トヨタの自動運転は『AI任せ』じゃない!! 2028年から普及車へ導入するトヨタ流『E2E+ガードレール』の正体

トヨタの自動運転は『AI任せ』じゃない!! 2028年から普及車へ導入するトヨタ流『E2E+ガードレール』の正体

 トヨタがこの8月、2028年から普及車種への導入を計画する次世代運転支援技術AIに「E2E(エンド・ツー・エンド)」方式を織り込む方針を明らかにした。同社は、自動運転(運転支援)技術のAIに、運転の全権を委ねるわけではなく、AIの判断が安全上の境界を逸脱しそうになった際に介入するルールベースの「ガードレール」を組み合わせる方針を公表。本稿では、自動車情報専門メディアとしてやや詳細に背景を解説しつつ、「なぜトヨタはこの二重構造を選んだのか」という技術思想を考察したい。自動車におけるAIの能力と、人が検証・説明できる安全性は両立できるのか。そもそもE2E、モジュールベース、ルールベースは何が違うのか。ややこしいけど興味深い、クルマとAIの交錯点をひもときます。

文:ベストカー編集局長T、画像:AdobeStock

【画像ギャラリー】トヨタの自動運転は『AI任せ』じゃない!! 2028年から普及車へ導入するトヨタ流『E2E+ガードレール』の正体(4枚)画像ギャラリー

E2E」とガードレール」、まず基本を押さえる

【参考記事】カローラ/ヤリス級にも“自動運転時代”到来!? トヨタが2028年からAI運転支援を普及車へ宣言

 自動運転技術の基本設計を理解するには、まず「モジュールベース」と「ルールベース」という2つの考え方を説明する必要がある。まず、「モジュールベース」とは、センサーで周囲を捉える「認識」、その先を読む「予測」、進む道筋を決める「計画」、実際にハンドルとペダルを動かす「制御」など、運転に必要な処理を機能別に分けて、「各工程の入出力を定義する設計」といえる。

 一方ルールベースは、交通規則や安全上の制約など、人が明示的に定めた条件に従って判断・制御する方式だ。

 従来の自動運転システムでは、このふたつの考え方を組み合わせて構成することが多く、多くの自動車メーカーにとって、この考え方が2010年代までの自動運転技術開発の根本的な思想だった。

自動運転技術における大きな考え方の違い。「モジュールベース」はこれまでの国産自動車メーカーの得意分野であり、「強み」そのものでもあった。たとえば従来の品質保証はこのモジュールベースの考え方が土台にある。だからこそ「E2E」の考え方には抵抗があったわけだが……
自動運転技術における大きな考え方の違い。「モジュールベース」はこれまでの国産自動車メーカーの得意分野であり、「強み」そのものでもあった。たとえば従来の品質保証はこのモジュールベースの考え方が土台にある。だからこそ「E2E」の考え方には抵抗があったわけだが……

「モジュールベース」には、工程ごとに性能や挙動を検証しやすく、不具合が起きた際に原因を切り分けやすいという利点がある。また、モジュールの内部にAIを使うこともあれば、計画や制御にルールベースを組み込むこともある。問題は方式の名前ではなく、複雑な現実の交通を、人があらかじめ定義した中間表現や条件分岐だけでどこまで扱いきれるか、という点にある。

 この2つの思想とは異なる考え方が、近年急速に普及してきた「E2E」、エンド・ツー・エンド方式と呼ばれる考え方だ。センサー入力から走行軌跡や操作指令までを、ニューラルネットワークへ一体的に学習させ、最適な方法を考えさせて、それを採用する方式といえる。

 カメラ映像から操舵量を直接出す方式もあれば、将来の走行軌跡やウェイポイントを出力する方式もあり、実際の構成は一様ではない。大量のデータから、人が個別に書ききりにくい交通状況の文脈やパターンを学べる可能性が大きな強みといえる。

 AIの進化と普及、テスラなど次世代モビリティメーカー勢の攻勢によって一気に一般化したこの「自動運転技術領域におけるE2E」という考え方は、いまや自動運転技術での「本命」、「王道」と言われている。

 ただしこのE2Eにも(従来の工学的・社会的観点から見ると)弱点がある。AIがなぜ「その操作」を選んだのか、内部の判断過程を人間の理解できる言葉で完全に説明することが難しいという点だ。いわゆる「ブラックボックス性」。個々の中間工程を人が定義し、検証する従来型のシステムに比べ、どの特徴が最終判断にどれだけ影響したのかを切り分けにくい。

 これは、命を載せて走る自動車技術において重要な問題となる。

(ただし、「説明できない」と「事故を調査できない」は同じではない。AI内部の判断根拠を完全に人間の言葉へ翻訳できなくても、どのセンサー入力を受け、どの版のモデルがどの出力を返し、車両がどう制御され、ガードレールがどの条件で介入したかを記録し、挙動を再現できる仕組みは作れる。これからの品質保証では、説明可能性だけでなく、こうした追跡可能性と再現可能性が重要になる)

 AIによる運転支援・自動運転技術が社会に受け入れられるためには、性能が高いだけでは足りない。どのような条件で安全と判断したのか、想定外の挙動をどう抑えたのか、事故や異常が起きた際にどこまで再現・検証できるのか。そうした安全保証の全体像を社会へ説明する必要がある。

公表資料から読み解く「二重構造」という補助線

 テスラなど一部の海外メーカーがE2Eを前面に押し出し、日本メーカーも導入計画を示し始めるなか、国内の自動車産業にはなおE2Eへの慎重姿勢がある。その背景には、性能が足りないという問題だけでなく、これまで得意としてきた開発・品質保証文化との摩擦がある。

 日本の自動車産業は、システムを機能や部品に分解し、それぞれの要求仕様、故障モード、責任範囲を明確にしたうえで、全体の品質を積み上げる開発を得意としてきた。日本自動車産業の最大の武器ともいえる。

 この文化と、学習データから一体的に挙動を獲得し、内部の因果関係を人が完全には読み解けないE2Eとの間に、強い文化的・工学的摩擦が生じるのは自然なことだ(ただし、車両を構成する部品の分け方と、自動運転ソフトのモジュール構成は、厳密には別の概念である)。

 一方で、急激に進化するニューラルネットワークとAIが、自動運転技術と相性がよいのも事実だ。E2Eには、人が個別に定義しきれない複雑な交通文脈を大量のデータから学び、システム全体を一体的に最適化できる可能性がある。その性能が充分に高まれば、従来方式を上回る安全性や自然な運転を実現し得る(もちろん、あらゆる条件でE2Eのほうが安全だと証明されたわけではないし、おそらく証明はずっとできない)。

 仮に、①従来型の技術進化で事故を90%減らせる場合と、②E2Eによる技術進化で事故を99.9%減らせる場合があったとしよう。性能では②が圧倒的に優れていても、残る事故について①より原因を説明しにくいとしたら、社会は②を選べるのか。自動車安全技術は、社会(世論)との連動が重要な鍵となる時代に突入した。

モジュールベース、ルールベースの考え方で、「あらゆる交通状況」に対応するのは限界がある。そこで映像情報を丸ごとAIに渡して「こうすればいい」と考えさせ、最適解を出させるほうが安全、そういう方式がE2Eといえる
モジュールベース、ルールベースの考え方で、「あらゆる交通状況」に対応するのは限界がある。そこで映像情報を丸ごとAIに渡して「こうすればいい」と考えさせ、最適解を出させるほうが安全、そういう方式がE2Eといえる

 こうした、AIの台頭と自動運転技術の進化がもたらす社会的議論のなかで、今回トヨタが持ち込んだのが、「AI(E2E)の外側にガードレールを置く」という発想である。

 トヨタによれば、この「ガードレール」とはルールベースの安全機構であり、AIが想定外の判断や挙動を示した際に介入する役割を持つという。加えて、どの安全条件に抵触し、いつ介入したのかを記録できれば、万一の事故時に挙動を再現・検証する手がかりにもなる。ただし、E2E内部の判断過程そのものが完全に説明可能になったわけではない。AIの内部をすべて言語化するのではなく、その外側に別原理の安全境界を設け、追跡可能性を高める設計思想と理解すべきだ。

 いわば、AIという名の凄腕ドライバーの隣に、冷静沈着な同乗者を座らせておくようなものか。普段は口を出さないが、危険な兆候を察知した瞬間だけハンドルに手を添える。そんなイメージを思い浮かべると理解しやすいのではないか。

今回明らかにされたトヨタ製(車載)AIの制御戦略。これは「AIに任せるか、ヒトに任せるか」という二択ではなく、双方の判断を「止揚」して採用していく方向のようだ。はたしてどんなものが出てくるのか……2028年から市販化予定ということなので楽しみに待ちたい
今回明らかにされたトヨタ製(車載)AIの制御戦略。これは「AIに任せるか、ヒトに任せるか」という二択ではなく、双方の判断を「止揚」して採用していく方向のようだ。はたしてどんなものが出てくるのか……2028年から市販化予定ということなので楽しみに待ちたい

「車載するAIシステムの中核はトヨタが基本的に内製する」と明かされた点も注目したい。これは、演算基盤やOSまですべて自前で作るという意味ではない。NVIDIAは2025年1月、トヨタの次世代車が(NVIDIA製の)DRIVE AGX OrinとDriveOSを採用すると発表し、2026年7月には、DRIVE AGXとDriveOSを使った次世代車がL2++機能を提供すると明らかにした。またトヨタは2024年10月、NTTと「モビリティAI基盤」を共同開発・運用し、交通事故ゼロ社会の実現に向けた取り組みに活用すると発表。トヨタとNTTの両社で2030年までに5000億円規模の投資を見込んでいる。

 これらの技術や協業が将来、有機的につながる可能性は高い。ただし、車載AI、NVIDIAの演算基盤、NTTとのモビリティAI基盤が、具体的にどの車種・機能でどう接続されるかまでは明らかにされていない。現段階では、確認できた事実と将来への推測を分けて見ておく必要がある。

 そしてもうひとつ見落とせないのが、データセキュリティや安全保障という論点だ。トヨタは公表資料の中で、これらを自ら「課題」として明記している。

 走る・曲がる・止まるという物理的な安全性能だけでなく、集めたデータをどう守るか、システムが有事にどう振る舞い、誰にどう説明するかという「情報とガバナンスの安全性」が、これからの自動運転車には求められる。

40秒で完了!グーネット買取のかんたん車査定 ≫

新車不足で人気沸騰! 欲しい車を中古車でさがす ≫

最新号

次期レイバックはもっとワイルドに!?「ベストカー 9月26日号発売!」

次期レイバックはもっとワイルドに!?「ベストカー 9月26日号発売!」

ベストカー 9.26号 定価 590円 (税込み)  夏の終わりを告げるかのように、朝晩は…

あなたの愛車が高く売れる!

電話が一切こない新査定「マイカースカウト」

個人情報入力なし! 営業電話なし! 平均37.5万円UP!※

※ 買取店からの買取提示額(上限額)の差額平均
(2025年10月)

情報登録完了後、すぐに提示価格が届きます まずはお試しください!

登録後の流れ

登録後の流れ 1 愛車の情報を入力 2 買取店から価格が届く 3 提示価格を確認

提供:carview!