2025年6月5日、ダイハツは軽ハイトワゴン「ムーヴ」の新型モデルを発表した。従来型までは後席ドアがヒンジドアだったムーヴだが、新型ではついにスライドドアになった。
開け閉めの際にドアパンチしてしまう心配もなく、狭い場所でも乗り降りがラクで、荷物を持ったまま乗り降りができ、自動で開閉してくれるものもあるなど、超絶便利なスライドドアだが、現在のところ、スライドドアの採用は、軽スーパーハイトワゴンやミニバンのような「背が高い箱型」のクルマに限られている。
スズキの「ワゴンRスマイル」が軽ハイトワゴンとして初めてスライドドアを採用し、今回新型ムーヴが登場したことで、軽ハイトワゴンとして2例目の採用となったが、そのほか、たとえばSUVなどではスライドドア車はみかけない。輸入車となるとさらにスライドドアを搭載しているクルマが少なくなる。なぜスライドドアはもっと普及しないのだろうか。
文:吉川賢一/写真:TOYOTA、DAIHATSU、SUZUKI、HONDA
【画像ギャラリー】超絶便利なスライドドア車でもっとも売れている コンパクトなボディにやさしさが詰まっている トヨタ「シエンタ」(15枚)画像ギャラリー背高モデルに限られるスライドドア
スライドドアは、ドアがボディに沿って開くので、駐車場などで隣のクルマとの隙間が少なくてもラクに乗り降りできるし、ドアを開けたままでもジャマにならないので、後席に座らせた乳幼児や子供の世話も容易にできる。昨今は電動スライドドアが当たり前になりつつあるため、かつてのように開け閉めの際の煩わしさもない。
ユーザーにとってメリットの多いスライドドアだが、採用には技術的な制約がある。スライドドアを支えるレールは、車体の上段と下段、そして中段の3ヵ所に平行に設ける必要があるため、ルーフ後端が傾斜しているSUVやセダン、クーペ、全長が短いハッチバックでは、物理的に設置ができないのだ。
そのため、2025年5月現在で国内各メーカーからラインアップされているスライドドア車は、トヨタかでは、ルーミー、シエンタ、ノア/ヴォクシー、アルファード/ヴェルファイア、ハイエース、JPN TAXI。ホンダではN-BOX、N-VAN、フリード、ステップワゴン、オデッセイ。日産ではルークス、セレナ、エルグランド、キャラバン、NV200バネット。三菱ではデリカミニ、eKスペース、デリカD:5、ミニキャブEV、ダイハツでは新型ムーヴのほか、ムーヴキャンパス、タント、タントファンクロス、トール、スズキではスペーシア、ワゴンRスマイル、ソリオ、エブリィワゴンと、軽スーパーハイトワゴンからラージサイズミニバン、商用バンまで、カテゴリはさまざまだが、すべて背が高い箱型のボディスタイルのクルマたちだ。
しかしながら、いまブレークスルーが起きようとしている
しかしながら、いまその技術的な壁を打ち破るブレークスルーが起きようとしている。2023年10月にトヨタが発表した新型センチュリーのカスタム車には、「リンク式パワードシステム」(アイシン製)という、ボディに沿って飛行機のドアのように開くタイプの新型ドアが採用されているのだ。
回転アームなどを用いて、ドアを保持、開閉駆動を行うので、車体にレールをつくる必要がなく、これであれば箱型以外のボディスタイルをもつクルマでも装備が可能だ。レクサスが2023年10月末のジャパンモビリティショーで発表した「LF-LC」でも採用されており、車両のデザインを維持したまま開閉することができるようになる。


















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