【本企画登場車種】
トヨタ・クラウン
日産・スカイライン
トヨタ・カローラ(アクシオ)
スバル・レガシィ(B4)
ホンダ・アコード(ハイブリッド)
文:渡辺陽一郎
■なぜ「かつての名門車」は話題になることが減ったのか?
今の日本の自動車メーカーは、世界有数の大企業に成長した。喜ばしいことだが、日本のメーカーが世界販売台数を増やすに従って、成熟市場とされる日本国内の販売台数は減ってきた。
2016年度(2016年4月から2017年3月)までの統計で見ると、トヨタの世界生産台数に占める国内の販売比率は18%だ。
日産は三菱が製造する軽自動車を含めて10%、ホンダは14%、マツダはOEM軽自動車を含めて13%という具合になる。国内比率は大半のメーカーが20%以下で、50%を超えるのはトヨタの傘下で軽自動車を中心に手掛けるダイハツだけだ。
ちなみに国内販売総数がピークの778万台に達した1990年は、トヨタの国内比率は51%であった。それが27年後の今は18%で、国内の販売総数もピーク時の64%に相当する497万台まで下落した。海外の売れ行きが伸びる一方で国内は減ったから、国内比率が激減したわけだ。
この切っ掛けは、1989年に消費税の導入と併せて自動車税制が改訂され、3ナンバー車の不利が撤廃されたことだった。5ナンバー車の開発を面倒に感じていた自動車メーカーには好都合で、右肩上がりの海外向けに開発された3ナンバー車を国内にも導入した。
もはや国内と海外の商品を造り分ける必要はなく「豪華で走りの良い3ナンバー車を国内に導入すればユーザーも喜んで購入する」と考えた。
ところが思い切り裏目に出て国内販売は失速する。バブル経済の崩壊もあったが、それが一番の原因ではない。
「海外向けの商品を日本で売る」という商法が災いした。国内のユーザーは、それまで日本に寄り添っていた日本車が、日本の心を忘れて離れていったことを感じ取って売れ行きを下げたのだ。
そして今は、日本向けに開発された軽自動車の販売比率が35%前後を占めて、同様のミニバン比率も多少の陰りは見えるが依然として高い。
コンパクトカーは海外でも売るが、5ナンバーボディを含めて日本の事情を汲んで開発されるから、国内比率が40〜50%に達する。
つまり日本のユーザーのことを思って開発すれば好調に売れるし、海外向けを国内に投入する失礼な売り方をすれば伸び悩む。当たり前の話だ。
そこでかつて国内販売を盛り上げた「名門車」たちの現況を見てみたい。日本の心を持ち続けて、今でも支持を得ているのだろうか。それとも海外向けになって日本の心を忘れ、日本のユーザーからも見放されてしまったのだろうか……?
■トヨタ・クラウンのいま
クラウンは初代モデルを1955年に発売して、セダンの最長寿モデルに位置付けられる(乗用車全体の最長寿は1954年にトヨタジープから改名したランドクルーザー)。「
3ナンバー車が売れない、セダンが低調」といわれる今でも売れ行きは堅調だ。3ナンバーサイズのセダンでは販売台数が最も多く、2016年度で見るとアルファードと同等になる。
好調に売れる理由は、一部が海外で売られるものの、基本的には国内市場を重視して開発しているからだ。内外装は日本のユーザーに合った高級感で仕上げられ、後席を含めて居住性は快適だ。
足まわりも日本の道路環境で最良の乗り心地が得られるようにセッティングされている。狭い裏道や駐車場での使いやすさにも配慮され、全幅は上級シリーズのマジェスタを含めて1800mmに抑えた。
エンジンはハイブリッドを用意して長距離移動時の燃料消費量を抑え、高価格によって高まる取得税をエコカー減税により免税にしている。もちろん環境性能も高い。スポーティなアスリートを用意して若返りも図る。全般的に優れた上級セダンだ。
販売系列のトヨタ店が、車両開発に負けない入魂の販売をしていることも重要だ。販売店舗数を含めてレクサスよりも日本の市場に合った綿密な顧客対応を行い、好調な売れ行きを保っている。
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