8月に入り、連日35度の猛暑日が続いている。年間出動件数210万件以上といわれるJAFのロードサービスにとっても、真夏は最も出動件数が増える時期だ。つまり我々がロードサービスのお世話になる確率が高まる時期なのである。
そんなJAFのロードサービスが、近年ますます便利に利用できるようになっているのをご存じだろうか?
JAFのロードサービスといえば、路上で立ち往生、あるいは自宅駐車場でクルマが故障した際には会員証に記載されている電話番号に連絡して、応急修理やレッカー移動などの作業を要請するというのが従来のイメージだろう。
それが令和の時代となって、大きく変わっているのである。従来同様、カードタイプの会員証と電話による依頼でもロードサービスは申し込めるが、ネット時代の現在はスマホアプリで利用できるようになっているのだ。
そこで、JAFのスマホアプリで呼べるロードサービスとはどんなものなのか? モータージャーナリストの高根英幸氏が解説する。
文/高根英幸
写真/ベストカーweb編集部 JAF
取材協力/JAF
【画像ギャラリー】お盆のJAFロードサービス主な出動理由TOP10をチェック!
JAFアプリが統合され、アップデートで使いやすく
JAFのスマホアプリは3年ほど前から登場している。しかし当初はデジタル会員証とロードサービス、そして会員特典のクーポンがそれぞれ独立したアプリとして提供されていた。
それがリニューアルで統一され、使いやすくなったという評判だ。そこで今回は、実際に使って試してみた。
というのも筆者もJAF会員歴は長いのだが、幸いにして7年近くロードサービスのお世話にはなっていない(ちなみに最後にお世話になったのはオルタネーターの故障によるバッテリー上がりである)。
ちなみに現行アプリも登場当初は、使い勝手などの問題でやや不満を覚えるユーザーもいたようだが、何回かのアップデートにより改善されて使いやすくなっているようだ。
さっそく、インストールしたアプリを起動してみた。普通のスマホアプリと異なり、JAFのアプリは使い始めの設定を事細かく打ち込む必要がある。
というのもJAFの会員番号や個人情報のほかに、車両情報も登録する必要があるからだ。
それはメーカー名や車種だけでなく、車台番号や型式、初年度登録や車検満了日まで入力する項目があるほど、なかなか細かい。
これらの車両情報はロードサービスを利用する時に最適なサービスカーを選択してもらうためには、提供しておいた方がいいものだ。
インターネットバンキングのアプリのような認証での煩わしさはない(これはこれでセキュリティ上、重要な役割があるが)ものの、車検証を引っ張り出して全部を入力するのは結構な手間だと感じるかもしれない。
しかし、すべてを入力しないと使えないというような厳格さはないので、面倒だと思ったら最低限の情報だけを入力しても使えるようになっている。
これでイザという時にロードサービスを呼べるだけでなく、会員特典の割引サービスなどの恩恵を受けられるのだから、スマホユーザーはインストールしておくべきだろう。
アプリの場合、自分の現在位置をオペレーターに伝える必要がないというのは大きなメリットだ。
自宅駐車場での車両故障などであれば住所や目印を電話で伝えることなど難しくないが、ドライブ先ではそれらすべてを正確にしかも相手に分かりやすくスムーズに伝えることは、かなり難しい。
その点、アプリならばスマホに内蔵されているGPSから位置情報を検出して、簡単で確実に車両の位置を伝えることができるのだ。
またJAFアプリと聞くと、JAFの会員しか利用できないモノと思ってしまうが、実はこのアプリは一般の方でも利用できる。スマートフォンアプリのダウンロードはもちろん無料。
といっても会員特典のクーポンや優待施設での割引などを利用することは、さすがにできない。
インストールするメリットは、ロードサービスを要請する時に電話番号を入力する必要はないということ。
アプリ上で要請することはできないから、電話番号を検索してタップして電話を掛けるのとあまり手間は変わらない気もするが、立ち往生して気が動転している時には、ロードサービスを要請する手続きはなるべく簡単な方が確実だから、役立ちそうだ。
■JAF会員ならざまざまサービスが無料になる
※個人会員は通常、入会金/2000円、年会費/4000円。各種割引サービスもあり。家族会員、法人会員など用意されているのでJAFまでお問い合わせください
●バッテリー上がり(昼間、一般道での応急始動作業)/入会していない場合は1万3130円
●パンク(夜間、一般道でのスペアタイヤとの交換作業)/会員なら1本無料。入会していない場合は1万3330円
●キー閉じこみ(夜間、一般道でのドア開放作業)/入会していない場合は1万5230円
●燃料切れ(昼間、高速道での燃料切れ給油作業。PA、SA以外)/入会していない場合は1万6770円。※サービスカー通行料・燃料代別途
●故障車けん引(昼間、一般道での故障車けん引)/入会していない場合は1万3130円(※けん引料730円、1km毎別途)
実際にロードサービスを呼んでアプリの使い勝手をチェック!
今回はJAF東京支部の協力のもと、バッテリー上がりという想定で実際にアプリでロードサービスを呼んでみた。実際の画面操作は画像とともに解説していこう。
アプリを起動すると中央にデジタル会員証を表示するボタン、その左下にロードサービスを要請するボタン、右下にはクーポンを探すボタンが現れる(写真1左)。
ロードサービスをタップすると、まずクルマを止めて、安全な場所に移動することを薦められる(写真1中央)。
確認ボタンをタップすると、会員情報と車両情報が表示され、対象の車両を選んで決定を押して進むと、車両の位置が地図上に示され、一般道/高速道路/自宅/駐車場という3つの環境を示すボタンから1つを選択して進む。
続いてクルマのトラブルの症状についての選択ボタンが現れる。該当するボタンをタップするのだが、バッテリー上がりの場合はまず「エンジンがかからない」を選ぶと次のページで「駐車中」か「走行中」かを選ぶ(写真1右)。

続いて駐車中を選ぶと「バッテリー上がり」と「わからない」の2つのボタンになり、そこからバッテリー上がりを選択(写真2左)。
すると再び会員情報や車両情報、位置情報などこれまで確認した情報が表示される(写真2中央)。送信すればJAFへの救援要請は完了する(写真2右)。
アプリ上で表示される項目から選択していくだけなので、立ち往生で脳内がパニックになっている時でも使いやすいし、症状が分からず選択できない場合などはアプリ操作中からも電話で相談することが可能なのは親切だ。
こうして予め設定されている質問への答えや位置情報から、今やAIが判断してサービスカーの選定を行なってくれるのだとか。これにより省人力化と迅速で正確な配車を可能にしているのだ。
要請後はサービスカーの位置情報がアプリ上で確認できて、近付いてくる状況をプッシュ通知で知らせてくれる。これは待っている間の不安を軽減させてくれるだろう。


JAFロードサービスの上位3位は相変わらず
そしてJAFロードサービスによる救援作業は、1年におよそ210万件以上。そのなかでもロードサービス救援作業の上位3種は1位バッテリー上がり、2位パンク、バースト、3位キー閉じ込みなのだそうだ。
ちなみにちょうど1年前、2019年のお盆期間、8月10日(土)〜8月18日(日)にJAFのロードサービスが出動した際の故障内容の上位5位は以下の通り。
1位:過放電バッテリー/1万9100件(構成比29.48%)
2位:タイヤのパンク、バースト、エア圧不足/1万2419件(構成比19.17%)
3位:破損、劣化バッテリー/4083件(構成比6.30%)
4位:キー閉じこみ/3829件(構成比5.91%)
5位:落輪、落込/3749件(構成比5.79%)
バッテリー上がりが多い理由について、JAF東京支部ロードサービス隊の増田圭亮さんに尋ねてみた。
「最近のクルマはスマートキー、ドラレコなどで待機電力が増えているのも原因の一つでしょう」。
なるほど、ハザードランプやライト類の消し忘れなども依然として一定数ありそうだが、最近のクルマは電子制御のカタマリだけに、待機電流が増えていてもおかしくない。
ドラレコで駐車監視を使っていれば、駐車中のバッテリーの負担は大きくなる。消費電力はわずかだが、タマにしか乗らなければ、放電により電圧が低下し始動時のバッテリーの負担は大きくなってしまう。
アイドリングストップ車は専用バッテリーによって充放電に対する能力や耐久性を高めているが、バッテリーの負担が大きいのも事実で、急激にバッテリーの能力が低下してバッテリー上がりを起こす可能性もある。
ロードサービスがますます便利になったのは喜ばしいことだが、できれば路上での立ち往生や自宅駐車場で走行不能になることは避けたいものだ。であれば、まずはバッテリー上がりをなるべく防ぐことを心がけたい。
バッテリー上がりには大きく分けて3つの原因がある
バッテリー上がりの原因には室内灯やスモールランプのつけっ放しなどドライバーのミスによるものと、バッテリー自体の寿命、それにオルタネーター(交流発電機)の故障など電装品のトラブルによるものという3種類に大別される。
ドライバーのミスは自分でなんとかするしかない(それでもLED化で省電力を図る手はある)として、残る2つの対策を考えてみよう。
バッテリーは充放電を繰り返すことでバッテリー液が蒸発して減っていくと同時に劣化もしていくため、補水不要のメンテナンスフリーバッテリーは定期的に交換するものだと考えるべきだろう。
バッテリー液が少なくなると内部の極板が露出して火花が出ることも。最悪の場合、内部の水素ガスに引火してバッテリーが割れることもあるのだ。
「バッテリーが割れたのは見たことはありませんが、バッテリーが膨張しているのは何度か見ていますよ」。
そう語るのはJAF東京支部ロードサービス隊主管の原田雅弘氏だ。
ジャンプスターターでエンジンを始動させ、走行可能な状態であることを点検して確認してくれるが、もしバッテリーが完全に寿命となってしまった場合に備えて、一般的なサイズの新品バッテリーも搭載して備えているそうだ。
電装品の故障については、特にバッテリーを充電するオルタネーターはブラシやベアリングは消耗品だが、それ以外にもダイオードやICレギュレータなどの部品が壊れて発電不良となって、バッテリー上がりとなることも十分にあり得る。
これに関しては対策は難しい。せいぜいエンジンルーム内が高温になるのを抑えるため渋滞はなるべく避ける、という程度か。ちなみに筆者は愛車のICレギュレータが触媒の近くにあるため、断熱材を追加して熱害から守っている。
高齢ドライバーの増加でロードサービスにも変化が?
最近ではバッテリー上がりで救援を要請されても、実は車両トラブルではなかったというケースもあるらしい。
「ハイブリッド車でスタートボタンを押してもエンジンが掛からない、壊れたと連絡してきた方もいました。故障ではないですよ、とアドバイスしましたね」(増田氏)。
スマートキーが主流になっても、相変わらずキー閉じ込みの救援要請は多いようだ。しかも最近のクルマは単純なキー溝のクルマではないクルマも多い。開錠はどのように行なっているのだろう。
「ピッキングなど専門職しか持っていない開錠道具を使って開錠しています」(増田氏)。
最近は鍵穴を見つけるのも難しいクルマもあり、昔のようにドアロックのリンケージに道具を引っ掛けて開錠するようなこともできないそうだ。車種毎に開錠のコツなどがあるようだが、それは隊員全員が知っているのだろうか。
「社内のテクニカルサポートセンターで情報を収集して、随時最新の情報を共有することで対応しています」(原田氏)
個人ユーザーだけで1900万名以上というJAF会員であるが、まだまだアプリ利用者率は少ないのが現状のようだ。
「アプリにはクルマの安全安心とお得という3拍子が揃っています。ぜひダウンロードしてご利用下さい」(原田氏)。
JAFロードサービスのスマホアプリはいかがだっただろうか? 私も愛車に万一のことがあれば使ってみようと思う。