日産キックスが、販売から約2カ月で1万台受注という好調な滑り出しを見せたが、ボディカラーによって納期がすでに2021年2月以降になっているという。そのボディカラーのなかには、現行型マーチのカタログモデルや、ジュークの特別仕様車にも採用されている「ナイトベールパープル」も含まれている。
ほかにもラディアントレッドやチタニウムカーキなど、あまり台数が出なさそうなボディカラーもあるのだが、量産車にすでに採用しているボディカラーがこれほど納期がかかるのだろうか? 日産があまりナイトベールパープルが出ないと予想し、生産数を確保していなかったのか?
なぜ人気色よりも、納期が大幅に遅れることになったのか? キックスの納期の長さに関する日産独自の事情も含めて、そのホントのところを取材した。
文/遠藤徹
写真/NISSAN、編集部
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■数が出ないからまとまってから… 売りたいけど売れない困った内情
2020年6月24日に発表、30日から発売した日産の新型コンパクトSUV「キックス」は8月上旬までの受注累計が1万台突破と好調な滑り出しを見せている。ところが、納期は中心のボディカラーだと11~12月、あまり売れ行きのよくないカラーだと2021年の2月以降にずれ込む事態となっている。
首都圏にあるキックスを扱う日産店、プリンス店を回ってみると、ボディカラーの納期に大きな格差が生じていることが明らかになった。
一定の傾向が共通しているのは中心になっている売れ筋カラーはブリリアントホワイトパール、ブリリアントシルバー、ピュアブラックの3色だ。
これはほかの量販モデルのホワイト、シルバー、ブラックの三大色と同様である。キックスでは、これにテーマカラーであるプレミアムホライズンオレンジも加わっている。
納期は、ブリリアントホワイトパールが12月、ほかの3色は11月となっている。2021年2月以降にずれ込んでいるのはナイトベールパープル、サンライトイエロー、ラディアントレッドなどの少数派である。またボディカラーだけでなく、オプション装備も関係しているので、納期が扱い店によって大きく異なっている。
なぜオプションが関係するのかというと、扱う日産店、プリンス店は発売後1カ月あまりで1万台以上もの受注台数に獲得しているが、こうした状況下で扱い店各社は少しでも早く納車したいために、メーカーにグレード、ボディカラーを取り揃えて見込み発注をしているケースが多い。
ボディカラーのほかに、メーカーやディーラーオプションのインテリジェントアラウンドビューモニター、インテリジェントルームミラー、ステアリングヒーター、大型9インチナビ、バックモニター、ドライブレコーダーなどを装着して見込み発注するのだ。
しかし、注文が少ないボディカラーはメーカーへの見込み発注量が少なく、また生産するほうも準備が整っていないため、受注がある程度まとまってからでないとラインに乗せないといったことになっている。
実際にユーザーが成約する場合、ボディカラーや装着希望アイテムが一致しないと改めて発注することになるので、生産に取り掛かるのが遅れて納車がさらに先送りになるケースもある。
首都圏にある某日産店では8月上旬現在で「ブリリアントホワイトパールだと12月納車だが、ダークブルーであれば9月中に納められる」と説明していた。
装備品が希望と違っていても値引きや用品割引などの調整で、ユーザーに納得して貰い、納車が可能になる確率が高いが、好みのボディカラーが合致しないと首を縦に振るのは難しいようである。
さらに、ボディカラーやオプションの問題以外にも日産独自の事情がある。それは生産工場がタイであるため、発注から生産、納車まで時間がかかることだ。コロナ禍でサプライチェーンが寸断されがちになり、スムーズに供給されていないのだ。
受注累計が1万台突破しても納期が遅れているので、登録台数は極めて少ない状況にある。6月は試乗車などでの販売店分があったので、約1800台あまりあったが、7月はわずか500台そこそこにとどまっている。8月以降もあまり増やせない見通しである。
それでも車両本体にナビ、ETC、ドライブレコーダー、コーティングなど40~50万円分のオプション&付属品を装着してもトータルの値引きは5万円程度に引き締める扱い店が多い。また、納車ができないと販売店の収益にならず、下取り車の査定も確定できないので、正確な条件が提示できないといった事情もあるようだ。
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