ベストカー本誌の過去記事から名企画・歴史的記事をご紹介する「ベストカーアーカイブ」。今回は日産GT-R vs ポルシェ911ターボ、連綿と続く因縁の系譜を振り返った記事をプレイバック!(本稿は「ベストカー」2014年5月26日号に掲載した記事の再録版となります)
文:渡辺敏史、西川淳、編集部
序章 両者の進化の過程を考察
GT-R対ポルシェ911ターボ。生まれながらのライバルであり、2007年11月にR35 GT-Rがデビューしてから現在まで、互いに進化を遂げてきた。ここでは両車の進化はいかなるものだったのか考察したい。
ほかのFRモデルとアッセンブリーラインを混流させることで生産性を向上させコスト圧縮を図るいっぽう、特殊なスーパースポーツしか成し得なかったパフォーマンスを「2+2」の実用的パッケージともに実現する。
第三世代GT-Rが1から描いた壮大な青写真を実現化するうえで、性能比較のベンチマークとして選んだのが、皆さんご存じのとおりポルシェ911ターボだ。当時、連れ立ってニュル詣でを繰り返していた姿は幾度も写真に撮られている。
その理由は明白だ。エンジンキャパシティやドライブトレーン、高い実用性や一定の量産性、そしてフェラーリやランボルギーニと対峙するパフォーマンスとステータス。911ターボはかれこれ40年近くに渡って、それを維持し続けている。
GT-Rが狙った立ち位置はかぎりなくそれに近い。少なくとも911ターボを上回らなければ、それを世に問う意味がない……と開発に臨んでいたはずである。
結果、GT-Rはデビューとともに911ターボ超えを性能の数値化で証明。言わずもがな、7分38秒54というニュルのラップタイムである。その差が1秒程度といえば、いかに開発陣にとってそれが必達目標であったかを生々しく物語っている。
そのうえで、GT-Rはその能力を全量保証し、誰もが解き放てるという些か過激な表現で民主化を唱ったわけである。これぞ水野さん流のパフォーマンスといったところだろうか。
当然の話題沸騰に、自らの庭で提灯を掲げられたポルシェが内心穏やかでなかったことは想像に難くない。
が、GT-Rはニュル詣での手を休めず、デビューから半年後には、一気に9秒も縮めたタイムをアナウンスした。これにはポルシェも黙っていられず、自ら買い付けたGT-Rをテストしたが、日産が公表する数字は出ないという情報をリーク、それに日産側が公式リリースで応戦するという前代未聞の舌戦に発展した。
いっぽうで911ターボは、完全新設計の直噴フラット6をターボ化したユニットを搭載し、最高530psの大台超えを達成、かと思えばその半年後にGT-Rもピタリとそれに追従。
911の側はターボのパワーを620psまで高めたうえで運動性能を重視し敢えてRR化した好事家向け限定車、GT2RSでニュル7分18秒台を叩き出しGT-Rからレコードホルダーの座を奪還、対する日産側はサーキットに特化した限定車でのタイム計測は無意味と話しながら、その2年後には標準車でGT2RSのタイムに肩を並べ……と、GT-Rの登場以来、両社の水面下ではガチガチのバトルが繰り広げられてきたわけだ。
(TEXT/編集部)
GT-R(基準車)vs ポルシェ911ターボ/ターボS 抜きつ抜かれつの攻防戦の最終章

2007年の春、まだ擬装が施されたGT-Rの開発車両に乗る機会を得た僕は前代未聞の圧倒的なパフォーマンスにただただ唖然とさせられたその印象を「日産はパンドラの箱を開けてしまった」といくつかの雑誌で書いた。
それまで、スーパースポーツの世界には高価格という庶民には超えられない塀の向こうに知り得ない秩序があった。言い替えればそれは、ヨーロッパのごく一部のメーカーの間で察せられるあうんの呼吸のようなものだ。その塀にGT-Rは777万円砲を打ち込んで風穴を開けてしまったわけである。
そんな自分を正当化し続けるためにGT-Rが選ぶ道はひとつしかない。ひたすら速さを追求するアスリートの如き人生だ。焚き付けた敵がポルシェとあらば、ニュルでの自主トレの手を休める暇はまったくない。
年次ごとの改良は発売当初から唱われていたが、むしろ目に見えない部位のほうが圧倒的に多いその変更点は、この字幅ではとてもフォローできないほどだ。
立派な化粧を施して肩の力を抜いたモデルもあったものの、本筋は速さ一本槍で突き抜けてきたGT-Rは、主に図抜けた組付精度からくる機械としてのいいモノ感を持つにも至った。しかしそれを官能性のような数値化できない表現に沿わせるには至らなかったと僕は思う。
開発責任者の変わった2014年モデルが求めはじめたのは、まさにそこだ。最大の存在理由である速さの実証は新グレードのニスモに託し、基準車は日常で気持ちいいと思えるドライバビリティを追求する。
極限性能の全量保証に拘り続けてきた2013年モデルまでに対すれば公約が掌を返したことになるが、個人的には誰かがそれをやらなければ、GT-Rは生き続けることが難しい状況に陥っていたと思う。
その理由を如実に突きつけているのが新しい911ターボだ。
GT-Rにかき回されたなかで開発されただろうそれは、自在な駆動制御のみならずトーイン制御を含めた後輪操舵を含め、彼らが考えうるあらかたの電子制御ボディコントロールがどっさり投入されている。
そのハイテク武装ぶりはGT-Rをも上回るほどといっていい。が、その乗り味は911の宿命であるアンダーtoオーバーの反動が激しいリアエンジンのネガのみを介入感なく綺麗に取り除きながら、リア側のトラクションは最大限に活かすという自らのキャラクターをしっかりと残してもいる。
フラット6のサウンドも相まって、その出自と個性をしっかりとドライバーに伝えるセットアップに仕上がっているのだ。
そのうえで、911ターボはポーツセダンさながらの乗り心地に高速巡航では10km/Lを超える低燃費と、今日的なスーパースポーツの備えるべきものを示してもいる。
この芸幅の広さを見せられると、GT-Rが見ぬふりをしてきたものを取り戻すための苦労はただごとではないと思わざるをえない。
(TEXT/渡辺敏史)
【日産GT-R 2014年モデル DATA】
エンジン:VR38DETT、3.8L V8ツインターボ/最高出力:550ps/6400rpm/最大トルク:64.5kgm/3200~5800rpm/車両重量:1740~1750kg/0→100km/h、最高速度ともに未公表/全長4670×全幅1895×全高1370mm、ホイールベース:2780mm/価格:1040万400円(プレミアムエディション)
【ポルシェ911ターボS DATA】
エンジン:3.8L水平対向6ツインターボ/最高出力:560ps/6500~6750rpm/最大トルク:71.4kgm/2100~4250rpm/車両重量:1650kg/0→100km/h=3.1秒/最高速度:318km/h/全長4506×全幅1880×全高1296mm、ホイールベース:2450mm
※911ターボは520ps/6000~6500rpm、67.3kgm/1950~5000rp(オーバーブーストモード作動時は72.4kgm)。0→100km/hは3.4秒、最高速度は315km/h。価格 2128万円





















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