全日本ツーリングカー選手権の29戦全勝という神話の裏には、ワークスに牙を剥いた1台のプライベーターGT-Rがいた。彼の名前はHKS SKYLINE GT-R Gr.A。あの異彩を放つカモフラージュカラーのマシンが、京商「MINI CAR & BOOK」で1/64スケールのミニカー&小冊子セットで販売。HKSとGT-RとグループAの物語を、今こそひも解く時だ。
文:ベストカー編集部 鈴村朋己/写真:京商
【画像ギャラリー】異彩を放つカモフラ柄まで忠実に再現!! 京商が手がけたHKSHKS SKYLINE GT-R Gr.Aをズームとして目に焼き付けて(13枚)画像ギャラリーグループAを騒がせた「最強プライベーター」の記憶
1980年代後半から1990年代前半に行われていた全日本ツーリングカー選手権(JTC)は、今を思えばとんでもないレースだった。
日産R32スカイラインGT-Rがデビューした1990年、全6戦でポール・トゥ・ウイン。そこから4シーズンで29戦全勝をマーク。数字だけ見ればワンメイクレースのようだが、ワークスだけでは語り切れない数々のドラマが存在していた。
そのひとつに例えられるのが、チューニング界の雄・HKSの挑戦である。市販車チューニングの世界で名を轟かせていたメーカーが、自社開発のマシンでレースのど真ん中に殴り込んだのだ。
ワークス勢を本気で脅かし、1993年の第3戦SUGOラウンドで掴んだ初優勝。あの瞬間をテレビの前で見ていた世代は、今でも鳥肌が立つはずだ。
KYOSHO MINI CAR & BOOK 第25弾に選ばれたのは、まさにその系譜に連なる HKS SKYLINE GT-R Gr.A。「プライベーターがワークスを喰いかけた時代」の記憶が、1/64というスケールに凝縮されている。
1/64のボディに詰め込まれたHKS GT-Rの「圧」
市販車ベースで繰り広げられていたグループAマシンゆえ、造形上の派手さはほとんどない。ワイドボディでもなければ、過激なエアロもない。
それでも、このミニカーを真正面から見たときに感じる圧はどうだろう。R32の端正なラインの上に、HKSおなじみのカモフラージュカラーとスポンサーロゴが重なるだけで、そこには戦闘モードに入ったGT-Rの空気が立ち上がる。
京商はその空気を、とことん1/64で再現してきた。バンパーやフェンダーのエッジ、スポンサーステッカーの配置、アルミホイールのデザイン、サイド出しマフラーの存在感、ロールケージを含むインテリアの作り込み。
どこを拡大しても「分かっている人間が作ったモデルだな」という納得感がある。
そして京商の定番アイテムになりつつある、ライト点灯ギミック「MOTN(モトン)システム」も搭載。別売りの「MOTN LEDベースシステム」と組み合わせることで、ヘッドライトとテールランプが発光する。
暗い部屋でスイッチを入れれば、ミニカーは一気に止まっている模型から“これからグリッドに並ぶレーシングカー”へとモードが切り替わる。1/64なのに、ちょっと背筋が伸びる。このスケールでそこまで感情を揺らしてくるのは、なかなかズルい。
ただのオマケじゃない小冊子がえぐる「当時」と「今」
京商MINI CAR & BOOKの真骨頂は、小冊子にあるといっていい。今回も、単なるマシンスペック紹介で終わらない構成になっている。
レストアを受け、当時の姿を取り戻したHKS SKYLINEの現在の姿。ステアリングを握ったドライバー、そして開発エンジニアたちの証言。グループA29戦29連勝を改めて振り返るストーリーが凝縮されている。
さらに、HKSがこれまで手掛けてきたレーシングマシンが眠る秘蔵庫への潜入取材。
そして、現HKS社長がこれからのカスタマイズ&チューニングの未来を語り、第2世代GT-R向けの最新パーツ群も紹介される。
まとめるとこの一冊には、HKS GT-Rというアイコンを今と昔の両方から掘り下げるミニHKS本のような内容になっているわけだ。
ミニカーを目の前に置きながらページをめくると、誌面の中のスカイラインと、机の上の1/64がリンクし始める。 画面越しに見ていたグループAと、記憶の中のサーキットの匂いが、少しずつ繋がっていく感覚がある。
コンビニで買える大人のご褒美ホビー
京商MINI CAR & BOOKは、「コンビニでサクッと買えるのに中身はガチ」というシリーズとして定着しつつある。
仕事帰りにふらっと立ち寄ったファミリーマートで、棚にずらりと並んだ中からHKSカラーのGT-Rと目が合う。その運命を迎えた時、自然とレジで4950円を支払い、家に帰って箱を開けるミニカー好きの姿が想像できた。
ミニカーを取り出して眺め、LEDベースに載せてライトを点灯させる。小冊子を開けば、リアルタイムで見て、あるいは憧れていたグループAの記憶がフラッシュバックする。
単なる「新しいミニカーを1台増やした」という単純な話ではない。かつてテレビの前で固唾を呑んでいた自分と、今の自分をつないでくれる、小さなご褒美時間のはじまりだ。


















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