毎年、さまざまな新車が華々しくデビューを飾るその影で、ひっそりと姿を消す車もある。
時代の先を行き過ぎた車、当初は好調だったものの、市場の変化でユーザーの支持を失った車など、消えゆく車の事情はさまざま。
しかし、こうした生産終了車の果敢なチャレンジのうえに、現在の成功したモデルの数々があるといっても過言ではありません。
訳あって生産終了したモデルの数々を振り返る本企画、今回はホンダ ザッツ(2002-2007)をご紹介します。
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文/伊達軍曹、写真/HONDA
■シンプルに、さりげなく。クルマと若者たちとの「新時代」を考えたザッツ
3代目のライフをベースに生まれた、主に20代から30代の男性をターゲットとした「モノっぽいデザイン」の新型車。
しかしメーカーが想定したゾーンにユーザーはあまりおらず、車としての仕上がりが正直今ひとつだったこともあって、1代限りで生産終了となった異色の軽トールワゴン。それがホンダ ザッツです。
ザッツの原型となったのは、2001年の東京モーターショーに参考出品された「w・i・c」(What is car?)という試作車。当時のプレスリリースには、以下のようなことが書かれていました。
「服や時計、あるいはカバンなど。モノがもつその“雰囲気”で、自分が身につけるモノを選ぶ人が増えているようです。そんな時代のクルマを求めて生まれたのが、《w・i・c》です。(中略)スペックよりも“雰囲気”で選ぶ。さりげなく、オシャレに乗れる。そんな“mono(モノ)”感覚のクルマが《w・i・c》です。
このw・i・cほぼそのままのカタチで2002年に発売されたザッツは前述のとおり、1998年にデビューした3代目のホンダ ライフがベース。
3代目ライフの車台とドライブトレーンに、「ラウンドスクエアデザイン」とうたわれた四角くて角が丸いボディを載せています。
この四角いカタチは「軽規格のなかで最大限の居住空間を得る」という機能要件ではなく、どちらかといえば「シンプルさ」「さりげなさ」を訴求するというデザイン面での理由で採用されたものでした。
そしてドライバーが「自分のための空間」と感じられるファーストカーパッケージを実現させるため、ルーフの四隅は運転席から遠ざけられ、ウィンドウを立たせてレイアウトを採用。
言わば、目指したのは「若い男性向けのちょっとステキなワンルームマンション」といったところでしょうか。
搭載エンジンは自然吸気の直3SOHCと、そのターボチャージャー付きの2種類で、トランスミッションはいずれも3速AT。駆動方式はFFのほかに4WDも用意されました。
そんなこんなでスタートしたホンダ ザッツは、当初「月販6000台」を目標としていましたが、発売翌年の2003年には早くも月平均1500台前後まで落ち込み、2004年には月平均800台前後という惨状に。
そのためホンダは2004年10月、ベース車より18万円近く安い「スペシャルエディション」を投入。このグレードはよく売れたのですが、ザッツというブランド全体のパワーを押し上げたわけではありませんでした。
そして2006年2月に、事実上の後継モデルである「ゼスト」が発売されるとザッツのターボ車は廃番となり、自然吸気版のみをマイナーチェンジ。
しかしその自然吸気モデルも2007年9月には生産終了となり、同年10月、ホンダ ザッツは1代限りで販売終了となりました。
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