「7つの課題」の進み方 自工会会見で語られた次世代モビリティ社会への壁、鍵はバッテリーの「静脈側」とCN燃料「E20」の認証制度がないこと!??

「7つの課題」の進み方 自工会会見で語られた次世代モビリティ社会への壁、鍵はバッテリーの「静脈側」とCN燃料「E20」の認証制度がないこと!??

 日本自動車工業会(自工会)は2025年9月18日、9月期の定例会見を実施した。片山正則会長(いすゞ代表取締役取締役会長)と副会長陣が、日米通商問題の最新状況、令和8年度税制改正要望、業界横断で進める「7つの課題」の進捗について説明、そして開幕まで2カ月をきったジャパンモビリティショー2025への意気込みなどが発表された。さまざまな課題が山場を迎える中で、日本自動車界のトップたちは何を語ったのか。重点を絞ってお届けします。

文:ベストカーWeb編集部、写真:日本自動車工業会

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モビリティの課題は「自動車メーカー」だけでなく社会全体で

 日本自動車工業会の定例会見(2025年9月期)では、まず米国による自動車・部品への追加関税が9月16日から新たな税率15%で適用されたことに言及した。交渉に当たった日本政府へ感謝を示しつつ、業界団体としては「壊滅的打撃」は回避された一方で影響は依然大きく(関税が2.5%から15%になったわけだから当然だ)、自由で開かれた通商環境の継続協議を日本政府に求めた。

 あわせて、自工会は来年度に抜本的な見直しが実施される予定の自動車税制改革についても言及。車体課税の見直しを最重点要望とし、とくに「環境性能割」の単純廃止と、ガソリン税の暫定税率の代替財源を車体課税で穴埋めする案への反対を表明。これには「絶対反対」という強い言葉で言及した。

日本自動車工業会会長、片山正則氏(いすゞ自動車 代表取締役会長)
日本自動車工業会会長、片山正則氏(いすゞ自動車 代表取締役会長)

 また、自工会が進めている「7つの課題」の進捗についても報告があった。

「7つの課題」とは、自工会が2023年に定め、正副会長がテーマオーナーとなって推進している、次世代モビリティ社会へ向けて自動車業界団体が取り組む課題の重点パッケージ7点のことを指す。①物流・商用・移動の高付加価値化/効率化、②電動車普及のための社会基盤整備、③国産電池・半導体の国際競争力確保、④重要資源の安定調達と強靭な供給網、⑤国内投資を不利にしない通商政策、⑥競争力あるクリーンエネルギー、⑦業界横断のデータ連携(部品トレサビ含む)の7つ。

 この課題の枠組みは自工会の中長期ビジョンにも位置づけられ、産業の枠を超えた官民連携で課題解決を図る方針が示されている。今秋(11月)にはこの課題の進捗状況を経団連モビリティ委員会に報告し、自動車界以外の会社にも協力を求め、成果を共有していく方針とのこと。

自工会が進める「7つの課題」
自工会が進める「7つの課題」

 記者から「どのような進捗があったのか?」との質問に、まず片山会長が全体像として「これまでは、カーボンニュートラル社会の実現も含めて、自動車の問題は自動車メーカーと関係団体が取り組み解決していく、という風潮だった。しかし一昨年から課題を明確化し、産業分野を超えて話し合いを進めたことで、産業界全体の課題ととらえていただけたようで、この点は大成功だったと自負している。また7つそれぞれの課題についても、広範囲におよぶため進捗に差はあるが、形になってきたものもあり、感謝しています。」と語った。

 そうなってくると各課題の進捗がますます気になるので、せっかくなので佐藤恒治副会長(トヨタ自動車社長)が担当する「④重要資源の安定調達と強靭な供給網」、いわゆる「エコシステム」の進捗について聞いてみると、以下のように回答。

「たとえば自動車用バッテリーについていうと、”動脈側”と”静脈側”の問題がある。動脈側は供給網のことで、こちらは調達ルートの安定的な確保が課題となっていて、話を進めています。また、課題が多く残るのは静脈側だとも言えます。たとえば使い終わったバッテリーのリサイクルに関する課題です。進展があったところでいうと、電池そのものの価値(≒性能)を査定する、いわゆる日本版バッテリーパスポートの発行と体制の確立が急務であること、また、HVやEVで使ったバッテリーの多くが国外に流出しているので、これを日本のものづくりに生かす、いわゆる資源回収プログラムも作る必要があって、これらにメドが立ってきました。」

自工会副会長、佐藤恒治氏(トヨタ自動車代表取締役社長)
自工会副会長、佐藤恒治氏(トヨタ自動車代表取締役社長)

 かなり具体的な回答をいただいたので、続けてもう一点。「⑥競争力あるクリーンエネルギー」について、鈴木俊宏副会長(スズキ社長)に進捗を伺うと、以下のように回答してくれた。

「ひとつ確かなのは、カーボンニュートラル燃料を普及させるためには、石連(日本石油連盟)さんと国(日本政府)、それに自工会が三位一体になって進めなくてはならない、ということです。この3つが協力し合わないと、ユーザーにとっても社会にとっても有用なものにはならない。そのうえで自動車会社側に出来ることは、まずカーボンニュートラル燃料、たとえばE20(バイオエタノールが20%入っている燃料)に対応するクルマを作ることです。もちろんE20をどうやって安定的に製造し、安定的に供給するか、という問題もありますが、いまのペースで作り続け、供給し続けて、2040年でやっと市場の70%がE20に対応できるようになるくらいの状況です。これでいいのか、残り30%をどうするのか、という議論も進めなければならない。もうひとつ大事なことがあります。現在、E20には認証システムがありません。どういったE20が認証済みで、それ以外のE20は認証外なのか、そういう仕組みを政府に作っていただく必要があります。」

 こちらは課題に対してやや問題意識が強いトーンだったが、それでも進捗の現時点の状況がよくわかる回答だった。

自工会副会長、鈴木俊宏氏 (スズキ代表取締役社長)
自工会副会長、鈴木俊宏氏 (スズキ代表取締役社長)

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