2週間の停戦合意が報じられたものの、まだまだ予断を許さない中東情勢。事態が緊迫するたびに「ガソリンが高くなる」と報じられるが、今後もしまたホルムズ海峡が封鎖され(解除されず)、その状況が長期化した場合、深刻な影響を受けるのは燃料(石油や天然ガス)だけではない。バンパー、ダッシュボード、内装パネル、タイヤ、ホース類、そして塗装──これらすべての原料となっている「ナフサ」が足りなくなる。日本が輸入する石化用原料ナフサの中東依存率は、2024年実績で実に73.6%。「ただちに部品供給が止まる」とは言えないが、価格と納期がじわじわ効いてくるリスクは確実に存在する。SNSでは「このままだと2カ月で詰む」といった危機的状況を伝える声も上がったが、資源エネルギー庁は「(節約すれば)半年は大丈夫」との見解も公表。こんなに大騒動になるナフサって、何に使われているのか? どういう状況なのか?? 本稿では、公的統計と業界資料をもとに、自動車とナフサの意外な関係を解説する。
文:ベストカー編集局、画像:AdobeStock、経済産業省
【画像ギャラリー】経産省が発表した「ペーパー」オールジャパンで供給危機を乗りきれる…のか??(9枚)画像ギャラリーナフサが「自動車の見えない原料」である理由
「ナフサ」とは、原油を精製する際に得られる軽質の留分だ。これをナフサ分解炉(クラッカー)で約800℃に加熱すると、エチレン、プロピレン、ブタジエン、BTX(ベンゼン・トルエン・キシレン)といった基礎化学品になる。
これらが樹脂、合成ゴム、塗料、接着剤などの「川中」製品になり、最終的に自動車部品という「川下」に届く。経産省も、ナフサ起点の化学サプライチェーンが自動車など川下産業の競争力を支えていると整理している。
自動車に使われる代表的な樹脂はポリプロピレン(PP)、ポリウレタン(PUR)、ポリエチレン(PE)、ABS樹脂などだ。PPはバンパー、インテリアパネル、ダッシュボード、ケーブル絶縁材など幅広く採用されている。塗装も石油化学由来の合成樹脂塗料が主流だ。
そして見落としがちなのが合成ゴムだ。日本の合成ゴム消費量の約8割が自動車用とされ、タイヤだけでなく、燃料・ブレーキ・ラジエーター系のホース、シール、パッキン類にも広く使われている。つまり自動車は、金属ボディの内側も外側も、ナフサ由来の素材なしには成り立たない。
ナフサ分解産物
主な川中製品
自動車部品
使用箇所の例
プロピレン
PP(ポリプロピレン)
樹脂成形品
バンパー、ダッシュボード、ドアトリム
エチレン
PE、PVC、合成樹脂塗料
ケーブル被覆、塗装
ワイヤハーネス、ボディ塗装
ブタジエン
合成ゴム(SBR、BR)
タイヤ、ホース、シール
走行系、燃料系、制動系
BTX(ベンゼン等)
ABS樹脂、ナイロン、PUR
内装、シート、フォーム
インパネ、シートクッション
「クルマ1台にプラ130kg」──必要量のスケール感
自動車産業向けナフサ消費量の公表統計は存在しない。ただし、環境省の「自動車向け再生プラスチック市場構築アクションプラン」によれば、乗用車1台あたりのプラスチック使用量は約130kgといわれている。国内年間生産775万台を前提にすると、毎年約100万トンのプラスチックが乗用車だけで消費されている計算になる。商用車や二輪車を含めれば、その数字はさらに大きい。
しかも今後は「量」だけでなく「原料の出どころ」も問われる。環境省資料では、自動車向け再生プラスチック等の必要供給量を2031年に2.5万トン/年、2035年に12.4万トン/年、2036~2040年には15.7~19.0万トン/年へ拡大する前提を示している。自工会資料でも、2036~2040年のサステナブルプラスチック必要量は年平均約24万トンという参考値が示されている。ナフサから作る素材の需要は、当面減るどころか、「どこから調達するか」が新たな経営課題になる。









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