クルマ業界のグローバル化が進むなか、日本向けの専売モデルはますます減っている。
生き残りをかけるメーカーの方針もわからなくもないが、そんななかで国内市場を大事にしようとするメーカー、経営トップも存在する。
さてそれはどこのメーカーか? 社長は誰なのだろうか?
文:渡辺陽一郎
ベストカー2017年4月26日号
クルマファンを喜ばせようとしている社長は誰だ?
最近は新型車の発売が滞りがちだ。フルモデルチェンジを行わず、細かな改良を繰り返しながら7年以上にわたり売り続ける車種も多い。
これは日本のメーカーが国内市場を「おまけ」と見るようになった結果で、背景には国内販売比率の低下がある。この状況で国内市場を重視するメーカーはどこか、その判断をする社長は誰かを考えたい。
国内重視の1位はスズキだ。2016年の国内販売比率は21%。インドを筆頭に海外にも力を入れるが、軽自動車も多く手がけて日本を「おまけ」とは見ていない。
小型車のソリオを含めて日本向けの車種を充実させ、2016年の国内販売台数の順位はトヨタとホンダに次ぐ3位であった。
今のスズキを築いたのは鈴木修会長だ。国内販売網の構築、インドへの進出と成功などをすべて指揮した。人気車のハスラーも、鈴木修会長がKeiの後継車種の開発を指示したことで誕生している。
2位はトヨタ。2016年には生産総数の18%を国内で売った。国内の販売台数は1位で、小型/普通車に限れば約49%をレクサスを含むトヨタ車が占める。
背景にあるのは海外にかたよらないトヨタの方針と、メーカーから独立した地場資本の強力な販売会社だ。
後者は手厚い顧客管理で人気の下がったセダンや3ナンバー車を堅実に売る。トヨタだけは取り扱い車種を区分する販売系列を存続させ需要を守っている。
ちなみに他メーカーは系列を撤廃した。「どの店舗でも全車を買いやすくする」というのは系列撤廃の口実で(それをいえば系列はもともと不要だった)、本当は販売の縮小に応じた後ろ向きの判断だ。
トヨタはそれをしていない。豊田章男社長はクルマ好きで知られ、ヴォクシーG’sなど国内向けのミニバンにも運転の楽しさを与える。
3位はダイハツでトヨタの完全子会社。軽自動車が中心だから国内販売比率が46%と高い。軽自動車では販売台数首位になり、小型車はすべてトヨタに供給されて売れゆきも好調だから、国内販売に与える影響は大きい。
従来の社長にはトヨタ出身者が多かったが、今の三井正則社長はダイハツの生え抜きだ。軽自動車の開発で得たノウハウを生かし、コンパクトな車種で存在感を発揮する。
4位はホンダ。国内の販売比率は14%だが、2016年の国内販売台数順位はトヨタに次ぐ2位だ。
軽自動車のNシリーズ、コンパクトカーのフィット、5ナンバーミニバンのフリードやステップワゴンを手がけて国内向けの車種が多い。Nシリーズの発売は伊東孝紳社長の時代だが、今は八郷隆弘社長が受け継ぐ。
5位はスバル。OEM車を除くと全車が3ナンバーサイズだが、視界に配慮した開発など国内の評価も高い。
国内販売比率は15%だ。吉永泰之社長は営業部門の出身で、販売面の強化が期待される。
残りの日産(国内販売比率は10%)、マツダ(13%)、三菱(8%)は海外重視だ。日産はゴーン社長(4月1日より会長)の手腕で業績を回復したが、国内だけは苦戦しており、セレナは2年半ぶりの新型車であった。
マツダや三菱も新型車の国内発売は少ない。マツダはミニバンの開発も行わず品ぞろえが海外志向を強めている。
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