整備士不足にディーラーの妙手! 灼熱の整備工場は昔の話!? 今は冷房完備でツナギも着ないから超快適なのよ! 

整備士不足にディーラーの妙手! 灼熱の整備工場は昔の話!? 今は冷房完備でツナギも着ないから超快適なのよ! 

 自動車整備士の夏は厳しい。1年中ツナギを着ていて真夏は汗だくで働いている。しかし、昨今は環境が改善してきているようだ。整備士の仕事環境の今をお伝えしていこう。

文/画像:佐々木 亘

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整備工場のエアコン普及過程は公立高校の流れに近い

最近のディーラー整備工場は、かなりキレイで夏でも涼しい
最近のディーラー整備工場は、かなりキレイで夏でも涼しい

 現在の高等学校普通教室におけるエアコンの普及率をご存じだろうか。全国の普通教室におけるエアコンの設置率は、2024年9月1日現在で、99.4%となっている。

 関東以西にお住まいの方は、教室にエアコンが無いなんて考えられないことかもしれないが、最も設置が遅れていた東北では、教室にエアコンがある環境は最近整ったもの。

 たった6年ほど時を戻しただけで、宮城県の高等学校におけるエアコンの設置率はわずか2.3%、岩手県で1.9%という低さだった。ただ、2018年当時でも関東以西では設置率80%を超え、大都市圏では100%になるところも。これだけ北と南では、冷房設置状況に違いがあるのだ。

 さて、話を自動車整備の現場に戻そう。整備工場におけるエアコン設置率は、公立高校のエアコン設置率に近いと言われている。

 つまり全国的に整備が進んだのはここ数年のこと。特に東北地方のディーラーで話を聞くと、若手整備士が灼熱の現場に耐え切れず辞めていくこともあったそうだ。自動車大学校では空調が整った環境で整備をしてきたのに、いざ働きに出ると学校よりも劣悪な労働環境に驚く人も多い。

 若手整備士の流出を防ぐため、空調整備の遅れた東北のディーラーでも、8割近くまで整備は進んだ。特にエアコンとエアシャッターの同時設置が多く、自動開閉式のエアシャッターがあるため工場内の温度は格段に下がり、作業効率があがっている。

 また、これまで自動車整備工場で採用されてきた「馬小屋式」の工場は、昨今建設されなくなってきた。横に長く建屋をつくる馬小屋式は、クルマの出し入れは楽なのだが空調が効きにくいというデメリットがある。

 そこで、最近は整備工場には入り口・出口が1カ所ずつしか設けられず、建屋の中に通路を作って左右にクルマを入れていく「中通路方式」へと建て替えるディーラー工場が多い。

 馬小屋式と中通路式の整備工場を比べると、エアコンを作動させたときに建屋内の気温は10℃近く差が生まれる。この差は働くエンジニアにとって、大きな差と言えるだろう。最近のディーラー整備工場は、かなりキレイで夏でも涼しい。

ツナギじゃなくてもいいでしょ! ポロシャツ整備士は超快適!

全国のディーラーには、世界一の技術を持った日本の整備士たちが、気持ちよく働ける環境づくりをしていってほしい
全国のディーラーには、世界一の技術を持った日本の整備士たちが、気持ちよく働ける環境づくりをしていってほしい

 整備士の制服はツナギ。何十年も変わらないこのスタイルを疑うものは少ないだろう。暑さ対策といえばエアコンにファンベストだ。しかしこの固定観念を宮城トヨタ自動車グループ(通称MTG)は覆した。MTG整備士の制服は、ツナギではなく「ワークシャツスタイル」なのだ。

 ヒントになったのは富士モータースポーツフォレスト内のルーキーレーシングガレージ。レーシングカーを整備するほとんどの整備士の服装は、ポロシャツにパンツというものだった。これをディーラーへと持ち帰り、トップダウンでツナギからの転換に踏み切ったという。

 整備のスタイルも何十年前とは大きく変わり、工場はキレイだしほとんどのクルマがリフトで上げられる。漫画の整備士のように寝板に寝てクルマの下に潜って整備をするということはほとんどなくなった。

 もちろん重整備の時にはツナギを着ることもあるというが、基本的な整備作業は、半袖のポロシャツ姿で行うのが令和の新スタイルだ。

 ワークパンツでベルトを締めるため、ベルトのバックルがクルマに直接当たらないよう、シャツの裾は常に外側へ出している。エンジン内部へ手を入れる際には通気性抜群・接触冷間のアームカバーを付けて、安全にも配慮した。

 ちなみに整備士がツナギを着て仕事をするのは、ほとんど日本やアジア圏限定の文化。海外ではTシャツとジーンズだし、北米だとレッドキャップのワークパンツとワークウェアが基本だ。

 日本国内ではまだまだ少数派なワークシャツスタイルだが、この服装が全国のディーラー整備士へ広がってほしいと、宮城トヨタの後藤社長は語る。現場の整備士からも、圧倒的に快適な整備環境へと変わり、仕事の効率が大きく上がったという声が多数聞こえてきた。

 厳しい労働環境で、若手整備士の不足も叫ばれている日本の自動車整備業界。これまでの当たり前を疑いながらイイものを作り上げていく機運が広がっていけば、整備士の仕事にもまた活気が戻ってくるだろう。

 全国のディーラーには、世界一の技術を持った日本の整備士たちが、気持ちよく働ける環境づくりをしていってほしい。

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