最近はクルマの定額制(サブスクリプション)サービスが積極的に展開されている。
2019年2月には、トヨタが定額制で利用できる「KINTO」を発表した。月額料金を支払うことで、トヨタの新車を3年間使用できるサービスだ。
KINTOはその後、対象車種を加えたり制度の見直しを行っている。
ホンダも「ホンダマンスリーオーナー」の名称で定額制サービスを開始した。このシステムの特徴は、中古車を対象にすることだ。しかもマンスリーだから1カ月単位で利用できる。
自動車メーカーが最新推進しているクルマを売らないサービスは得なのか? 日本ではクルマは買うもの、自ら所有するものという意識が強かったが、意識変化があったのだろうか? クルマの売買についてのスペシャリスト、渡辺陽一郎氏が考察する。
文:渡辺陽一郎/写真:TOYOTA、HONDA、平野学、ベストカー編集部
【画像ギャラリー】高い? 安い? トヨタのKINTO ONE&ホンダマンスリーオーナーの料金表
所有せずに借りる
KINTOとホンダマンスリーオーナーは、いずれもカーリース、あるいはレンタカーの一種と考えていい。貸与される車両は「わ」ナンバーではないが、使用料金に税金や保険料も含まれ、最終的に車両は自分の所有にならず返却する。
対するローン(残価設定型を含む)は、税金や保険料はユーザーが別途支払い、通常型ローンは買い取りが前提だ。
残価設定型は、返済期間満了時に車両を返却することも可能だが、買い取りも行える。KINTOやホンダマンスリーオーナーとローンでは、この点が異なる。
クルマが売れていない穴埋め策
メーカーが定額制サービスを導入する背景には、大きくわけて2つの理由がある。
ひとつ目はクルマの売れ行きが鈍っていることだ。
国内の新車販売台数は、1990年には778万台に達したが、その後は下降を続けて2019年は520万台だ。最盛期の67%に落ち込んだ。
この背景には、若年層を中心にクルマに対する関心が薄れたこと、平均所得が1990年代の後半に比べて減っているのにクルマの価格は高まったことなどが挙げられる。メーカーとしては需要を掘り起こしたい。
そのためには新しいサービスを展開することが求められる。レンタカーやカーリースは昔からあるサービスだから、若年層にとっては語感も古い。「わ」ナンバーのクルマを感情的に敬遠する人もいる。これらの事情からサブスクリプションという新しい名称を与えた。
定額制が買い物に対する考え方を変える
定額制が導入されるふたつ目の理由は携帯電話の普及だ。
以前は「商品はお金を払って手に入れる」という考え方が根強かったが、携帯電話にはさまざまなサービスがあり定額制が普及した。
インターネットの使用料金も、当初は接続時間に応じて金額が変わったが、今は定額制で時間制限はない。
この定額制に慣れると、買い物に対する考え方も変わる。
クルマの販売店のセールスマンは、「以前のお客様は、200万円までなら買えるという具合に、クルマを価格で捉えた。ところが今は違う。毎月3万円までなら支払えるという定額制の発想になっている」と述べた。
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