9月に入り、ようやく猛暑日がひと段落してきた。まだまだ暑い日が続くと思われるが、人もクルマもバテ気味になっているのではないだろうか。
そこで、酷暑を乗り切った愛車を労わるためにエンジンオイルを交換してはいかがだろうか?
夏場のエンジンオイルの状態、最適なエンジンオイルの粘度、エンジンオイルの交換場所まで、モータージャーナリストの高根英幸氏が解説する。
文/高根英幸
写真/ベストカーweb編集部
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オイルにとって真夏の渋滞はハードな走りと同じ?
今年の酷暑もいずれは去っていく。近年は短くなった秋が来たと思えば、すぐに冬だ。
これからエンジンにとっては負担が少ない季節となっていくが、だからこそこのタイミングでエンジンオイルを交換するとエンジンを労ることになる。
猛暑下では、冷却系が厳しいのは想像できるだろうが、エンジンオイルもエンジンを冷却している。
シリンダーブロックやシリンダーヘッドなど、水路が組み込まれている部分は冷却水が直接冷却しているが、エンジン内部の部品を冷却しているのはオイルなのだ。
そのため冷却水とエンジンオイルはエンジンや熱交換器(水冷式オイルクーラーとも呼ばれる)を通じて熱をやりとりしている。
冷間時にはオイルを早く暖めて剪断抵抗などを低減するために、冷却水がオイルを温めたりもしているのである。
しかもクーラントと比べて、エンジンオイルはエンジン内部の部品を潤滑しながら冷却するため、慴動面を潤滑するオイルは温度も高ければ、ポリマーなどが寸断されてスラッジになったり、粘度が低下しやすくなる。
エンジンオイルの温度は通常、大体水温+10℃の100℃前後ほど。サーキットなどでハードな走りをすれば120℃を超えることも珍しくない。
だが実はエンジン内部で部品に直接触れて冷却している部分は、段違いに過酷な環境なのだ。
周囲のオイルと常に入れ替わり温度を安定化させているから水温+10℃くらいで安定しているのだ。
エンジンルーム内が高温になりやすい夏場は、エンジンの温度も上がりやすい。ラジエターが頑張ってクーラントを冷却し続ける一方で、エンジン内部ではオイルが一生懸命部品たちを冷やしている。
真冬と比べれば30℃くらいベースとなる外気温が違う状況(北海道などでは50℃近くにも広がる!)でもオーバーヒートすることなく、油膜切れすることなくエンジンを守って冷房を使えているのは、自動車メーカーや熱交換器メーカー、オイルメーカーの技術者が高効率な冷却系を完成させているからだ。
コロナ禍のせいで帰省渋滞は少なくなったようだが、日常的な使い方で都市部の緩い速度域でのストップ&ゴーが多い走行は、酷暑下ではエンジンオイルの負担は大きくなる。
だから真夏が過ぎたらエンジンオイルを交換してやった方が、エンジンの良い状態を長く保てることになるのだ。
自動車メーカーは1万kmから2万kmごとのオイル交換を推奨しているから、そんな頻繁にオイル交換をしなくてもいいのでは、と思われる方もいるだろう。
純正のエンジンオイルもロングライフのためにかなり高性能なベースオイルが使われるようになった。
そのためメーカー推奨のオイル交換サイクルでも壊れることはないが、エンジンの良い状態を保つ効果はそれなりだ。
夏前にオイル交換しているのであれば、夏が終わったからといってオイル交換しなければならないほどオイルが劣化していることはないだろう。
しかし走行距離は少なくても、前回のオイル交換から半年以上が過ぎているのであれば、真夏にクルマに乗る機会が多かったのなら、オイル交換した方がエンジンの良い状態を維持できる
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