最近は各社とも、国内で発売する新型車の投入を滞らせている。日産が2016年に発売したセレナは2年半ぶりの新型車。
トヨタのエスティマも2006年に発売され、10年後の2016年にマイナーチェンジを受けるなど、国内で売られる車種の設計が全般的に古くなっている。
そうした状況のなか注目は日産のマーチとキューブ。両車ともに国内市場に適したコンパクトカーだが、現行マーチの発売は2010年、キューブは2008年まで遡る。
ともに人気を誇ったモデルにも関わらず、なぜモデルチェンジしないのか?
文:渡辺陽一郎/写真:編集部、NISSAN
“ヒット車”マーチはなぜ販売が伸び悩む?
マーチは、マイクラとして欧州で売られた経緯もあり、以前からフルモデルチェンジを行うサイクルが長かった。それでも1992年に発売されて2002年まで売られた2代目は、長期間にわたり好調な売れ行きを保った。
当時のライバル車だったトヨタスターレットの開発者は「トヨタが日産に(販売面で)負けているのはスターレットだけだ」と語り、1996年に発売された5代目では、マーチに差を付けることも考えて4輪ABSやエアバッグを全車に標準装着している。
2002年に発売された3代目の先代マーチも外観をユニークなデザインに発展させながら堅調に売れたが、2010年7月に発売された現行型は伸び悩む。
発売直後の時点でも、登録車の月別販売ランキングで最上位が5位(2011年6月)にとどまった。
その後は下降して、2代目トヨタパッソ(2010年2月発売)、2代目マツダデミオ(2007年7月発売)などに抜かれる月が増えた。
販売不振の原因は複数あるが、まずは内外装のデザインと質感だ。新興国を中心に売ることを考えて開発され、国内で販売される車両もタイ製の輸入車になる。丸みの強い外観は見栄えがいまひとつ冴えない。
マーチの魅力と今後 すでに欧州ではモデルチェンジしている!!
販売不振の背景には、日産がコンパクトカーを充実させたこともある。
現行マーチの発売時点で車内の上質なティーダ(2004年発売)、実用的で割安な先代ノート(2005年発売)、車内が広くリラックス感覚の伴う現行キューブ(2008年発売)が堅調に売れており、日産のコンパクトカーに向けた需要が複数の車種に分散された。
この中でマーチは従来型と同様に視界が優れ、全長が3825mmのボディは、最小回転半径も4.5mに収まるから市街地でも運転がしやすい。
全高が1515mmだから立体駐車場を使いやすく、フロントウインドウの角度を立てたことで前席の乗降性もいい。価格もノートなどに比べると安い。
このようにマーチの魅力も相応にあるが「運転がしやすくて価格が安い」というだけでは、売れ行きを伸ばすのは難しい。このニーズに応える車種として軽自動車があり、日産も現行マーチの発売時点からモコなどを用意していたからだ。
そして今では車を堅調に売るには緊急自動ブレーキが不可欠だが、マーチはインテリジェントエマージェンシーブレーキを採用していない。
JC08モード燃費は23km/Lだから悪い数値ではないが、ヴィッツ1.3Fの25km/L、フィット13G・Fの24.6km/Lなどに比べると見劣りする。
コンパクトカーを購入するユーザーの関心が緊急自動ブレーキと燃費性能にあることを考えれば、マーチの販売が伸びないのも当然だ。
なお、欧州では新型マイクラがすでに発売されているが、日本に導入する予定はない模様だ。全幅が1743mmで3ナンバー車になるといった理由が挙げられるが、外観はスポーティでまさに欧州車風。
今の日産では国内向けの新型車が欠乏しているから(2017年に発売する新型車は次期リーフだけ)、マイクラを日本で発売すべきだ。
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