ワイヤーケーブル式のクラッチ操作と比べて、遊びの調整や注油など、メンテナンス機会が少ない油圧式クラッチシステム。エンジン側にはクラッチユニットを操作するレリーズシリンダーが必ずあるが、ノーメンテナンスのまま走り続けていると、操作感が重く、クラッチの切れや接続がスムーズに行えなくなることもある。ここでは、レバータッチが今ひとつ良くないクラッチレリーズシリンダーを分解洗浄してみた。
文/たぐちかつみ
分解したレリーズシリンダーは内部汚れが酷かった!作動性不良の犯人だろう
レリーズユニット本体の取り外しから作業開始

油圧ホースを取り外し、シャフトドライブの駆動ユニットとフライホイールカバーのあいだに組み込まれているクラッチレリーズユニットを取り外したヤマハV-MAX。ロングサイズの六角ソケットレンチが無いとレリーズユニットを取り外しにくい。

メンテナンス性を考慮したクラッチレリーズユニット。エアー抜きしやすいブリード構造と油圧ホースの接続ポートの形状が特徴的だ。ピストンにはダストブーツが付くので、内部の汚れはフルードとピストンシールによるものだろう。

レリーズ本体の中に組み込まれているピストンを取り出す。ピストンが外部へ飛び出ないように、本体にウエスを巻き付け油圧ホースのポートからエアーガンを吹き付けた。強く吹き過ぎると突然飛び出すので、最初は弱く吹き込もう。
ノーメンテナンス状況が続いていたと思われるレリーズシリンダー

ブレーキマスターシリンダーやキャリパーピストンを組み付ける際の潤滑剤として使い勝手が良いのがCCIブランドのメタルラバーMR20だ。レースシーンでも使われている高性能ケミカルで知られ、金属対ラバー部品の摺動抵抗を低減する。
潤滑ケミカルがあればラバーシールのセット性も良好
- ポイント1・ 油圧クラッチの基本構造は、油圧式ブレーキと同じように考えてよい
- ポイント2・せっかく分解クリーニングするのだから、新品ラバーシール類はあらかじめ作業前に購入しておこう
- ポイント3・ ラバー(ゴム)部品と金属部品には摺動抵抗が発生するので、組み付け時には専用ケミカルやブレーキフルードを必ず塗布しよう
ライダーそれぞれに好き嫌いあるのは事実だが、従来のワイヤーケーブル式のクラッチ操作に対して、操作感を軽減できるように設計でき、ケーブル式に対してメンテナンス性が良いと評価されているのが油圧式クラッチシステムである。1980年代に入ってから、各メーカーの大型モデルで採用率が高まり普及していった。それでも完全なるメンテナンスフリーではないので、油圧式ブレーキシステムと同様に、定期的な分解メンテナンスや部品の洗浄が必要である。ここでメンテナンス実践しているヤマハV-MAXも、油圧式クラッチシステムを採用している。クラッチレバーを操作すると、明らかな重さと言うか、指先には違和感があった、マスターシリンダーには一体式のリザーブタンクがあるが、フルードレベルの点検窓を目視すると、透明のDOT4ブレーキフルードとはまったく異なる「こげ茶」に濁ったフルードを窓越しに確認することができた。そこで、クラッチマスターシリンダーとエンジン側にあるレリーズユニットの分解清掃を行うことになった。
最初に取り掛かったのがエンジン側に組み込まれているレリーズユニットである。油圧式クラッチの場合は、プッシュロッドでコントロールプレートを押し上げ、クラッチを断続するタイプが多い。そのため、クラッチユニットの反対側にレリーズピストンがレイアウトされていることが多い(クラッチ構造の違いによって、クラッチカバー側にレリーズシリンダーが組み込まれるモデルもある)。
クラッチマスターシリンダーのリザーブタンク(レベル窓)から見えたように、レリーズシリンダー内の汚れも想像できたが、案の定、酷かった。おそらく何年もメンテナンスされていなかったのだと思うが、今回の分解洗浄とラバーシール交換によって、コンディションは復活し、作業完了後のクラッチレバー操作感は、作業前とはまったく異なるスムーズかつ抵抗感が少ないものに改善された。
詳細はこちらのリンクよりご覧ください。
https://news.webike.net/maintenance/486765/
滅多に分解しないクラッチレリーズシリンダーこそ定期的に分解洗浄!!【画像ギャラリー】
https://news.webike.net/gallery3/486765/486768/








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