セレナに搭載される「プロパイロット」の使用中に、ドライバーがブレーキをかけなかったことで追突事故が起きた。これは4月14日に国交省が明らかにしたものだ。
そもそも現状の“自動運転”とは、何ができて、何ができない技術なのか。事故は誤解が原因で起きていた。
文:鈴木直也/写真:編集部、NISSAN、shatterstock.com
ハンドルもブレーキも全部車がやってくれるわけではない
自動車メーカー、とくに日産がセレナで積極的にCMを展開したこともあって、そう遠くない将来クルマが自動的に自律走行する時代が来ると思っている人が少なくない。
こういう風にユーザーの関心に火がつくと、グーグルやテスラなど、アメリカのベンチャー企業が研究中の技術まで、明日にでも実用化するかのようにメディアが煽って報じる。
ネット用語でいうと「バズる」っていうんですか? こうなるとほとんど炎上案件です。
「寝てるあいだに目的にまで運んでくれるの?」とか、「ハンドルもブレーキも全部クルマがやってくれるんでしょ?」とか、ワケのわからない話になりつつある。
もちろん、良識あるみなさんはご存じのとおり、完全自動運転が数年以内に実用化するなんてバラ色の夢物語は、可能性でいえばかなり低い。
いや、もちろん実験室やテストコースレベルでは、すでにかなり高度な自動運転実験車が走ってる。それどころか、YOU TUBEなどを検索してみれば一般公道でもテスラやグーグル傘下のウェイモなんかが、夢のようなムービーを公開してます。
Autopilot Full Self-Driving Hardware (Neighborhood Short) from Tesla, Inc on Vimeo.
技術開発としてはいま一番ホットな分野だから、センシング技術にしても制御ソフトウェアにしても、ここ数年で飛躍的な進化を遂げていることは間違いない。
この技術を量産車に採用すれば、いわゆるレベル3自動運転(運転者は万一の時のバックアップだけを担当する)なんかすぐに実用化できそうに見えてもムリもないところです。
システムの誤解が事故を招いた
ところが、この実験車両から量産車への間に、めちゃくちゃ大きなハードルがそびえ立っていることを、なぜかみなさんあえて無視しているように思えてならない。
そのハードルというのは、ひとつにはシステムとしての信頼性の問題、もうひとつは万が一事故になった場合の責任の所在。ここがクリアされないかぎり、自動運転技術を広く量産車に採用するのは難しいと思うんだけど……。
先日、セールスマンがお客さんにセレナの自動ブレーキを体験させようと思って事故になったニュースがありましたよね。
まぁ、セレナの「プロパイロット」は、自動運転のカテゴリーでいえばレベル2で、常にドライバーが監視をしていなくてはいけないというシステム。
セレナに搭載されるプロパイロットは、ドライバーの負担を軽減するすばらしい先進技術。しかし、システム作動中であっても万一の場合はドライバー自身が操作をおこなわなければならない
それなのに「ブレーキを踏まないで我慢してください」なんてセールスマンが指示するとは、「いったいどういう教育しとるんじゃい!」という低レベルな事件だったわけですが、メディア的には「自動運転で事故」なんていうトンデモな見出しがついてしまう恐れがある。
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