日本屈指の本格派SUV「ランドクルーザー」は、弟分の「プラド」が実は全体の9割超を占めている!? 兄貴分より弟分が支持を集める理由とは?
『日本自動車販売協会連合会』(以下、自販連)統計の、乗用車ブランド通称名別順位を見ると、2019年は、近年のSUV人気を受けてベスト50に15台のSUVが入っている。輸入車においても、昨今の売れ筋はSUVというのが時代の流れだ。
そのなかで、トヨタのランドクルーザーも堅調な販売で、同順位によれば2019年は年間を通じて30位前後で推移し、大きな変動もなく最終的に31位となって、2万8475台を一年で売った。
これは対前年比96.8%の売り上げであり、安定した人気を保っている様子がうかがえる。
その中身を詳しく観てみると、いわゆるランドクルーザーは10%弱で、実はやや小型のランドクルーザープラドが90%以上を占めている。
ランドクルーザーに近い車格のレクサス LXを加えても、ランドクルーザー/レクサスLXの販売台数は年間販売台数の十数パーセントにとどまる。
ランドクルーザーというと、大柄な本格派のオフロード4輪駆動車をまず思い浮かべるが、売れ筋は小型版であるプラドのほうだ。なぜ、プラドなのだろう。
文:御堀直嗣
写真:TOYOTA、池之平昌信
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初代ランクルの流れを汲む「プラド」
ランドクルーザーもランドクルーザープラドも、その源を辿ると、第二次世界大戦後の1951年に発売されたトヨタ ジープBJに行き着く。
トヨタが、悪路走破性を追求した4輪駆動車の開発に取り掛かったのは戦争中のことで、帝国陸軍が米国ジープの性能を知り、国内有力自動車メーカーに開発を求めたからであった。
ただし、生産準備に入ったところで終戦となり、量産されることなく一旦終了している。その後、トヨタ ジープBJが誕生し、発売されるのである。ただし、ジープの名称が商標に関わることが判明し、1954年にランドクルーザーと車名変更したのであった。
その初代ランドクルーザーの流れを汲むのが実はランドクルーザープラドであり、我々が長年本流と考えてきたランドクルーザーは、ロングワゴンというより大柄な車種追加され、そちらの系譜となる。
とはいえ、ランドクルーザープラドの車名で発売されるのは1990年からである。それまでは、ランドクルーザーにはいくつかの種類があるというすみ分けであった。
本家ランクル なぜ大型化?
ランドクルーザーは、その後も進化し続けるなかで車体寸法も次第に大きくなり、ことに「80系」と呼ばれる世代が1989年に登場したとき、一気に大型化した。
それまでは、今日のプラドに近い全長×全幅×全高:4675×1800×1805mmであったのが、4970(+295)×1930(+130)×1860(+55)mmになったのである。
この寸法拡大は、市街地での利用はもちろん、山野の道においても大き過ぎるきらいがある。そこに、より小柄なランドクルーザープラドが存在する意味が生まれてくる。
では、ランドクルーザーはなぜそこまで大型化したのだろうか。1980年代末から1990年代といえば、まさにバブル経済の時期である。トヨタからはセルシオが登場する。
米国では、レクサス LSとして販売された高級4ドアセダンだ。その初代の車体寸法は、4995×1820×1400mmであり、そのような大柄の4ドアセダンが4LのV8エンジンで市街地や高速道路を走ることが日常化していった。
そこにSUV人気の萌芽も重なり、80系のランドクルーザーが高速道路の追い越し車線を疾走する姿を頻繁に見掛けるようになったのであった。
また、ランドクルーザーの大型化にともなうレクサス LXの登場が、米国のキャデラック・エスカレードやリンカーン・ナビゲーターといったフルサイズSUVの呼び水にもなったのではないか。
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