クルマの揺れを「アクセル」で抑える!? モーターのトルク制御がスゴい! 意外と知らない「バネ上制振制御」の正体

クルマの揺れを「アクセル」で抑える!? モーターのトルク制御がスゴい! 意外と知らない「バネ上制振制御」の正体

 近年のハイブリッド車のカタログや試乗記でしばしば目にする「バネ上制振制御」という言葉。サスペンションを変えたわけでもないのに乗り心地が良くなるという、この不思議な技術の正体に迫る。

文:佐々木 亘/画像:トヨタ

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そもそも「バネ上」とは何を指すのか

クルマはバネを境に「バネ上」と「バネ下」に分けられ、ボディやエンジン、乗員などがバネ上重量に含まれる
クルマはバネを境に「バネ上」と「バネ下」に分けられ、ボディやエンジン、乗員などがバネ上重量に含まれる

 バネ上制振制御を理解するには、まず「バネ上」という言葉の意味から押さえておく必要がある。クルマの重量は、サスペンションのバネを境にして「バネ上重量」と「バネ下重量」に分けられる。

 タイヤやホイール、ブレーキ、サスペンションアーム類など、バネより下にある部品の重量がバネ下重量。そして、ボディやエンジン、乗員など、バネによって支えられている側の重量がバネ上重量だ。

 路面の凹凸を乗り越えたとき、まずバネ下が上下に動き、その衝撃をサスペンションのバネとダンパーが吸収する。しかし完全には吸収しきれず、ある程度の揺れがボディ側、つまりバネ上にも伝わってしまう。

 この伝わった揺れが収まりきらず、しばらく上下にゆらゆらと揺れ続ける現象を「バネ上振動」と呼ぶ。高速道路のうねりを通過した後、しばらく車体がふわふわと揺れ続ける、あの感覚を思い浮かべてもらえば分かりやすいだろう。

従来はダンパーだけが頼りだった振動の収束

従来はダンパーで揺れを抑えていたが、減衰力を高めると乗り心地が硬くなるというトレードオフがあった
従来はダンパーで揺れを抑えていたが、減衰力を高めると乗り心地が硬くなるというトレードオフがあった

 従来のガソリン車では、このバネ上振動を抑える役割はもっぱらダンパー(ショックアブソーバー)が担ってきた。

 ダンパーの減衰力を高めに設定すれば揺れは早く収まるが、その代償として路面からの細かな入力を拾いやすくなり、乗り心地が硬くなる。逆に減衰力を低くすればしなやかな乗り心地になるが、揺れが収まるまでに時間がかかり、ふわふわとした落ち着きのない挙動になってしまう。

 つまり、機械的なダンパーだけで振動を制御する限り、「揺れを素早く収める」ことと「乗り心地を柔らかく保つ」ことは、ある程度トレードオフの関係にあった。この二律背反を解消する鍵として登場したのが、ハイブリッド車が持つモーターの制御技術である。

 バネ上制振制御の基本原理は、車体に発生した上下方向の揺れを、駆動用モーターの出力トルクを微調整することによって打ち消すというものだ。ハイブリッド車のモーターは、ガソリンエンジンと違って応答性が極めて高く、秒単位でトルクを増減させることができる。

 具体的には、車体がわずかに沈み込むタイミングでモーターのトルクを一瞬弱め、逆に車体が浮き上がろうとするタイミングでトルクをわずかに強める、といった制御を高速で繰り返す。

 これにより、車体の前後方向の重心移動が滑らかになり、路面からの入力によって発生した上下の揺れを、駆動力の微調整だけで打ち消してしまうのだ。サスペンションのハード面には一切手を加えず、電子制御だけで乗り心地を改善できる点が、この技術の最大の特徴といえる。

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なぜハイブリッド車でなければ実現しにくいのか

ガソリンエンジンはトルク発生までにわずかな遅れがあるため、瞬間的な駆動力制御には限界がある
ガソリンエンジンはトルク発生までにわずかな遅れがあるため、瞬間的な駆動力制御には限界がある

 この制御が成立するためには、駆動力を極めて高い応答速度で、しかも滑らかに増減できる出力源が不可欠だ。ガソリンエンジンは燃焼という化学反応を経てトルクを発生させるため、要求に対する応答にはどうしてもタイムラグが生じる。アクセルを踏んでから実際に加速が始まるまでのわずかな間を思い浮かべれば、その特性は想像しやすいだろう。

 一方、電気モーターは電流を流せば即座にトルクが立ち上がる特性を持つ。この俊敏さこそが、路面からの入力に対してリアルタイムで打ち消し制御を行ううえで決定的に重要になる。ハイブリッド車やEVがバネ上制振制御と相性が良いのは、モーターという制御しやすい駆動源を持っているからにほかならない。

次ページは : 乗り心地だけでなく、快適性全体への波及効果

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