少しシワは増えたが、濃い顔つき、曲がった鼻は誰もが見覚えのある、あのF1ワールドチャンピオンそのものだ。
――アラン・プロスト、61歳。F1通算51勝、4度のワールドチャンピオンという記録は、いずれもアイルトン・セナを上回る。
1993年にプロストがF1を引退してから今年で24年。彼は今、エキゾーストノートが轟くフォーミュラレースの頂点ではなく、静かに、しかし、熱い戦いが繰り広げられている、フォーミュラEの現場にいた。
そして今回、本誌・特派員が偶然にも彼に直接取材をする機会を得た。プロストは今、何を考え、フォーミュラEの現場にいるのか?
プロストが、モータースポーツの過去、現在、そして未来を語る。
インタビュー:Yohsiharu Ebihara、写真:Renault,LAT,Honda,Yoshiharu Ebihara
ベストカー2017年2月10日号
F1で破られた“51勝”にプロストは何を思う?
プロストは2014年に「ルノー e.ダムス」の共同オーナーに就任。このチームをフォーミュラE、2年連続チャンピオンに導いている。
こうしてプロストが発展途上のフォーミュラEに携わる最中、F1では彼の持つ偉大な記録が破られた。2016年10月30日決勝のメキシコGP、ルイス・ハミルトン(メルセデス)が、プロストの51勝を上回る通算52勝目を挙げたのだ。
「貴方より1回多く勝ったドライバーが出てきてしまいましたね」。私が話を向けると、プロストはこう答えた。
「気にしていないよ。今のF1と俺たちが(現役で)やっていた頃のF1は違う。だからなんとも思っていないよ」
現代F1は、テストが厳しく禁じられ、ドライバーの習熟も、ほとんどがシミュレーターを使って行うようになった。
プロストの発言の行間には、「バーチャル化され“オペレーター”になった今のF1ドライバーと昔のF1ドライバーは違うんだ」。そんな自負が滲み出ていた。
コメント
コメントの使い方