新型ヤリスがハイブリッド車(HV)の革命児になる!? 驚異の燃費性能を実現したその秘密とは?
ヴィッツから車名を改め2020年2月に発売された新型ヤリスの燃費性能がすこぶる話題だ。今やHVが当たり前になり、熟成期に入った……と誰もが思っていた。
しかし、ヤリスはより実態に近いといわれる新基準のWLTCモード燃費で35.8km/L。実際に走らせても、常識破りの燃費値をマークした。
アクアやプリウスなどでトヨタのHVは熟成を重ねてきたにも関わらず、なぜヤリスは、その一段階上をゆく圧倒的燃費性能を実現できたのか?
文:鈴木直也
写真:編集部、HONDA、TOYOTA
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燃費スペシャル車だった初代インサイト以来の衝撃
コロナ騒動の陰に隠れてしまったが、今年上半期でもっともインパクトのあった新車はヤリス、筆者はそう確信している。
何がすごいって、やはりビックリしたのはその燃費性能だ。
WLTCモード燃費35.8km/Lというカタログ値もケタ外れだけど、実際の燃費テストでも一般道では驚異の40km/L台を達成。ドライバーはごく普通に運転しているだけで、姑息な省燃費テクニックなどいっさい弄していないのにこの数字。まったく驚異的というより他にない。
(編注:「ベストカー」4月26日号にて燃費テストを実施。市街地、高速、郊外を含む新基準のWLTCモードに準拠したコースで計測した燃費の結果は【表1】のとおり)
このテストを実施した時、編集スタッフと話題になったのがこの20年の技術進歩の凄さについてだ。
実は、10年ほど前まで筆者は初代インサイト(ZE1)という珍しいクルマを所有していた。
ホンダ初のハイブリッド量産車となる初代インサイトがデビューしたのは1999年だが、その開発の目的は世界初の“3リッターカー”というタイトル。これはガソリン3Lで100km走るという意味で、初代プリウスを大きく凌ぐ燃費33.3km/Lが目標だった。
とにかく燃費向上が至上命題だから、2人乗りのクーペボディは贅沢にもオールアルミ製で、車重はなんと860kg。
1L・3気筒のエンジンからミッションやサスペンションまで、すべてギリギリに軽量化された専用パーツで構成されていて、いうなればレースではなく燃費競争のために造られたホモロゲーションモデルのような存在だった。
筆者はこの超軽量“燃費スペシャル”が大いに気に入って10年以上にわたり所有していたのだが、ここまで燃費チューンを徹底した初代インサイトですら、公道で40km/Lをマークするのは容易ではなかった。
瞬間燃費計をにらみつつ、デリケートなアクセル操作やこまめなシフト(筆者のインサイトは5MT)で好燃費ゾーンをキープして、やっと到達できるのが40km/L台。それが、この時代の技術の限界だったのだ。
意外にも驚異の燃費性能に飛び道具なし?
いっぽう、今回テストに使用したヤリス・ハイブリッドGは、車重1060kgのごく標準的な5人乗りハッチバック。ドライバーは交通の流れに乗っているだけで、燃費について特に意識した運転はしていない。
これで公道で40km/L台が出るということは、つまりパワートレーンがそれだけ進化したということ。その事実にスタッフ一同あらためて感銘を受けたというわけだ。
ただ、反面そこで疑問に思ったのは、20年以上にわたって開発を続けてきたトヨタのハイブリッドシステム(THS-II)の、どこにまだそんな燃費効率アップの余地があったのか、ということ。
ヤリスはコロナ騒動で試乗会が中止になり、開発関係者に直接この件を取材することができなかったが、さいわい広報のはからいでテレビ会議による質疑応答の機会を得たので、そこでこの疑問をぶつけてみた。
しかし、チーフエンジニアの末沢泰謙さんをはじめとする技術者の面々から返ってきたリアクションは、「いやぁ、飛び道具みたいなものがあるわけじゃなくて、あらゆるところを満遍なく少しづつ改良した結果なんですよ」というもの。
われわれメディアは、すぐに「華々しい技術革新」みたいなわかりやすいネタを求めがちだが、こと燃費向上技術に関しては、そういう近道はあんまりないのが現実らしい。
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