高速道路などを走っていると目にする「自動速度取締機設置路線」の看板。「この先にオービスがありますよ」と教えてしまったら、取り締まりにならないのでは? と思う人もいるはずだ。そもそも看板は法律上の義務なのか? そして2026年9月1日から生活道路の最高速度が60km/hから30km/hに変わったが、可搬式オービスは事前告知なしで取り締まるのか?
文:ベストカーWeb編集部/写真:Adobe Stock、写真AC
看板がなくても取り締まり可能! それでも「自動速度取締機設置路線」と知らせる理由
高速道路や幹線道路を走っていると、「自動速度取締機設置路線」「速度自動取締路線」などと書かれた看板を目にすることがある。
この先に待ち構えているのが、いわゆる「オービス」だ。
オービスは走行する車両の速度を測定し、一定以上の速度違反をした車両を自動的に撮影、記録する装置である。
ここで素朴な疑問が浮かぶ。「速度違反を取り締まりたいなら、わざわざ事前に教えないほうが摘発できるのでは?」ということだ。
まず押さえておきたいのは、オービスの手前に予告看板を設置することが法律で一律に義務付けられているわけではないという点だ。
つまり、「看板がなければオービスによる取り締まりは無効」というわけではない。看板がなくても速度違反の取り締まりは可能なのである。
では、なぜ固定式オービスの手前では予告看板を見かけることが多いのか。
ひとつの背景として挙げられるのが、オービスが速度違反車両だけでなく、その運転者を写真撮影する装置だということだ。
オービスによる撮影については、1986年2月14日の最高裁判決で、速度違反という犯罪が現に行われ、証拠保全の必要性がある場合の自動撮影は憲法13条に違反しないと判断されている。
つまり、速度違反の証拠を残すための撮影自体は認められているわけだ。
それでも事前にオービスの存在を知らせることは、撮影を巡る肖像権やプライバシーに関するトラブルを避ける意味がある。また、それ以上に重要なのが「速度を落とさせる」という抑止効果だろう。
そもそも速度取り締まりの最終目的は、違反者をひとりでも多く捕まえることではない。速度超過を減らし、交通事故、とりわけ重大事故を防ぐことにある。
「この先にオービスがある」と知れば、多くのドライバーは速度計を確認してアクセルを緩める。取り締まり装置の存在を知らせるだけでも速度抑制につながるのだから、予告看板そのものが交通安全対策のひとつとも考えられるのだ。
近年増えている可搬式(移動式)オービスは設置場所の事前告知はなし?
そこで気になるのが、近年急速に普及している可搬式オービスである。
従来の固定式オービスは、高速道路や幹線道路などの決まった場所に設置されている。それに対して可搬式オービスは、その名のとおり装置を移動させて取り締まりを行える。
三脚などを使って設置できる小型タイプもあり、従来は速度取り締まりが難しかった生活道路や通学路などでも使用できるのが大きな特徴だ。
固定式のように「この先にオービスがあります」という常設の予告看板を設置する必要はなく、現場に予告看板がない状態で速度取り締まりが行われるケースもある。
つまり、「オービスの前には必ず看板がある」と思い込むのは間違いなのだ。
一方で、都道府県警によってはホームページやSNSなどで速度取り締まりの重点路線や実施予定などを公開している場合がある。ただし、すべての取り締まりについて日時と場所を細かく事前公表しているわけではない。
可搬式オービスが普及した背景には、生活道路などでの速度超過対策がある。2026年9月1日から生活道路の最高速度が60km/hから30km/hに変更されたのである。
変更のポイントと対象道路を整理しよう。どの道路が30km/h制限になり、どの道路が60km/hのままなのか、基準は以下の通り。
■30km/hに引き下げられる道路
・標識がなく、中央線(センターライン)や車両通行帯がない道路
・主に道幅5.5m未満の、住宅街や駅周辺などの生活道路
■60km/hのまま維持される道路
・標識がなく、中央線や車両通行帯が設けられている
・標識がある場合
「40」や「50」などの速度規制標識がある区間は、これまで通り標識の指定速度が優先される。
大型の固定式設備を設置できない狭い道路でも運用できるため、「いつもの道だから大丈夫」「ここで速度取り締まりはやっていないだろう」という油断は禁物である。
むしろ今後は「オービスの看板を見つけたら減速する」のではなく、看板があろうとなかろうと制限速度を守るという、ごく当たり前の運転がますます重要になる。
オービス設置にいくらかかる?
では、このオービスはいったいいくらするのだろうか。
過去に警察庁が公表した資料によれば、可搬式オービスは約1000万~約2000万円、半可搬式オービスは約2000万円、固定式オービスは約3000万円とされている。
しかも固定式の場合、本体を買って終わりではない。
過去の警察庁行政事業レビューでは、固定式オービスの設置工事に600万円程度かかる例も示されている。単純に考えても本体と工事費を合わせれば3600万円規模になる計算だ。
なぜ、これほどのお金をかけて速度違反を取り締まるのか。
理由はやはり交通事故防止である。速度が高くなれば、事故発生時の被害が大きくなるのはいうまでもない。
警察がオービスを導入する目的を「反則金や罰金を取るため」と考える人もいるかもしれないが、本来の目的は速度違反を抑止し、重大事故を減らすことにある。
だからこそ「自動速度取締機設置路線」の看板にも意味がある。看板を見たドライバーが速度を落とし、事故の危険性が低下するのであれば、摘発件数が減ったとしても交通安全という目的にはかなっているわけだ。




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