画期的なクルマだったと言っていい。
他車にない武器をより使いやすく改良
オートフリートップは、操作がじつに簡易で、テント部が挟まったり、よれたりすることもなく、ダンパーによって屋根裏が跳ね上がる。他社にもこうしたルーフを有した車種は存在していたが、いずれも特装車扱いだった。フレンディでは、標準ルーフ仕様と同じくカタログモデルとしてラインナップしていたことも注目すべきポイントだった。
このオートフリートップは2001年に全面改良が実施されている。内外装デザインの全面変更に合わせ、ボディとの一体感を向上させ、一層スタイリッシュな作りとした。オートフリートップの前端部分に、オートフリートップ使用時の室内の爽快感をさらに高めるフロントサンルーフを新設したのをはじめ、センターサンルーフのサイズを拡大させた。
さらに、テント生地をディンプル加工し、汚れを防ぐとともに質感を向上させ、テント部分のネット地にホワイト/グリーンの2色を設定し、ボディカラーとコーディネイトさせている。また、リア部分をルーフスポイラータイプとし、LEDハイマウントストップランプを内蔵した。
このほかにも、ディスチャージヘッドランプをエアロバージョンに標準装備し、開口部が大きなアンダースポイラー一体型フロントバンパー、精悍なスポーティグリル、丸型フォグランプを採用。さらにリアアンダースポイラーをより重心を低く見せるデザインに変更し、リアまわりもワンボックスらしい安定感が強調された。







コメント
コメントの使い方