2026年3月28日(土)、静岡県湖西市の「浜名湖ボートレース対岸駐車場」にて、全国から約900台のジムニーが集結。スズキが公式に主催する初めての四輪車ファンイベント「ジムニーデイ」が開催されたのだ。会場には家族連れからベテランオーナーまで幅広い層のファンがつめかけた。開会の挨拶に立ったスズキ鈴木俊宏社長は「ファンの皆さまに集まっていただき、改めてジムニーというクルマへの愛を実感した。本当に感謝申し上げます」と語り、表情には確かな手応えがにじんでいた。
文、画像:ベストカーWeb編集部
【画像ギャラリー】「ジムニーデイ」の様子(スズキ初の公式四輪ファンイベント)(14枚)画像ギャラリー愛と信頼、課題も語られた初の公式ファンイベント
ジムニーといえば、非公式のオーナーズミーティングやファンイベントは全国各地で数多く開催されてきた。しかし、スズキ自身が公式に主催するファンイベントは、これまで一度も行われていなかった。その点について鈴木社長は以下のように語る。
「時代の背景もあるし、ジムニーはどちらかといえば仕事に使うクルマというポジションだった。ずっと根強い人気はあったが、一般の人も含めてここまで広く愛されるようになったのはここ2世代くらいの話」
振り返れば、ジムニーは1970年の誕生以来、林業や農業、土木関係者など「プロの道具」として支持されてきた。趣味やレジャーの相棒というより、悪路を走破するための実用車という色合いが濃かった。それが大きく変わったのは、2018年に登場した現行型(4代目)から。
スクエアなデザインに回帰した現行型は、本格四駆としての機能に徹しながらも、スタイリングが幅広い層の心を掴んだ。ユーザー層が劇的に広がったことが、メーカー主催イベントの実現を後押ししたといえる。
会場では鈴木社長自らが来場者と直接交流する場面も見られた。感想を聞くと、
「本当に愛されているなあと実感しました。長年乗ってくださるオーナーの方にお話しを聞いたんだけど、惚れ込んでもらってるよなぁと。ここは大事にしなきゃいけないし、そういうクルマ作りはこれからも重要」
印象的だったのは、長野から来場したオーナーとのエピソードだ。「冬なんか錆びちゃって大変でしょう」と声をかけたところ、「冬は乗らない。別のクルマがあるから」との答えが返ってきたという。ジムニーを実用車としてではなく、大切な”愛車”として所有する。そんなオーナーの姿に、社長自身が時代の変化を実感したようだ。
会場にはお子さん連れのファミリー層も多く見られた。この点について社長は「シエラだけだと大蔵省(奥さん)の許可が得られずに買えなかったファミリー層も、ノマド(5ドアモデル)でさらに広がった」と分析。スタッフが「家族で来ても楽しめるイベント」を意識して企画したことも功を奏したようだ。
湖西市の名物であるうな重やポーク丼などのグルメ出店も大好評で、クルマ好きだけでなく家族全員が楽しめる空間が実現していた。浜名湖といえばウナギが有名だが、静岡県内で最大の豚肉の生産地でもあるとのこと。知らなかった。
会場で話を聞いた参加者からは、「初めての(スズキの)公式ファンイベントということで楽しみにやってきた。ここ(湖西市)を聖地としてほしい。記念碑とか建ててくれたら撮影したい」、「(ラジコン体験や型押しなど)子供と一緒に楽しめるブースがあるのがありがたい。あとはもうちょっと、ここだからこそ楽しめるものや記念品、体験がたくさんあるとよかったかな」との声が聞かれた。
電動化時代、ジムニーの未来はどうなる
今後、名車ジムニーといえど避けて通れないのがカーボンニュートラル社会への対応問題だ。ジムニーの最大の武器である「軽量で走破性が高い」というアイデンティティは、たとえば重いバッテリーを搭載する電動化とは本質的に相性が悪い。この点について、鈴木社長の回答は極めて慎重かつ現実的だった。
「ジムニーに限って言うと、やっぱり軽量で走破性があるっていうところをどうやって維持しながら(カーボンニュートラルへの対応を)やっていくのか、ということ。電動化なのか、カーボンニュートラル燃料を使いながらやるのか、いろいろな手段を探っていかなきゃいけない」

さらに「重たくしたら意味ないよね」と断言。電動化はもちろん視野に入れつつ、ジムニーの本質を守るためにあらゆる可能性を排除せず検討していく姿勢を示した。
また、安全装備の増加についても、
「クルマを使う目的に合わせた制度にしていかないと、”使いたいんだけどクルマがないよね”っていう世界になってしまうのはまずい。もちろん安全第一だけど、用途によってはそこまで必要ないよねっていうケースもある。高速走るわけじゃないクルマもあるし、下駄代わりのクルマもあるわけだから」
海外ではブドウ園や狩猟で使われるジムニーが、規制強化でなくなったらどうなるのか。そんな問題提起も含め、単なる環境対応ではなく、クルマの用途に応じた柔軟な制度設計の必要性を訴えていた。
「やるなって言ったら怒られる」来年以降の開催は?
最後に気になるのは、この「ジムニーデイ」が来年以降も続くのかという点。鈴木社長の答えは明快だった。
「まだ正式な話はないけど、もうこういう(大入りの)状態だから、やるでしょう。やるなって言ったら怒られるよね」
思わず笑いを誘うコメントだが、これは社長自身がイベントの手応えを十分に感じている証拠でもある。一方で課題も見えたという。
「今回はうまく告知できていなかった。(専売の)グッズもたくさん並んでいただいて、足りなくなるんじゃないか。イベント用のグッズが品切れになるのはお客さんに対して失礼。(ファンイベントは)2輪では経験してるんだけど、そういうところを勉強させてもらいながら、継続していくのはありかな」
さらに、今後は他車種への展開も視野に入っているようだ。「社内では、スイフトスポーツなども根強いファンを持っていることから、やりたいよねっていう話は出てくるんだろうね」と、ファンイベントの横展開にも含みを持たせた。ええと、やるときはお声がけください。お手伝いします。
ジムニーが湖西の地で生まれ変わった日
今回のイベントが湖西市で開催されたことにも大きな意味がある。現行ジムニーはスズキの湖西工場で生産されており、まさに”ジムニーの故郷”と言える場所だ。
「スズキが活動してきた遠州を中心にこういうイベントができるのは、地元の人たちにもファンとなってもらえるいい機会。地元が活性化することに協力できれば」
日本で販売台数3位のグローバル企業となったスズキだが、社長は「おごらず、お客様が求めるものをしっかり作っていく」と繰り返した。売って終わりではなく、イベントやアフターサービスを含めた”好循環”を作りたいという思いが、この「ジムニーデイ」には込められている。
スズキは「日本は成長市場」と語る数少ないメーカー。今後は(軽自動車はもちろん、普通車も)魅力的な新型車を揃えてシェアを拡大させたい狙いがある。また自動車メーカーとしては「新車を売って終わり」ではなく、継続してオーナーと関わり、いわゆる「バリューチェーン」で稼いでゆく姿勢も重要になるだろう。
そういう意味で、ジムニーオーナー用アプリ「ジムジャム」の開発、ローンチに続いて今回の「初めてのファンイベント主催」は、今後のスズキの日本市場展開に大きな意味を持つ。
約900台のジムニーが浜名湖畔にずらっと並んだ光景は、このクルマがもはや単なる移動手段ではなく、人と人をつなぐ”文化”になったこと、さらにスズキの今後の日本市場戦略が大きく前進しそうなことを、雄弁に語っていた。
【画像ギャラリー】「ジムニーデイ」の様子(スズキ初の公式四輪ファンイベント)(14枚)画像ギャラリー
















コメント
コメントの使い方