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ディスクブレーキの鳴きや引きずりの原因は「サビ」かも? パッドピン点検の重要性

配信元:WEBIKE
ディスクブレーキの鳴きや引きずりの原因は「サビ」かも? パッドピン点検の重要性

 ブレーキレバーやペダルを離した後も、「キーッ」「シャッシャ」という不快な鳴きや引きずり音が消えない時、その原因はキャリパー内部の摺動部に潜んでいる場合があります。中でも見落とされやすいのが、パッドを支えるパッドピンの潤滑不良です。メンテナンス不足でピンが錆びると、ブレーキを解除してもパッドがローターから離れにくくなることがあります。ここではディスクブレーキのパッドが戻る仕組みや異音が発生する理由、日常メンテナンスの重要性について解説します。

 
文/栗田晃
 

ディスクブレーキのレバーを離すとパッドがローターから離れるメカニズム



125ccスクーターのブレーキとして一般的な片押しピンスライドキャリパー。パッド交換だけならフロントフォークに付いたままでもできるが、キャリパーメンテナンスも合わせて行うならキャリパーサポートとアッセンブリー状態で取り外した方が作業がはかどる。

 油圧ディスクブレーキは、ブレーキレバーやブレーキペダルを操作するとブレーキフルードがキャリパーピストンを押し出し、ブレーキパッドをローターへ押し付けて制動力を発生させます。しかしレバーを離した際にパッドを積極的に引き戻す、ドラムブレーキのシュースプリングのような部品は存在しません。それにもかかわらず、ブレーキレバーを離すとパッドはわずかにローターから離れ、車輪はスムーズに回転します。

 その仕組みの中心となるのが、キャリパー内部に組み込まれたピストンシールです。キャリパーボディの溝にはめ込まれたピストンシールは四角断面のゴム製シールで、ブレーキをかけると液圧によってピストンが前進し、その際にシールもわずかに変形してねじれます。

 その際の変形はゴムの弾性に基づくもので、レバーを離して液圧が抜けると元の形状へ戻ろうとする力を発生させます。この復元力によってピストンがごくわずかに後退し、パッドもローターから離れるのです。その移動量は数十分の1mm程度ですが引きずりを低減するには十分です。

 また、回転するローターには微細な振れがあります。この振れによってパッドが押し戻される作用もあります。シールの復元力と組み合わさることで適正なクリアランスが維持されています。転倒などでローターの一部が曲がると、タイヤの回転に合わせて規則的に「シュッ、シュッ」と擦れ音が発生することがありますが、これはパッドとローターの隙間が不均一であることを示しています。

 片押し式のピンスライドキャリパーでは、キャリパーボディがスライドピン上を滑らかに動くことで、内側と外側のパッドに均等な力が伝わります。ブレーキ解除後もスライド機構が正常に機能することで、パッドは適正な位置へ戻ります。

 つまりディスクブレーキのパッドは、スプリングなどの力で引き離されているわけではなく、ピストンシールの弾性復元力とローターの微細な振れとスライドピン(ピンスライドキャリパーの場合)によって、ごくわずかな隙間を確保しているのです。

 
 
 

ブレーキの「鳴き」「引きずり」はローターからパッドが離れないと発生する



この車種の場合、パッドピン抜け防止のクリップが組み込まれているので、ピンを緩める前に取り外す。抜け止めの方法はキャリパーによって異なる。



ブレーキパッド側にセットされたクリップを取り外したら、キャップボルトタイプのパッドピンを緩める。ピンの締め付けがきつい場合、いったんフロントフォークにキャリパーを仮留めすると安定する。六角穴の内部までサビが進行していたら、ピックアップツールなどでサビを落としてからヘキサゴンレンチを差し込むこと。サビでレンチの掛かりが浅いまま緩めトルクを加えると、六角穴をナメるリスクがある。

 先に説明したとおり、ディスクブレーキはレバーを離した後にパッドがわずかにローターから離れた状態を保つよう設計されています。しかし何らかの原因でパッドが接触したままになると、異音やフリクションロスの発生につながります。

 この時、スピードが落ちるほどの接触圧ではなくても、走行中はローターが高速回転しているため摩擦抵抗が発生します。その結果、車輪の回転が重くなったり、燃費が悪化したり、押し歩きが重く感じられたりします。

 引きずりより気になるのがブレーキ鳴きです。パッドとローターが接触した状態で振動が発生すると、その振動が音となって現れます。特にパッドの角やバックプレート、キャリパーなどが共振すると、高周波の「キーッ」「キュルキュル」といった音が発生します。

 これは摩擦によって発生した微細な振動が増幅されることで耳に聞こえる音になるのです。そのため、必ずしもブレーキを強くかけたときだけ鳴くわけではありません。軽い接触が続いている状態でも鳴きが発生することがあります。

 引きずりによってローター温度が上昇すると、常に接触しているパッド表面が加熱して変質したり、摩擦材が硬化したりすることがあります。発熱が大きくなればブレーキフルードへの熱影響やパッドの偏摩耗にもつながります。

 したがって車輪の回転が明らかに重い場合や、走行後にローターが異常に熱くなっている場合は点検が必要です。ブレーキ鳴きは単なる不快音と思われがちですが、引きずりや作動不良のサインである場合も少なくありません。そのため異音が続く場合は、パッドやキャリパーの動きを確認することが重要です。

 
 

パッドピンのトラブルがパッドの動きに影響することもある



キャリパー表面からはまったく見えないが、取り外したパッドピンは全面サビに覆われている。このピンの上をブレーキパッドがスライドするのだから、これを見ればサビが動きを妨げるということが分かるだろう。サビだけでなく、パッドが食い込んで段付き状態に摩耗することもある。



このブレーキパッドは、片方がパッドピンとキャリパーサポートのスライドピンの2カ所で、もう一方がパッドとキャリパーが凸と凹で噛み合い、パッドピンで位置決めを行っている。パッド交換時はもちろん、キャリパーピストンの揉み出し作業でもパッドを取り外す必要がある。



キャリパーから抜け落ちないよう注意しながらブレーキレバーを繰り返し握ってピストンを押し出す。常に露出している部分は汚れだけではなく初期のサビも発生しており、メンテナンスが必要な時期であることが分かる。



歯ブラシと中性洗剤などでピストン外周の汚れを落としたら、CCI製MR20に代表されるラバーシール組み付け剤をスプレーする。ピストンシールとのフリクションロス低減と防錆効果が期待できるが、過剰に塗布すると汚れを集める原因となるので、垂れるほど付着したらウエスで拭き取っておく。

 片押し式のピンスライドキャリパーは、多くの市販車に採用されている構造です。このタイプは一方のピストンでパッドを押し付ける一方、キャリパーボディ自体がスライドピン上を移動することで反対側のパッドにも制動力を伝えています。そのため、スライド機構が正常に作動することが重要です。

 スライドピンの潤滑状態が悪化すると、キャリパーの移動抵抗が増加します。するとブレーキ解除後もキャリパーが元の位置へ戻りにくくなり、パッドがローターへ接触したままになることがあります。スライドピンにはグリスが塗布されていますが、長期間の使用によって乾燥したり、水分の浸入によりサビが発生すると、動きが著しく悪化する場合があります。

 スライドピンと並んで重要なパーツながら、見落とされがちなのがパッドピンです。パッドピンにはブレーキパッドの位置決めと脱落防止という役割がありますが、多くの車種ではブレーキパッドがピン上をわずかにスライドする構造になっています。そのためブレーキを解除した際には、パッドが抵抗なく移動できることが重要です。

 ところがパッドピンにサビや腐食が発生すると、パッドの摺動性が低下します。雨天走行が多い車両や長期間メンテナンスされていない車両では、ピン表面にサビの層が形成されることがあります。するとパッドが引っ掛かりやすくなり、ブレーキ解除後も元の位置へ戻りにくくなります。

 この状態ではピストンシールの復元力が正常でも、パッド自体の動きが妨げられ、引きずりや異音の原因になります。実際のところ、パッド引きずりの修理でキャリパーやピストンに異常が見当たらず、パッドピンの清掃で症状が改善するケースは珍しくありません。

 引きずりの原因はこれだけではなく、キャリパーピストンの固着やシールの劣化、不良なども考えられます。しかしスライドピンとパッドピンは有力なチェックポイントです。特に防錆措置が施されていないパッドピンは、スライドピンよりも圧倒的に錆びやすく、パッドの作動性に大きく影響します。

パッドピンのサビ落としとグリスアップで引きずりや鳴きが解消!!



浅いサビならサンドペーパーで擦り、根が深く凸凹が目立つようならヤスリで表面を整える。パッドとの接触部分に明らかな段付き摩耗が見受けられる場合はピンを新品に交換しよう。その際に、腐食防止に効果のあるアフターマーケットパーツメーカー製ステンレス製ピンを選ぶのも良いだろう。



ブレーキパッドの裏面やシムに塗布するパッドグリスは高温下でも安心して使える。グリス塗布は重要だが、塗りすぎはトラブルの元なので要注意。



パッドピンは2枚のパッドと常に接触している。パッドの移動量は数十分の1mm程度とごく僅かだが、スムーズに動くことが何より重要だ。

 ピンスライドキャリパーでも対向ピストンキャリパーでも、パッドピンの役割は重要です。パッドピン表面にサビや摩耗痕があると、パッドがスムーズに動かなくなります。取り外したパッドピンはクリーナーで洗浄し、腐食部分を清掃します。サビを除去するだけでもパッドの摺動性が回復し、引きずりや異音が改善することがあります。

 スチール製のパッドピンにはメッキなどの表面処理が施されていますが、雨天走行や保管中の地面からの湿気などによって、サビが発生することがあります。アフターマーケットパーツとしてステンレス製パッドピンが発売されているので、サビ対策として交換することも有効です。

 純正ピンであっても、ピンの表面にグリスを塗布することで防錆効果を得られます。耐熱性に優れたパッドグリスを使用することで、パッドからの熱が加わっても潤滑性を維持することができます。

 パッドピンへのグリス塗布は、防錆だけでなくパッドの作動性向上にとっても当然有効です。ブレーキレバーを離してキャリパーシールの弾性変形でピストンが戻り、パッドがほんの僅か開くのに合わせて、パッドピンに接したパッドもスムーズに動けば、ローターに引きずることはありません。

 ただしここで注意したいのがグリスの塗り過ぎです。多量に塗布すると余分なグリスが流れ出し、パッドやローターへ付着する可能性があります。摩擦面に油分が付着すると制動力が低下し、非常に危険です。また塗りすぎたグリスにパッドダストがまとわりつくと、かえってパッドとの接触部分のフリクションが増加して動きが悪くなる場合もあります。

 パッドピンはブレーキパッド交換やキャリパーピストンの揉み出しを行う際に必ず着脱する部品です。「作業の目的はパッド交換だからパッドピンは関係ない」と見過ごすことなく、サビが発生したピンは必ずサビを落とし、適量のグリスを塗布することを習慣づけることが重要です。

作業のPOINT
 

 

  • ポイント1・ピンスライドキャリパーは、キャリパーのスライドピンとブレーキパッドピンによってディスクローターとブレーキパッドのクリアランスを適正化している
  • ポイント2・ブレーキパッドピンは雨水やパッドダストが原因でサビが発生することがあり、発生したサビはパッドのスムーズな動きを妨げる原因となる
  • ポイント3・パッドピンへのグリス塗布はパッドの作動性向上と防錆の両面で有効だが、ブレーキトラブルの原因になる塗りすぎには要注意

 

詳細はこちらのリンクよりご覧ください。
https://news.webike.net/maintenance/577704/

ディスクブレーキの鳴きや引きずりの原因は「サビ」かも? パッドピン点検の重要性【画像ギャラリー】
https://news.webike.net/gallery3/577704/577715/

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