ホンダ ザッツの叶わなかった挑戦 機能よりモノっぽさで勝負!? 【偉大な生産終了車】

■ザッツが1代限りで消えた理由「新時代」なんて実はなかった??

 好き嫌いは分かれそうですが、「好きな人は好き」だと思われるデザイン性を有していたホンダ ザッツが、あえなく1代限りで消滅した理由。

 それは、ザッツの前身である「w・i・c」のプレスリリースにあった「スペックよりも“雰囲気”で選ぶ」というユーザーが実際の市場にはいなかったか、あるいは極端に少なかった――ということなのでしょう。

 ザッツは、確かに「雰囲気」がある軽自動車ではありました。そして前述のとおり好き嫌いは分かれそうですが、こういったモノっぽいデザインのプロダクトを好む層というのは、いつの時代も確実に存在しています。

リアビュー。「That’s(ザッツ)」という名前には、「クルマと若い人たちとの新しいつきあい方を考える中で、お気に入りのモノを選ぶように『あれだッ。』と思わず言ってしまうような、親しみを持てる存在のクルマになれれば、という気持ち」が込められたという
リアビュー。「That’s(ザッツ)」という名前には、「クルマと若い人たちとの新しいつきあい方を考える中で、お気に入りのモノを選ぶように『あれだッ。』と思わず言ってしまうような、親しみを持てる存在のクルマになれれば、という気持ち」が込められたという

 しかしホンダ ザッツは、言ってみれば「雰囲気だけ」の車でした。

 2002年にデビューしたザッツですが、ベースは1998年デビューの3代目ライフですので、トランスミッションは古くさい3速AT。

 そして、運転者が「自分のための空間」と感じられることができる“ファーストカーパッケージ”についてはある程度成功していたように思いますが、後席は正直、「天井は高いのに足元空間はかなり狭い」というものでした。

 そしてリアシートは座面が短く平坦で、バックレストもヘッドレストも頼りない作り。「物置き」としては十分なのでしょうが、「人間が乗る」には、お世辞にも快適ではありませんでした。

 もちろん当時のホンダの技術者は、そんなことは百も承知だったでしょう。

 制約がある軽自動車規格の範囲内で「どうするべきか?」をとことん考え、

「後席も含めた実用性うんぬんではなく“雰囲気”を重視した軽トールワゴンを作る。そうすれば、モノについての感度が高い今どきの20~30代男性が買ってくれるに違いない」

と読んだわけです。

 その読みについて18年後の今、後出しで批判するわけではありません。しかし結果として、それは間違った読みでした。

 実際に売れたのは、あんまりオシャレではないかもしれませんが、ホイールベースを60mm延ばして後席を広くした2003年登場の4代目ライフであり、同時期のスズキ ワゴンRやダイハツ ムーヴなどの「機能的な軽自動車」でした。

 しかしデザインやたたずまいは決して悪くなかったホンダ ザッツだけに、「これで機能も伴っていれば……」と残念に思います。

 とはいえ実際の開発というのは、さまざまな制約や時代のめぐり合わせの下で行わざるを得ないものですので、まあ仕方なかったのでしょう。

■ホンダ ザッツ 主要諸元
・全長×全幅×全高:3395mm×1475mm×1620mm
・ホイールベース:2360mm
・車重:860kg
・エンジン:直列3気筒SOHCターボ、656cc
・最高出力:64ps/6000rpm
・最大トルク:9.5kgm/4000rpm
・燃費:17.0km/L(10・15モード)
・価格:116万9000円(2002年式 ターボ FF)

【画像ギャラリー】シンプルで飾らないという魅力 ホンダ ザッツをギャラリーでチェック!!!

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