FF、FR、MRなどさまざまな駆動方式があるクルマの世界。究極ともいえるのが4WDだ。圧倒的なトラクション、雨や雪などのスリッピーな路面でも滑りにくい安全性。
実用性とスポーツ性も兼ね備えた駆動方式である。充実が進みつつある輸入車の4WDモデルの性能にも迫ります。
文:岡本幸一郎/写真:ベストカー編集部
初出:ベストカー2017年10月10日号「現代フルタイム4WD論」
■輸入車の4WDの性能はいかに?
冬道の条件が厳しい日本では4WDが選べるのは当たり前となっているが、海外勢では増えつつあるものの、いまだ4WDというのはちょっと特別なものという印象がある。
今でもフランス車やイタリア車では設定が極めて限定的だし、日本では軽自動車でも多くの車種で4WDが選べるのに対し、比較的設定の充実しているドイツ車でもCセグ未満にはほぼない。
そんな状況ではあるが、全体としては4WDが徐々に増えつつあることには違いない。なかでもFFベースのクルマに幅広く用いられているのが「ハルデックス」と呼ぶシステムだ。
これはスウェーデンのハルデックス・トラクションというサプライヤーによるもので、VW系、ボルボ、GM系、フォード系などが採用している。
現行で第4世代となる同システムはカップリングに電子制御式多板クラッチを用いており、制御ユニットがドライバーのアクセルワーク、車輪速、舵角などのパラメーターを分析して理想的な駆動力を計算し、瞬時に前後輪へ配分。
通常は前輪駆動もしくはそれに近い状態で走行し、必要に応じて最大で100%後輪に駆動力を配分するというものだ。
第4世代では最大で50:50だったところ、0:100を実現したのも第5世代の特徴。また、かつてはカップリングにビスカスを使用していて、前輪が滑り出してから遅れて後輪に駆動力を伝えていたので、「なんちゃって四駆」などと呼ばれたりしたが、今では滑りを予知して事前に後輪にも駆動力を伝達している。
なお、そのほかのドイツ勢やランドローバーなどのFFベースの4WD車に搭載されるシステムのメカニズムも基本的には同様といえる。
後輪駆動車で多いのはセンターデフに電子制御式多板クラッチを用いたタイプ。ランドローバーのようにセンターデフに減速ギアを内蔵させてローレンジでの走行を可能とし走破性を高めたものもある。
なお、アウディクワトロ、BMWのxDrive、メルセデスベンツの4MATICなどは、後輪駆動用と前輪駆動用を同じ呼称としているが、メカニズム的には実は別物であることをご理解いただきたい。
また、4WDのシステムに関してサプライヤーを公表していないメーカーも多く、件のハルデックスが、さらに多くのメーカーに関わっている可能性もある。
コメント
コメントの使い方