同じ血筋でバチバチ!? 「兄弟車」たちが繰り広げた仁義なき戦い

同じ血筋でバチバチ!? 「兄弟車」たちが繰り広げた仁義なき戦い

 同じメーカー内で競い合う“兄弟車”。基本スペックも見た目もほぼ同じなのに販売戦略や個性で明暗が分かれ、兄弟にもかかわらずセールス面で大きな差が生まれることに……。そんな仁義なきメーカー内バトルに巻き込まれた(?)、8モデルをここではあらためて振り返る。

文:FK/写真:トヨタ、日産、ホンダ

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トヨタ―ルーミーvs.タンク

同じ血筋でバチバチ!? 「兄弟車」たちが繰り広げた仁義なき戦い
4.6mの最小回転半径と取り回しの良いコンパクトなサイズはもとより、前後乗員間距離を最大1105mm確保して広々とした後席まわりも実現したルーミー

 2016年11月に発売されたルーミーとタンク。

 そのコンセプトは広々とした空間“Living”と余裕の走り“Driving”を掛け合わせた“1LD-CAR”で、子育てファミリーをはじめとする幅広いユーザーの日常にジャストフィットする新タイプのトール2BOXとしてデビュー当初から高い人気を博した。

 大半の部分が同仕様となるルーミーとタンクだったが、エクステリアにおいては大きな差別化が図られていた。

 厚みのあるヘッドランプと面を強調したグリルによって重厚感のある力強さを表現して“品格と艶やかさ”を強調したルーミーに対し、タンクは切れ長のヘッドランプと大開口アンダーグリルの組み合わせによって“ダイナミックさ”を表現。

 また、ルーミーとタンクはそれぞれにメッキ加飾や専用バンパーを施したカスタムグレードも設定されていた。

 実際にはそれくらいの違いしかなかったルーミーとタンクだったが、販売台数においては常にルーミーがタンクを上回る状況が続いた。

 発売から1カ月の時点における受注台数はルーミーが約1万8300台だったのに対して、タンクが約1万6700台。2017年はルーミーが7万8690台でタンクが7万839台、2018年はルーミーが8万6265台でタンクが7万3799台、2019年はルーミーが9万1650台でタンクが7万4518台。

 スポーティな雰囲気が自慢のタンクよりも、ラグジュアリーな雰囲気を醸し出していたルーミーのほうが時代のニーズにマッチしていたのかもしれないが、ルーミーはタンクにとってどうしても超えられない壁となったのだ。

 そして、2020年9月15日に行われたマイナーチェンジでタンクはラインナップから姿を消し、ルーミーに1本化された。

ホンダ―アコード・インスパイアvs.ビガー

同じ血筋でバチバチ!? 「兄弟車」たちが繰り広げた仁義なき戦い
今までにない新しい走りを予感させるクルマとして、英語で“ひらめき”を意味するインスパイアを車名に採用。国産車としていち早くレジェンドが採用したSRSエアバッグシステムも採用された

 1989年9月、ワールドワイドな先進性と爽快な走りをさらに徹底追求した横置き4気筒エンジンを搭載した4ドアセダンのアコード/アスコットがフルモデルチェンジするタイミングで同時発表された4ドアハードトップのアコード・インスパイアとビガー。

 “上級小型車”と銘打って登場したアコード・インスパイアとビガーの2台ではあったが、その後、2012年まで販売が継続されたアコード・インスパイア(当時の車名はインスパイア)に対して、ビガーは1995年に販売が終了。兄弟車にもかかわらず、大きな明暗が分かれた形となった。

 FFテクノロジーの新たな展開として日本初となるFFミドシップ・縦置5気筒エンジンレイアウトを引っ提げてデビューしたアコード・インスパイアとビガー。

 この新世代のパーソナルな4ドアハードトップの2台は気持ちの良い走りやダイナミズムと優美さを両立したフォルムなどが従来の上級小型車とは一線を画し、大人の感性を求めるユーザーを大いに刺激した。

 なかでもロングホイールベースとショートオーバーハングの力感に満ちた八等身フォルムや、本革・エクセーヌ・本木目が醸し出す充実したオーセンティックでパーソナルなインテリアは落ち着いた年配者だけでなく、バブル絶頂期のハイソカーブームを支えていた若者にも受け入れられた。

 ちなみに、この2台もルーミーとタンクと同様に基本スペックは同じで、フロントグリルとリアコンビネーションランプ&ガーニッシュに違いがあった程度。

 発売当時の販売計画もインスパイア、ビガーともに月間6000台と同じだったが、販売チャンネルの違い(インスパイアはクリオ店、ビガーはベルノ店)が影響したのか世間一般の認知度やセールスの面ではインスパイアに軍配が上がった。

次ページは : 日産―4代目シルビアvs.2代目ガゼール

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