「D」に入れっぱなしは大間違い【正しいD、L、Sレンジの使い方】


 AT車を下り坂を走っている時、Dレンジに入れてフットブレーキばかり使っていませんか? 

 また、ATの寿命を延ばしたいからとDレンジに入れっぱなしの人いませんか?燃費をよくしたいから、Nレンジに入れて走らせる人いませんか?

 ATには正しい使い方があります。Dレンジ、Lレンジ、Sレンジはどういう時に使えばいいのか? モータージャーナリストの鈴木伸一氏が解説します。

 文/鈴木伸一
写真/ベストカーWeb編集部


■坂道ではフットブレーキを多用せず、エンジンブレーキを使う

昔は長い坂道を下っていると、ブレーキはフェードしそうになりエンジンブレーキを慌てて併用したものだが、今のクルマのATの走らせ方はどうなのか?

 走行中にアクセルペダルを離すと、エンジン内部で生じる摺動抵抗(ピストンが上下するときのポンピング作用、カムシャフトやバルブを動作させるための機械的なロス)によって「減速効果」が得られる。

 このアクセルワークによって発生する減速効果を「エンジンブレーキ(以降エンブレ)」と呼び、自動車教習所で活用するよう指導されていたはず。

 「エンブレ」で速度調整を行いながら走らせればギクシャクした加・減速がない分、スムーズに走れるからで、「速度の調整は出来るだけアクセルワークで行い、アクセルワークだけでは減速が間に合わないときはフットブレーキを活用するように」といった具合にだ。

 この「エンブレ」、前方の信号が黄色から赤に変わりそうなときや車間距離が詰まって少しスペースを空けたいときの減速に最適。高速からの減速やコーナーを曲がるときにも、積極的に活用するべき。駆動力がかかっていたほうが走りが安定するからだ。

 また、峠道などの長い坂道を下るときは「エンブレ」の利用が必須! フットブレーキに頼りきってブレーキを使い過ぎると、過熱して効きが悪くなる「フェード現象」を起こしたり、ペダルの踏み応えがフワフワになって効かなくなる「ベーパーロック現象」を起こしたりする。つまり、「エンブレ」を活用しないと危険な状況に陥るからだ。

 近年のクルマはブレーキ性能が格段に向上、滅多なことではそんな状況に陥ることはなくなったが、可能性は0というわけではない。充分、起こりえるトラブルなので、峠道を走り慣れていない人は注意が必要だ。

 とはいえ、Dレンジで走行中のATは単にアクセルペダルを離しただけだとエンブレの効きがあまいため、どうしてもフットブレーキに頼りがち。

 その結果、ブレーキの必要がない場所やタイミングでブレーキランプをパカパカ点灯させることに。

 それでもクルマの流れがおかしくてフットブレーキを踏まずにいられない状況ならまだしも、流れは安定しているのにアクセルワークがヘタで前走車に近づきすぎた都度、ブレーキをパッと踏むを繰り返す。そんなドライバーをよく見かける。

 周囲のクルマの運転者は保護する義務を負う「初心者マーク」や「高齢者マーク」を掲げた車両だったら暖かく見守るしかないが、それが無マークの一般車だったとしたら問題!

 スムーズなクルマの流れを阻害し、車列後方での渋滞を引き起こす要因となるからだ。認識していたらそんな運転はしないだろうが、もしも心当たりがあったならただちにやめて頂きたい。

■ATのシフトセレクター、D、L、Sレンジの使い方

各車のATはそれぞれP→R→N→D→マニュアルモードの+−、P→R→N→D→2→Lなど、Dレンジのほかに、Lレンジ、Sレンジ、M+−など、さまざまなパターンがある

 さて、クラッチ操作で駆動力の断続を行うMTは走行中エンジンとミッションが直結状態にあるため、アクセルペダルを離しただけで効果的に「エンブレ」が得られる。が、それでも状況によってはシフトダウンしてギヤを低くすることで「エンブレ」の効きを高める操作を行う。

 一方、ATは駆動力の断続を液体を介して回転力を伝達するトルクコンバーター(扇風機を向かい合わせに配置し、片側を回したことで発生する風で反対側を風車のように回すイメージの伝達方法で、空気の変わりにオイルを流動させることで動力を伝えている)で行っているため、どうしても伝達力がロスする。

 それゆえ「エンブレ」を効果的に利用しようと考えた場合、そのシフトダウンの併用が必要となるのだ。

 このATのシフトダウン、O/D(オーバードライブ)付きATで高速走行時ならアクセルを戻すとともにセレクター横のO/DボタンをOFF。

 一般路であればDレンジから1段階下の2もしくは3へ切り替える。スポーツモード(MTモード)付きATならスポーツモードに入れて、あるいはパドルシフトでシフトダウンする。

 また、スポーツ走行などに合わせて早めのタイミングで変速をおこなうドライブレンジ(スポーツシフトモード)を併せ持つATなら「S(スポーツ)」や「D3」などに切り替える。

 無段変速ゆえに仮想的に1速、2速とギヤ切り替えを実現しているCVT車も同様で、「S(スポーツモード)」もしくは「Ds(スポーツドライブモード)」のボタンを押すもしくはレンジを切り替えることで「エンブレ」の減速効果を高めることができる。

 一般道における通常の使用範囲ならエンジンの負担になることもないので、オーナーズマニュアル等で愛車のATがどのようなシステムか確認の上、積極的に利用したい。

 ただし、Sを飛ばしてDからいきなりLといった具合に極端に低いギヤへのシフトダウン操作はNG。

 エンブレが効き過ぎて急減速。同乗者に不快な思いをさせるばかりか、ブレーキランプが点灯しないため後続車にとって迷惑なだけでなく追突する危険をも伴うからだ。扱いに慣れるまで充分注意したい。

次ページは : ■寿命が減るからずっとDレンジのままなのは大間違い!

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