MT車が次々と姿を消すなか、ワゴンRにはいまも5MTが残されている。しかもZLの2WD車はCVT車と同じ145万7500円で、燃費はむしろ5MTのほうが優秀だ。ただし安全・快適装備には違いもある。令和の実用軽に残された5MTは、本当に“買い”なのか?
文:ベストカーWeb編集部/写真:
【画像ギャラリー】ワゴンRはずっとMTあるんです!! えらいぞスズキ(5枚)画像ギャラリー同価格のCVTより軽くて燃費もいい!!
かつて軽自動車の廉価グレードといえば、MTが当たり前だった。しかし現在はCVTが主流となり、MTを選べる軽乗用車はすっかり少なくなった。そんな時代に、ワゴンR ZLは2WD、4WDともに5MTを設定している。
さらに驚くのが価格だ。2WD車は5MTとCVTのどちらも145万7500円。4WD車も両車とも158万700円である。安価なMTを用意するというより、ユーザーが好みの変速機を同じ価格で選べる構成なのだ。
燃費は2WD・5MT車がWLTCモード25.1km/L。CVT車の24.2km/Lを0.9km/L上回り、上級グレードのHYBRID ZXと同じ数値を達成している。4WD車でも5MTが22.8km/L、CVTが22.6km/Lと、わずかながらMTが優勢だ。
この差には車重も関係している。2WD・5MT車は750kgで、CVT車の770kgより20kg軽い。4WD車も5MTが800kg、CVTが820kgと、やはり20kgの差がある。
搭載するR06D型660cc自然吸気エンジンは、最高出力49ps、最大トルク5.9kgm。数字だけを見ればスポーティとはいえないが、軽い車体を自分で変速しながら走らせる楽しさは、パワーの大きさだけでは測れない。
アクセルを戻し、クラッチを切って、シフトレバーを次の段へ送り込む。エンジンの力をどのギアで引き出すかを自分で決められるため、いつもの買い物や通勤でも運転そのものが退屈になりにくい。
絶対的な速さを追うスポーツカーではなく、限られたパワーを使い切って楽しむ実用車。ワゴンR ZLの5MTは、そんなMT本来の面白さを味わえる一台なのである。
MTならではの割り切りを許容できるか
ただし、「CVTと同価格なら5MTのほうがお買い得」と単純に結論づけることはできない。両車には、変速機以外にも装備の違いがあるからだ。
CVT車に備わる誤発進抑制機能、後方誤発進抑制機能、低速時ブレーキサポートは、5MT車には装備されない。MTではクラッチ操作が介在するため、駆動力を自動制御するこれらの機能を組み合わせにくいのだ。
一方、衝突被害軽減ブレーキのデュアルセンサーブレーキサポートIIや車線逸脱抑制機能、車線逸脱警報機能、ふらつき警報機能、標識認識機能、前後パーキングセンサーなどは5MT車にも装備される。MTだから予防安全装備が大幅に省かれているわけではない。
室内の使い勝手にも違いがある。CVT車はインパネシフトとフロントベンチシートを採用するが、5MT車はフロアシフトとなる。運転席と助手席の間をすっきり使いたい人にはCVTが向くが、手元で確実にシフト操作をしたい人なら5MTの配置に不満はないだろう。
また、ZLの5MT車ではリアヒーターダクトが装備されず、バックアイカメラ・スズキコネクト対応通信機のメーカーオプションを選んでも、CVT車のようにUSB電源ソケットは付かない。細かな快適装備まで重視するなら、購入前に違いを確認しておきたい。
もちろん渋滞の多い都市部では、クラッチ操作が不要なCVTのほうが圧倒的にラクだ。同居する家族も運転するなら、AT限定免許の有無も確認する必要がある。運転支援と日常の気楽さを優先する人にとっては、同価格でもCVTが順当な選択となる。
逆に、自分で変速することを面倒ではなく楽しみと感じ、主にひとりで運転するなら5MTは魅力的だ。CVTより20kg軽く、燃費も良好で、2WDなら145万7500円。趣味のために実用性や経済性を大きく犠牲にする必要もない。
ワゴンR ZLの5MTは、派手なスポーツモデルではない。しかし、日常の足と運転する楽しさを無理なく両立できる、いまや非常に貴重な存在だ。MTに一度は乗ってみたい、あるいはMTを最後まで楽しみたいという人にとって、買えるうちに選んでおきたい一台といえるだろう。
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