日本車の課題はズバリ触感!? 見た目がいいだけの内装ではココロが満たされない!!

日本車の課題はズバリ触感!? 見た目がいいだけの内装ではココロが満たされない!!

 クルマの内装は、最も長く人が触れ合う心のインターフェースだ。華やかなLEDや大画面タッチパネルでは決して埋まらない、本当の質感。それは見た目ではなく、触れたときに語りかけてくるような、温もりと精度。いま、日本車に欠けているのは、まさにその「人間中心の思想なのでは?

文:中谷明彦/写真:ベストカーWeb編集部

【画像ギャラリー】まるで高級ホテルのロビー!? E38型BMW7シリーズの内装が豪華すぎるからよーく見て!!(8枚)画像ギャラリー

座った瞬間に感じるホンモノの風格

中谷氏が絶賛するE38型7シリーズは1994年に登場
中谷氏が絶賛するE38型7シリーズは1994年に登場

 クルマという工業製品のなかでも、インテリア(内装)は最も長く人と接する空間だ。ドライバーはハンドルを握り、シートに身を委ね、スイッチ類を操作しながらクルマを操作する。そこに宿る質感や機能性は、単なる見た目以上に、ドライビングの質そのものを左右する。

 これまで数えきれないほど多くのクルマに試乗し、また所有してきたが、内装において“真に完成された意匠と造形”に出会ったのは、決して多くない。

 そのなかで今もなお記憶に刻まれているのは、E38型BMW7シリーズである。あのクルマには、ドライバーズカーとしての機能美と、ラグジュアリーカーとしての風格が見事に共存していた。

1990年代に出たクルマとは思えない高級感。座り心地の良さが写真からも伝わる
1990年代に出たクルマとは思えない高級感。座り心地の良さが写真からも伝わる

 E38型が20世紀最高傑作と評されるのはインテリアの仕上がりが高かったことも一因として上げられるのだ。インパネの造形は無駄を排しながらも緻密に彫刻され、バッファローレザーを惜しげもなく用いた本革シートは、乗るたびに柔らかく身体を包み込むような安心感を与えてくれた。

 ダッシュボードを飾る木目は本物のウッドシートで、その艶と建て付けの良さが質感と共鳴し、ドアの閉まる音ひとつすら高級車としての哲学を語っていた。

 忘れてはならないのは、後席においても手抜かりがないということ。シートの質感や座り心地は前席同様に高く、装備も不満がない。現代の高級車が漸く標準化してきたような装備が1995年当時すでに備えられていた。後席においても高級車のベンチマークとなっていたわけだ。

国産車のインパネは見かけの良さに加えて耐久性も欲しい

現行CX-5のインテリア。マツダは国産車のなかでも欧州メーカーに近いデザインだが、色落ちをはじめ劣化スピードが早いのがネック
現行CX-5のインテリア。マツダは国産車のなかでも欧州メーカーに近いデザインだが、色落ちをはじめ劣化スピードが早いのがネック

 では、昨今の国産車のインテリアはどうか。全体のデザインコンセプトやパッケージングは格段に進歩している。特にトヨタ、日産、マツダといった大手メーカーが生み出すフラッグシップモデルでは、意匠やLEDアンビエントライト、金属調パネルのアクセントなど、視覚的な満足感は確かに向上している。

 だが、手で触れたとき、時間を共にしたとき、その内装が語りかけてくる言葉は、正直なところ薄い。素材の質感、仕上げの精度、さらには経年劣化への耐性といった、長く使って初めてわかる深みが足りないのである。

 例えば、私が所有していたマツダCX-5の100周年記念モデル。赤い本革シートに惹かれ、実車を見ることなく購入した。それは一見すると華やかで、インテリアに特別感をもたらしていた。だが納車されて実際に触れてみると、色落ちがひどく、衣類に赤みが移ってしまった。

 同じく赤に魅力を感じたフロアマットだが、実際は軽自動車並みのペラペラなものが敷かれ、毛足は短く、踏み心地にも高級感のかけらもない。こんな安価なマットを100周年記念車に使うというのは、いささかブランド哲学として疑問に感じた。
 
 結局このCX-5は2年で手放すことにした。理由は単純だ。乗るたびに“がっかり”するポイントが視界や触覚に入り込み、愛着が削れていったからである。クルマは実用品であるとともに嗜好品でもあり、感性に訴えかける部分が重要だ。

 CX-5は走りもパッケージングも良く、使い勝手に優れていて初代から乗り継いだが、いくら実用性が良くとも、触れるたびに失望が重なるようでは、所有する喜びは長続きしない。

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