トヨタ好調決算の事情と理由【2026年度1Q決算発表】HEV年500万台へ&ノア/ヴォクシーが海外生産に

 これを「BEVが売れないからHEVに戻った」と読むのは単純すぎる。需要が供給を上回っているHEVの電池能力を増やし、電池を世代交代させて原価を下げ、低インセンティブ・高回転で売り、金融やアフターサービスでも稼ぐ。HEVを軸にした収益モデルそのものを太くしにいっている、というのが実像だ。米国では在庫日数が短く、競合よりインセンティブの低い水準で売れているとトヨタは説明する。供給制約が解ければ、単純な台数増以上に利益が乗る余地がある。

BEVは6万5000台減、開発費の見直し費用を今期計上

 一方、BEVの通期販売見通しは下方修正された。トヨタ・レクサス全体の販売台数「1050万台」は据え置きだが、電動車の内訳はHEVが507万1000台→508万8000台、PHEVが28万6000台→28万4000台、そしてBEVが59万8000台→53万3000台。BEVだけ6万5000台減、約11%の引き下げである。

 加えて質疑応答では、BEV開発プロジェクトの見直しに伴う費用(全固体電池のレクサス車だろうか?)を第1四半期に全額引き当てたことが明らかにされた。ただし対象プロジェクト、金額、中止なのか延期なのか、設備や部品をどこへ転用するのかはいずれも非公表だ。費用は諸経費△1900億円の内数で、より細かくは「経費ほか」△600億円のなかに米国関税や品質費用、各種引当と一緒に入っている。600億円すべてがBEV見直しの費用ではない。

トヨタは「グローバルでもまだまだHEVの販売比率は上がっていく」と考えていることがよくわかる資料。ニッケルからリチウムイオンに切り替えて、HEVはさらに高性能になってさらに普及していく見込み
トヨタは「グローバルでもまだまだHEVの販売比率は上がっていく」と考えていることがよくわかる資料。ニッケルからリチウムイオンに切り替えて、HEVはさらに高性能になってさらに普及していく見込み

 中国の独資BEV拠点「LE上海」は準備が順調に進み方針変更はないと明言されており、BEVそのものから撤退するという話ではない。ただし短中期では、HEVの供給力と収益力を優先しているように見える。

資材高1.2兆円、それでも「絶好調」と言えるのか

 気になるのは「車両価格」だ。トヨタは「(車両の)価格を順次、見直していく」と言っている。つまりこれ、値上げ宣言?

 質疑応答では、資材高と仕入先基盤の強化を合わせた影響が約1兆3000億円、うち純粋な資材高の影響が約1兆2000億円と説明された。トヨタは「この資材高の半分程度を価格改定で挽回したい」としている。単純計算すれば6000億円規模だが、これは「値上げが決まった額」ではない。一度にすべてを転嫁するわけではなく、市場や車種ごとに時期と水準を判断するとしており、対象車も改定幅も未発表だ。それでも、今後の新型車やマイナーチェンジ、グレード構成の見直しなどを通じて価格へ反映される可能性は高いと見ておくべきだろう。うーむ、欲しいクルマは早めに買っておいたほうがいいかも。

 株主還元では上限1兆円の自己株式取得枠(市場買い付け)と、発行済み株式総数の1.37%にあたる2億株の消却を発表。ROE20%を「モノサシ」に掲げ、稼ぐ力と資本効率を上げていくという。

 リスクも残る。メモリーやアルミの市況上昇は期の後半にも効いてくる。中東物流は改善しても通常の75%前提であり、完全復旧ではない。令和8年熊本地震の影響は今回の業績見通しに織り込まれておらず、年間の稼働停止リスク用に確保している余裕でカバーできるとの見方を示しつつ、被災状況と事業影響は精査中とされた。

通期見通しを上方修正。円がドルに対して10円上がるとトヨタの利益は4800億円増える(逆に円高になるとそのぶん利益が吹き飛ぶ)
通期見通しを上方修正。円がドルに対して10円上がるとトヨタの利益は4800億円増える(逆に円高になるとそのぶん利益が吹き飛ぶ)

 最後に、大事な数字を確認しておきたい。通期営業利益3兆4000億円は上方修正の結果だが、前期実績3兆7662億円に対しては約9.7%の減益計画である。純利益も3兆8480億円から3兆2500億円へ約15.5%減。5月時点よりよくなったのは事実だが、前年度より利益を出す計画にはなっていない。

「トヨタ好調決算」の事情は、株式売却益と円安。理由は、中東物流の立て直しとHEVの底力。そのうえで本業は減益、関税は1兆円超が残り、資材高はいずれ価格に効いてくる。見出しの数字だけでは、この巨大企業の現在地は見えてこないのである。

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