追い越し車線に居座り続けるドライバーのなぜ? 後続車は速度違反だからどかなくていい?

追い越し車線に居座り続けるドライバーのなぜ? 後続車は速度違反だからどかなくていい?

 高速道路で追い越し車線をノロノロと走り続けるクルマ……。後ろから来ると気になって仕方ないその行為に、SNSでは不満の声があがっている。追い越し車線に居座るドライバーは「法定速度一杯だから譲る必要はない」と考えているのか。追い越し車線のルールと違反、パッシングや合図の是非、そして賢い対処法をやさしく解説する。

文:ベストカーWeb編集部/写真:Adobe Stock、トビラ写真(写真AC)

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SNSで噴出する追い越し車線居座りドライバーへの不満の数々

新東名120kmh区間。追い越し車線に居座り続ける軽自動車(takadahirohito@Adobe Stock)
新東名120kmh区間。追い越し車線に居座り続ける軽自動車(takadahirohito@Adobe Stock)

 SNS(Xなど)では、「追い越し車線を走っているのに速度が遅くて追い越せない」「追い越す直前に入ってきて急ブレーキを踏んだ」「左は空いているのに右を塞ぐな」という投稿が散見される。

 コメントのなかには「自分は法定速度で走っているから譲る必要はない」という意見もあり、速度遵守と車線変更のマナーについて誤解が広がっている。

 実際、SNSでは100km/h制限の区間で80km/h程度のノロノロが追い越し車線にいると「流れが止まって渋滞になる」「譲ってほしいのに譲られない」といった嘆きが目立つ。

 こうした不満の裏には、追い越し車線のルールや優先順位への理解不足、そして後続車のフラストレーションがあるようだ。

追い越し車線に居座り続けるのは違反です

後ろを見ずに追い越し車線を走り続けないようにしましょう(Adobe Stock@伸樹 櫻田)
後ろを見ずに追い越し車線を走り続けないようにしましょう(Adobe Stock@伸樹 櫻田)

 追い越し車線は、法律で「追い越しのための通行帯」と定められている。道路交通法が求めるのは、追い越しが終わったら速やかに左側の走行車線に戻ることだ。

 追い越しを終えたのに右側の追い越し車線に居座る行為は「通行帯区分違反」とされ、違反点数1点、反則金6000円(普通車)という処分対象になり得る。

 また、警察庁のデータによれば、2023年だけでも通行帯違反(追い越し車線居座り含む)で約3万件が検挙されているという。

 取り締まりの判断は警察官に委ねられるが、一般的な目安として「追い越し車線を約2km以上走り続けると違反と見なされやすい」とされる。100km/hで走行していれば、約1分12秒程度の居座りが目安だとされることもある。

 重要なのは、後続車が法定速度を超えているかどうかにかかわらず、追い越し車線を長時間使い続けること自体がルール違反になる可能性があるという点だ。あくまで追い越しが目的の車線であり、速度遵守と車線マナーは別次元で考える必要がある。

パッシングや右ウインカーは今やみかけない

速度の遅い軽自動車が追い越し車線を走行していた場合、パッシングや右ウインカーを出していい?(写真AC)
速度の遅い軽自動車が追い越し車線を走行していた場合、パッシングや右ウインカーを出していい?(写真AC)

 かつては追い越し車線で遅い前車に対して、後続車がパッシングや右ウインカーで「どうぞ」と意思表示する光景も見られた。

 だが現在では、警察庁が「短時間・軽度な点滅は意思表示として有効」とする一方で、連続・執拗な点滅や不必要なクラクション、車間距離の詰めすぎなどは「あおり運転防止法(妨害運転罪)」の対象となる可能性がある。

 2020年に改正された道路交通法では、著しい接近や不必要な合図等が10類型の妨害運転として規定されているため、追い越し車線の居座りに対して過剰に抗議する行為は、逆に自分が処罰対象になるリスクがある。

 たとえば短時間の軽いウインカー程度なら合図として問題ないが、繰り返し頻繁に行うパッシングや急接近は避けたい。

 このあおり運転防止法の存在が、運転者同士の直接的な意思疎通を減らしている一因とも言える。したがって、不要な合図や急な車間詰めによる注意喚起は今やみかけなくなった。

追い越し車線に居座り続けるクルマ的対処法

後ろにいたクルマが真ん中の中央車線に移り、割り込むように追い越し車線に入ってきたケース。車間距離を空けすぎたためなのか?(写真AC)
後ろにいたクルマが真ん中の中央車線に移り、割り込むように追い越し車線に入ってきたケース。車間距離を空けすぎたためなのか?(写真AC)

 追い越し車線で前方にノロノロ走行車がいる場合、冷静な対応が重要だ。まず、安全なタイミングで走行車線(左側)へ移り、そこで追い抜きを行うのが基本となる。

 この方法は「追い抜き」と判断され、違反にはならないが、追い越し車線からすぐに走行車線に戻って前方車の前に出ると「左側追越し違反」となり、違反点数2点・反則金9000円となる可能性がある。

 また、追い越し車線を走行するクルマに追いついても、自分が速度違反をしているから追い越さないという考えは避けたい。速度違反をしなくても、速度の速い後続車がいる状況では、走行車線側を使って抜ける柔軟な運転が有効だ。急な車線変更や無理な割り込みは事故につながるだけでなく、違反のリスクも高めるため注意が必要である。

 追い越し車線で前の車両に追いついたら、一旦落ち着いて車間距離を確保し、安全な車線変更のタイミングをうかがおう。走行車線で十分に速度を維持しつつ抜けることで、リスクを減らしながらスムーズな流れを生むことができる。

 追い越し車線の居座り問題は、単なるイライラを超えて交通の安全や秩序に直結するテーマだ。SNSの声にあるような不満を解消するためにも、基本ルールと安全意識を再確認し、譲り合いと冷静な運転を心がけたいところである。

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