2026年8月4日、トヨタ自動車が2026年度(2027年3月期)第1四半期(2026年4〜6月)の決算を発表した。決算資料には「ノア/ヴォクシーが一部台湾製になる」などの衝撃発表もあったが、それは後述するとして、今期の営業収益は13兆5254億円、純利益1兆4770億円。純利益は前年同期比75.6%増、じつに約1.8倍である。ところが本業の儲けを示す営業利益は8.8%減の1兆634億円。それでいて通期の営業利益見通しは3兆円から3兆4000億円へ引き上げられた。この(やや数字が複雑な)「トヨタ好調決算」の事情と理由を、円安、中東物流、HEVというキーワードから読み解いていく。
文:ベストカー編集局長T、画像:トヨタ自動車
【画像ギャラリー】トヨタ好調決算の事情と理由【2026年度1Q決算発表】HEV年500万台へ&ノア/ヴォクシーが海外生産に(6枚)画像ギャラリーノア/ヴォクシーを海外から輸入…ってマジ!??
まず最初に、自動車情報専門メディアとして今回の決算資料で一番気になったところを紹介したい。今回の2026年度1Q決算資料で、「海外拠点から日本向けにランドクルーザー”FJ”やノア・ヴォクシーを供給」と車名入りで明記された。
ランクルFJはタイのトヨタ・モーター・タイランド、バンポー工場で生産される。月販基準台数は1300台。新型ハイラックスも作るこの工場で「FJ」が作られていて、それを日本に持ってきているのは既報のとおり。
驚いたのはノア/ヴォクシーだ。決算資料では生産国を記していないが、台湾トヨタの総代理店・和泰汽車は2026年5月21日、グループ関係企業である國瑞汽車の桃園・観音工場で同年10月からノア/ヴォクシーの生産を開始し同月から日本へ輸出すると公表した。トヨタ車体・富士松工場での生産は従来どおり続け、国内と海外の「併産体制」に入ることになる。
つまり、早ければ2026年内から、日本国内で納車されるノア/ヴォクシーには日本製と台湾製の2種類が存在することになる。販売店によれば、購入時に生産国を指定することはできないとのこと。まあそりゃそうか。
台湾生産→日本へ輸入の情報は、これまで和泰汽車側の発表と一部報道で先行していたのに対し、トヨタ本体が公式資料で日本向け供給を車名入りで認めたのは今回が初めて。思い起こせば2024年9月にベストカーWebが台湾生産の検討を報じたとき、トヨタの回答は「グローバルでの最適な供給体制構築について常に検討している」にとどまっていた。あれから2年、「検討」は決算資料に載る事実になった。感慨深い。
たしかに近年のノア/ヴォクシーは納期長期化が激しい一台。そのため受注も各所で長く止まっていた。これは、多くの販売店で「欲しいのに買えない」という長く待たされている顧客に、「1台でも多く、1日でも早く」届けるため、海外工場も含めた最適な供給体制を組むという話。そういうことなら応援したい。納期に悩む読者にとっては、決算のどの数字より現実的な話だろう。これでどれくらい納期が短縮できるのかはまだ分からないが、半年待ちくらいで落ち着いてくれるとありがたい。
純利益は約1.8倍、なのに本業は8.8%減った
さていよいよ2026年度1Q決算の数字を見てみよう。第1四半期の営業収益は13兆5254億円(前年同期比10.4%増)、営業利益1兆634億円(同8.8%減)、税引前利益1兆9638億円(同56.8%増)、親会社所有者帰属利益、いわゆる純利益は1兆4770億円(同75.6%増)。営業利益率は前年の9.5%から7.9%へ落ちている。

連結販売台数は239万5000台で0.7%減。ただし前年の実績には日野ブランド車2万6000台が含まれており、日野の連結除外分を除けば実質では約1万台の増加だとトヨタは説明する。
電動車は141万台で12.4%増、販売に占める比率は前年の47.4%から55.3%へ上昇した。内訳はHEVが123万8000台(6.7%増)、PHEVが5万8000台(24.5%増)、BEVが11万4000台(約2.4倍)、FCEVはごく少数だ。
売上も電動車も増え、純利益は約1.8倍。なのに本業の営業利益だけが1026億円減っている。この決算のすべてはここから始まる。
好調の事情① 6000億円の株式売却益と円安
営業利益と純利益が逆方向に振れた理由は営業外損益にある。第1四半期の営業外損益は9003億円。トヨタが公式の質疑応答で挙げた主な中身は、豊田自動織機株式の売却益が約6000億円、海外事業体が持つドル資産の為替差益が約3000億円だ。日野自動車の連結除外やアーチオン株式の売却なども含まれるが、大半はこの2つで説明がつく。
つまり「純利益76%増」の大部分は、クルマを売って稼いだ利益ではなく、株を売った益と、円安による評価上の益である。
では営業利益はなぜ減ったのか。前年同期の1兆1661億円からの増減を見ると、プラス側は為替変動+3450億円、営業面の努力+700億円、金融・補給部品・用品・中古車・コネクティッドなどのバリューチェーン収益+300億円。マイナス側は原価改善の努力△850億円、諸経費の増加△1900億円、その他△2426億円となる。
円安で3450億円も押し上げられているのに減益、というのが今回の要点だろう。「その他」の大半を占めるのは未実現損益の調整△2483億円。グループ内や輸送中の船上にあって、まだ最終顧客に届いていない在庫の利益を会計上いったん消す処理だ。円安で1台あたりの利益が大きくなったため、在庫台数が同じでも消す額が膨らんだ。現金が出ていったわけではなく、在庫が最終顧客に渡れば条件次第で戻ってくる。
好調の理由② 中東物流を数カ月で組み替えた
通期見通しは、営業収益54兆円(5月時点51兆円)、営業利益3兆4000億円(同3兆円)、純利益3兆2500億円(同3兆円)、連結販売台数970万台(同960万台)へ引き上げられた。為替前提は1ドル150円→160円、1ユーロ180円→181円。トヨタ・レクサスの販売1050万台と年間配当100円は据え置きだ。
上方修正の内訳は、為替前提の変更+4800億円、営業面の努力+2300億円、原価改善関係△1200億円、諸経費△500億円、その他△1400億円。たしかに為替のインパクトは大きい。だが為替とスワップの影響を除いても、見通しは600億円改善している。「円安のおかげ」だけでは説明が足りない。
質疑応答で、効いたのは「中東向け物流の立て直し」だと説明があった。トヨタは中東へ年間およそ50万〜60万台を輸出している。中東情勢の悪化を受け、当初は輸送能力が通常の約50%まで落ち込む前提を置いていた。ところが、利用する港を増やし、航路と物流ルートを複線化し、喜望峰回りを含む代替ルートまで構築して、2026年9月以降は通常の約75%まで戻せる見通しになった。トヨタのド根性がここでも発揮されたかたち。想定していた「半減」が「4分の1減」に縮んだわけだ。今回の通期見通しでは、中東関連だけで営業面の利益見通しが1050億円改善している。すげえ。
数カ月で船の通り道を組み替えて、売るためのクルマを届けた。これは為替の追い風とはまったく別の、現場の成果である。
米国関税は、期初に1兆3800億円と見込んでいた通期影響が約700億円緩和される方向になった。北米事業は価格改定、円安、関税負担の低減努力によって前年の赤字から黒字に転換している。ただし通期では依然1兆円を大きく超える関税負担が残る。テキサスでのタコマ生産など北米の地産地消強化は、単なる政治対応ではなく物流費と関税を含めた収益構造の作り替えと見るべきだ。
好調の理由③ HEVは2026年に初の500万台へ
クルマ好きにとって今回おもしろいのはここだ。トヨタ・レクサスのHEV販売は暦年ベースで2023年344万台、2024年422万台、2025年458万台と伸び、2026年は503万台の計画。年間500万台の大台を初めて突破する。なお通期決算資料にあるHEV508万8000台は2026年4月〜2027年3月の年度ベースの数字で、503万台の暦年計画とは期間が違う。混同しないようにしたい。
さらに国内では2027〜2028年にかけて、年間60万台規模のHEV用電池生産ラインを、性能とコスト競争力を高めた次世代電池へ切り替える。会見での説明によると、トヨタバッテリーのラインを順次切り替えてニッケル系からリチウムイオンへ移行する計画で、性能向上と同時に1台あたり数万円規模のコスト低減効果を見込むという。さすが「HVの始祖」だけある。ここにきてさらに利益率を上げるとは。トヨタはこれを一例に、さらなる電池能力の拡大も検討中だ。









コメント
コメントの使い方