2026年7月28日、中国BYDが日本専用設計の軽EV「RACCO(ラッコ)」を発売し、発売からわずか3日で約100件の受注を獲得したという。国産メーカーの牙城だった軽自動車市場に切り込んできた黒船に、現場の空気はどう変わったのか。ホンダ販売店の営業マンに話を聞いた。
文:佐々木 亘/画像:ホンダ・BYD
【画像ギャラリー】11年連続トップの実力だ!! ホンダ「N-BOX」の広々室内と使い勝手抜群の装備を見る(18枚)画像ギャラリー補助金込みで200万円切り、開発期間3年という異例のスピード
ラッコは日本の軽自動車規格に合わせて専用開発された、BYD初の軽EVだ。全高1.8m級のスーパーハイトワゴンに両側電動スライドドアを採用し、日本で最も支持される軽の形をそのまま踏襲している。
価格は廉価グレードの「200」が214万5000円、標準の「300Plus」が239万8000円、最上位の「300Premium」が249万7000円。国の補助金15万円を適用すれば、実質200万円を切る水準に達する。
航続距離はWLTCモードで「200」が210km、上位2グレードが軽EVとして最長クラスの320kmを実現。BYD日本法人の社長は発売から3日で約100件の受注があったと明らかにし、そのうち7割超が最上位グレードだったという。通常のクルマ開発には50カ月ほどかかるとされるなか、わずか3年でここまで仕上げてきたことに、日本市場への本気度がにじみ出ている。
ホンダ販売店営業マンの本音「正直、脅威に感じている」
N-BOXを扱うホンダ販売店の営業マンに、率直な感想を聞いてみた。「正直に言うと、脅威に感じています。今までの中国メーカーというと、性能や質感への不安が先に立って敬遠されることが多かったんですが、ラッコは違う。両側電動スライドドア、天井の高さ、装備の充実度、どれを取っても軽自動車として不足がない。しかもEVでこの価格ですから。」とのこと。
特に営業マンが警戒するのは、価格の分かりやすさだという。「補助金込みで200万円切りという打ち出し方は、お客様にとって非常に分かりやすい。N-BOXやN-ONE eのお客様にも、比較検討の候補として名前が挙がることが増えてきました。これまでは中国メーカーというだけで検討の土俵にすら上がらなかったのに、状況が変わりつつあるのを肌で感じています。」
【画像ギャラリー】11年連続トップの実力だ!! ホンダ「N-BOX」の広々室内と使い勝手抜群の装備を見る(18枚)画像ギャラリーそれでも「ホンダには積み重ねてきた信頼がある」
一方で、営業マンはホンダならではの強みも改めて口にする。「N-BOXは11年連続で軽自動車販売台数トップを守り続けてきたモデルです。長年のユーザーからの信頼、ディーラー網の広さ、アフターサービスの体制、そういった目に見えない部分の積み重ねは、後発のメーカーがすぐに追いつけるものではありません」。
実際、ラッコのオーナーレビューを見ると、走行性能や静粛性については高い評価がある一方、ナビがオプション設定されていない点や、内装の質感に個人差のある評価が見られるなど、細部ではまだ課題も残る。「完成度は確かに高い。でも初めて市場に出す1台目という部分での経験値の差は、まだあると思っています」と営業マンは分析する。
とはいえ、営業マンの口ぶりには単なる楽観論ではなく、危機感に基づいた前向きな緊張感がにじんでいた。
「N-BOXも今年マイナーチェンジでカスタムのデザインを大きく変えましたが、ラッコのような黒船が現れたことで、これからはさらにスピード感を持った商品開発が求められると思います。お客様にとっては選択肢が増えることは良いことですし、私たちも負けていられません。」
軽自動車市場は国内新車販売の約4割を占める、日本独自の巨大市場だ。そこに世界最大級のEVメーカーが本格参入してきたことは、単なる一車種の登場にとどまらない、業界全体への刺激となりつつある。黒船の襲来は、国産メーカーにとって脅威であると同時に、これまで以上に商品力を磨き続ける動機にもなっているだろう。
今後の軽自動車市場がどう動いていくのか、販売現場の最前線から目が離せない状況が続きそうだ。
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