いいクルマを買えば上手くなるは大間違い。大事なのは、限界を安全に試せる環境に身を置くこと。あなたのドラテクが変わる、新しい選択肢を紹介していこう!!
文:中谷明彦/写真:Porcshe AG、ベストカーWeb編集部
【画像ギャラリー】日本でも開催!! ポルシェでドライビングレッスン受けられるとか羨ましすぎ!!(5枚)画像ギャラリーもっと重要なのは走るフィールド!!
「ドラテクを磨くなら、どのクルマを選べばいいのか?」自動車好きなら誰もが一度は考えるテーマだろう。確かに、軽快なスポーツカーや最新の電子制御を備えた高性能マシンは、運転する楽しさや限界領域の挙動を体感するうえで魅力的だ。
鋭い応答性を持つスポーツカーや、緻密に作り込まれたシャシーを持つ高性能車は、操る楽しさや挙動変化を学ぶには最高の教材になり得る。
しかし、ドライビングテクニック(以下、ドラテク)を本質的に高めたいと考えるなら、あえて伝えたいことがある。それは「クルマよりも、まず“どこを走るか”を選ぶべきだ」と。
どんなに性能の良いクルマを手にしても、それを使い切る環境がなければ、ドラテクは磨かれないからだ。クルマはあくまで“道具”であり、ドラテクは“体験”の積み重ねによって培われる。
つまり、どれほど性能の高いマシンを手にしても、そのポテンシャルを引き出せるような道でなければ、技術は身につかない。反対に、平凡な車であっても、正しい環境と状況下で走らせれば、確実にドライバーの引き出しは増えていくのだ。
ワインディングで鍛えるのはもう時代遅れ!?
例えば、ワインディング。かつては交通量の少ない早朝の峠道は、車両の荷重移動やライン取り、ブレーキングポイントの感覚を養うのに最適な環境だった。反対車線には絶対にはみ出さないように自身で厳格なルールを決めて走ったものだ。
そこではフロントの入り方やリアの粘り、タイヤのグリップ感を体で覚えられる。ここで必要なのは、必ずしも大出力エンジンや高価な足回りではない。むしろ、パワーが控えめで軽量なコンパクトカーのほうが、アクセルワークやブレーキング、シフト操作の基本を丁寧に学べた。
だが、今日の公道においては以前のように“学びの場”として走るのは現実的ではなくなった。ドライバーには速度規制を遵守し、急な挙動を起こさないスムーズかつジェントルなドライビングに徹することが絶対使命となった。
そして一般ドライバーとの共存、これらはすべて、ドラテク向上を目的とした走行の妨げとなる。つまり現代において、公道は“技術を磨く場”ではなく、“技術を活かす場”に変わったといえる。
交通の流れに無理なく溶け込み、安全かつスムースに走るという意味では、ドラテクの応用力を測る絶好の舞台ではある。しかし基礎から応用へとステップアップする“練習の場”としては、すでに役目を終えているのだ。
世界でドラテクを学ぶ環境に変化が
では、ドラテクはどこで磨くのか。一つの最適解はサーキットだ。サーキット走行は公道とはまったく異なる価値を持つ。安全な環境下で限界域まで攻め込むことができるのは、タイヤのグリップ限界を試し、挙動変化の臨界点を体験する貴重な場だ。
車両の姿勢制御や、滑り出しの予兆を感じ取る体内センサーを鍛えるにはうってつけである。ここでは、同じ車を何度も反復して走らせることが技術の深化につながる。タイムの追求以上に、自分の操作に対してクルマがどのように応答するかに意識を向けるべきだ。
さらに近年では、ジムカーナやラリーフィールドなど“低速高密度”の競技環境での経験則も改めて見直されている。低速域での的確なステア操作、路面変化に対する即応性、クルマの姿勢を常にコントロールし続ける集中力。
これらは一般道では身につかない、特殊だが実践的なテクニックを求められるフィールドだ。しかも、エントリーコストは比較的低く、参加ハードルも決して高くない。
また、近年は欧州のように、特定の高性能車メーカーが顧客向けにプライベートサーキットを提供する例も出始めている。
フェラーリやポルシェはその代表格で、顧客は専用のサーキットイベントやドライビングアカデミーを通じて、自らのマシンと向き合いながら、安全かつ専門的にテクニックを学べる環境を得ることができる。
日本でも、そうした取り組みは徐々に広まりつつあり、今後“ドラテクを学ぶ”という文化の成熟に大きく寄与するだろう。
すべてのドライバーが気軽にサーキットに行けるわけではない。だが、走行会や講習イベントなど、初心者向けの機会は全国各地にある。高価なスーパーカーが必要なわけではない。
むしろ、パワーに頼らず操作技術で走る必要がある手頃な車両のほうが、学びは深い。大切なのは「場所を選び、目的を持って走ること」なのだ。









コメント
コメントの使い方仰る通り!!!
何一つ付け加えることありません。数多くの人に読んで頂きたい記事です。