どこぞの王族、著名なアーティストやスポーツ選手が気まぐれで作った特別な車両が、数十年後に発見されて後のクルマ好きを楽しませることは多い。また1台、ユニークなGクラスが見つかった。Sクラス顔のGクラス、作ったのはあのテニス界の王様だという。
文:古賀貴司(自動車王国) 写真:ピーターセン・ミュージアム
【画像ギャラリー】内装もオリジナル!! Sクラス顔のGクラス結構アリじゃない!?!?!?(7枚)画像ギャラリーAMGがGクラスを手がけた年は間違えていた!?
今、アメリカの有名自動車博物館、ピーターセン・ミュージアムに展示中の1台のクルマが注目を集めている。
「 Totally Awesome!」(“究極のクール展”といった意味合い)と銘打った展示において1983年式のメルセデス・ベンツ300GDが鎮座しているのだ。
AMGがGクラスを正式に手掛けたのは1993年のことのはずなのに、当該車両はAMGによってカスタマイズされているのだ。
中東の消費が史上最高に達し、ヨーロッパの自動車チューニングが急成長していた1980年代初頭。メルセデス・ベンツの存在感とパワーに匹敵できるブランドはほとんどなかった。
そしてさらに目立ちたいと考える超富裕層の顧客のため、ドイツ国内外のチューニングハウスが億万長者の差別化を実現するために、様々なカスタマイズの注文が舞い込んでいた。
オーダーしたのはテニス界のレジェンド
AMGも例外ではない。初代オーナーはテニス界のレジェンド、イヴァン・レンドル。
長らく中東の裕福な王族からの贈り物だとか、中東で開催されたトーナメントの賞品だと噂されていた。だが真実は、もっとシンプルだった。
レンドルがシュトゥットガルトでテニスをプレイしていた日、当時トーナメントのスポンサーだったメルセデス・ベンツが彼を工場見学に招待した。そこで出くわしたのが300GDだった。
レンドルは同席していたメルセデスの幹部に「この300GDにSクラスのフロントを付けることは可能ですか?」と尋ね、簡単なうなずきだけでユニークなワンオフへの道筋がつけられた。
300GDはアファルターバッハに送られ、W116世代Sクラスのワイドグリルとヘッドランプが装着された。
フロントマスクの交換だけでは面白くないと思ったAMGはレカロスポーツシート、マルチスポークアロイホイール、そして両ドアにユニークなデカールも装着した。
博物館に飾られるのが納得できる希少性
ただ、300GDの直列5気筒ディーゼルエンジンは手つかずのままだったようだ。最高速度127㎞/hという300GDは、現在の基準では控えめなスペックと言えよう。
しかし、その価値は数字では測れない。世界に一台しか存在しない「Sクラスのフロントマスクを持つGクラス」という組み合わせは、自動車史上最もユニークな車の一つとして語り継がれている。
レンドルの1983年300GDは「見た目のインパクト」と「他にはない個性」という点では、現在でも色褪せない魅力を放っている。
レンドルの何気ない質問から生まれたこのカスタマイズ車両は、現在のAMG Gクラスの多様なオプション、高級SUV市場の発展、そして個性化への欲求すべての原点となっているのかもしれない。
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