バスの車両として、実に久々のタイプがオノエンジニアリングからアナウンスされた。なんとツーステ車!! もちろん電気バスだ。
日本ではまだ、路線車(ノンステ)以外はちょっと馴染みが薄いが、送迎や貸切などでニーズは大きい。しかも定距離のルート運行となると電気バスにとっては得意な形態のひとつだ。何なら観光だってこなす実力があるというこのツーステEV。試乗チームを組んで早速乗り込んだ。
(記事の内容は、2024年12月現在のものです)
執筆/近田茂、写真/バスマガジン編集部、取材協力/ONO ENGINEERING
※2024年12月発売《バスマガジンvol.127》『バス作りの新勢力から』より
■国内マーケット待望の汎用性が高い自家用系中型バス登場
「バス作りの新勢力から」と題する当連載コーナーで“オノエンスター”の名はすでに良く知られているだろう。同ブランドを手がけるアジアスター・モーター・コーチ社は、コミュニティバスの7m車から10.5m車の大型路線までそろえ、さらにEV連節バスや観光系の輸入準備も進められている。
「バスにも個性が求められる時代!」と謳う同社らしく、ディーゼルエンジン車をはじめEVや燃料電池車まで視野に入れたフルラインナップ態勢を整える。バス事業社それぞれの様々なニーズに対応すべく、次々と精力的かつ柔軟に事業拡大を図る様には目を見張る思いがする。
コミュニティバスの7mで日本市場に合わせた専用ボディを独自開発した事に驚かされたのもまだ記憶に新しい。
中型路線車として3年前の夏に導入されたEV9.0も、細部の熟成と共に導入実績を積み重ねてきている。単なる輸入販売に止まらず、各事業社の要望やそれぞれのニーズに対応する改造やアドバイスも手掛け、さらに迅速なアフターサービス態勢構築への熱心な取り組みも注目に値するのである。
さて今回の試乗車は、EV9.0の2ステップ車だ。フロントマスクやリアビューは中大型路線系と共通するも、ルーフラインは標準的な高さにデザインされ、乗降口は前扉のみ。そのスマートなフォルムは観光系を彷彿とさせる優雅さがある。
残念ながら現在、国産車でこのカテゴリー(自家用系と呼ばれる)は存在していない。頭の古い記者は何故かふと日産ディーゼルのRMを思い出してしまったが、このタイプは新車の国産車を入手できない状況にあるだけに、エンジン車かEVかに関わらず、まさに待望のモデルと言えるだろう。
前扉のみの乗降口に乗り込み、2段のステップを昇ったところに全面フラットなフロアがある。前向きに着座する2座のシートがセンター通路を挟んで8列、最後列は5座。そして右側には非常口席を除く7座の補助椅子も備えられている。客席は44座+ドライバー1名の45人乗り。
つまり通勤や通学需要の様に決まったコースの往復運行や、自治体等が主導する団体送迎に適応する最新のEVバスなのである。
■ジワジワと洗練度を増して進化していくことが目に見える
最新のEV9.0は既報の路線系と基本的に車体デザインは共通。2480mmの車幅は大型車並にワイド。前にも記したがこのサイズ感は運転のしやすさを阻害する要因にはなっていないと思えたのが正直な感想。むしろ室内にゆとりをもたらす快適性を向上する。
動力源となる6個のリチウムイオン電池モジュールは、全て床下ミッドシップ。ホイールベース間の後輪前方にセットされ、前輪後方には大きなスパーンの左右貫通式トランクスペースがある。
電圧は531.3Vで総容量456Ahの電力で245kwのモーターを駆動して、総重量12.195tの車体を走らせる。なお、最高速度は80km/hに設定されており、航続距離は350km以上をマークする。
バッテリーの搭載量や使用モーターやデフに関しては、ニーズしだいで細かな対応を可能としていると言う。始めに導入された路線車よりも今回は少なめなバッテリー容量で走らせる組み合わせ。同じEV9.0でも細部の仕様は多彩に選択できるというわけだ。
クリアなパーテーションで仕切られたコクピットに乗り込むと、先ずはプロの職場に相応しい快適なシートがある。チルトやテレスコ式ステアリングと共に、各種アジャストの操作性には固さがあるが、自分好みの姿勢にジャストフィットできる点は優秀。
運転はインパネ左手にあるD、N、Rのセレクタースイッチを押して、右手のサイドブレーキを解除すれば、右足のオルガン式2ペダル操作でOK。クリープはないが、停止時のブレーキ力保持装置は装備されているので、坂道発進もまるで苦にならない。
アクセルをソッと踏み込むと、スムーズにかつ力強く発進させることができ、登りの急加速でも何らへこたれる事のない走りを披露してくれ、流石EVの優位性が感じられる。しかも旋回時のロール挙動は少ない乗り味が好印象。
一方減速操作はステアリング右手レバーの4段回生ブレーキを活用すればフートブレーキをほとんど使わないコントロールが可能。穏やかな減速G制御に努めながら電力消費の節約にもなる運転スキルを磨く醍醐味が感じられた。
窓面積の広い解放感のある客席も硬めでフィット感のあるシートが快適な仕上がりを魅せていた。
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