エンジンオイルの粘度はどう選ぶか
エンジンオイルの粘度は、理想をいえば夏は硬め、冬は柔らかめのオイルを使う方がいいハズだ。
しかし実際には始動時こそ大きく温度が違うものの、走行中のエンジンオイルの温度はそれほど変わらない。
それは冷却系がオイルの温度を安定化させているからで、5W-40などのワイドなマルチグレードオイルは、幅広い環境に対応している。
だから1年を通じて同じ銘柄を使っても何も問題はないが、昨今の猛暑を考えると、工夫してやることでエンジンを守れることになる。
最近は0W-20などの低粘度なエンジンオイルを採用しているエコカーも多い。その場合はメーカーの指定を守るべきだが、クルマの取り扱い説明書でも、ある程度オイルの粘度に幅を持たせているような場合は、夏は比較的高めの粘度を選択した方がいい。
エンジンオイルはベースオイルのグレードと粘度、添加剤の内容によって潤滑性能が決まる。つまりベースオイルの品質と使う添加剤によって、オイルの性能と価格が決まるのだ。
粘度が違うと、油膜の厚さが変わってくる。同じ潤滑性能のオイルであれば粘度を上げると油膜が厚くなり、油膜切れを起こしにくくなるのだ。
ただし油圧も上がり、オイルポンプの損失は増えるし部品間のクリアランスの問題として潤滑性能に支障が出る場合もある。
前述のように超低粘度なエンジンオイルが指定のエンジンではクリアランスは狭くなっているため、高粘度のオイルでは潤滑不良を起こす可能性もあるのだ。
この粘度だが、オイルメーカーによって表記と実際の粘度には違いがあることも覚えておきたい。
粘度の話を詳しく書くと膨大な文量になってしまうので割愛するが、表記された粘度レンジが同じオイルでも粘度の測定方法やオイルの特性の違いが、使う環境によって異なる粘度になってしまうことがあるのだ。
実際にエンジンに入れた場合には同じ粘度表記のオイル同士でもかなりフィーリングが異なるのは、この部分が大きい。
それでも「全く違うから問題がある」というほど違う訳ではないから、使用したエンジンのフィーリングから「このオイルは、表記に比べて実際はやや粘度が低め/高め」と覚えて使い分けてもいい。
このフィーリングは新油時だけでなく、冷間時と温間時などで確かめておくのがいいが、ネットで同じ車種のオーナーの口コミを参考にするのも手だ(ただし印象には個人差もある)。
ベースオイルについても「鉱物油は品質が低い、化学合成油は品質が高い」というイメージを持たれている方も多いだろう。確かにそれは間違いではないが、潤滑性能だけを考えれば鉱物油にも高性能なモノはある。
鉱物油、つまり石油から精製されたベースオイルは、実はその産地によって性能に大きく違いが出る。
鉱物油としてはペンシルバニア産の原油が高品質だとされているが、高品質が故にこのベースオイルは化粧品など原価にコストがかけられる商品に使われることが多く、クルマのエンジンオイルにはなかなか使われなくなった。
もっとも昨今の鉱物油は水素化精製油(ハイドロクラック、HVI、HIVIなどとも呼ぶ)といって、触媒と水素を使って不純物(硫黄や窒素など)を取り除いているモノをベースオイルに使っているので、昔よりも全体的に性能は向上している。
オイルの銘柄や粘度以外にも、軽自動車専用やターボ車専用と謳っているエンジンオイルもある。ハイブリッド用はエンジンストップが多い特性を考慮した添加剤が配合されている。
軽自動車専用は、オイル量が少ないエンジンに対応したパッケージだったり、小排気量用に剪断抵抗など損失を抑えた特性を与えているものなど、マチマチだ。
ターボ車用は、熱が厳しいターボチャージャーを保護する性能を強化した添加剤が配合されているオイルだからNA車に使うのはちょっともったいない。
ディーゼル車用もオイルが汚れやすく、トルクがあるディーゼルのために極圧(1点に荷重が集中する状態)性能を強化している。「CE/SN」などガソリン車にも使える共用のオイルならガソリン車にも使えるし、コスパを考えればガソリン車でも選択する手もあるオイルだ。
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