先月(2020年11月)の登録車販売台数ランキングは、1位が19,921台でトヨタヤリス、2位は10,627台でトヨタライズ、そして3位が10,109台でトヨタアルファード、という結果だった。エントリーモデルでさえ350万円もする高額車が、2位にわずか500台の差で3位にランクインするとは、驚きを越えて敬服の念すら覚えてしまう。
ところで、アルファード君臨する高級ミニバン、といえば、日産エルグランドが10月にマイナーチェンジとなっており、その売れ行きが気になるところだ。はたして、エルグランドはマイナーチェンジで、アルファードに一矢報いることができたのだろうか。
文:吉川賢一
写真:TOYOTA、NISSAN、HONDA
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「熱量が足りなかった」マイチェン
マイナーチェンジ直後である、11月のエルグランドの販売台数は、日本自動車販売協会連合会(自販連)の販売台数ランキングでは、残念ながらランク外(50位圏外)と、一矢報いることはできなかった。
もちろん、今後上がってくることも考えられるが、このアルファードの好調ぶりをみると、今回のマイナーチェンジでも、エルグランドは、アルファードにかすり傷すら負わせることはできていない、と考えるのが妥当だろう。
エルグランドは、今回のマイナーチェンジで、安全装備の充実に加え、フロントグリルのデザインを一新したほか、内装も10インチ大型ディスプレイを採用するなど、流行を取り入れ、各所がアップデートされた。
しかし、現行エルグランドは2010年の登場と、基本設計が古すぎるため、目につくところを化粧直しした程度では、驚きは感じられない。一度離れてしまった世間の関心を再び引き戻すには、やはり、衝撃が足りなさすぎた。
かつては月販1万台を超える売り上げを誇った人気モデルだったエルグランドだが、なぜここまで凋落してしまったのか。
やはり「背が高い」のがよかった
アルファードが支持される最大の理由は、分かりやすい「豪華さ」と、強さすら感じる「背の高さ」だろう。あのボリュームのあるボディサイズからくる「威厳」は、エルグランドなど他社車にはないものであり、アルファード最大の魅力だ。
エルグランドは、2010年に3代目へとモデルチェンジを行った際、これまで成功してきた「走りのミニバン」路線を極めるため、全高を1910mm(E51型)から1815mm(E52型)へと大きく下げ、低重心を狙ったスタイルへとなった。
日産としては「強みをさらに伸ばす」という、競争戦略の基本を踏んだわけであったが、これがエルグランドの悪夢の始まりだった。
クルマは背が低いほうがいい、というのは、皆さんもご承知の通りだ。背高の高いクルマは、必然的に車両重心が高くなる。コーナリングではボディの傾きが多くなり、不安定さが増す。また、表面積が大きいことで横風の影響を受けやすくなるし、空気抵抗も増えるため、燃費も悪い傾向だ。
しかしアルファードは、背高であることのメリットを重視した。背高によるデメリットに対しては、リアのサスペンション形式を変更したり、トレッドやホイールベースを広げたり、軽量化をしたりと、できる限りの対策を行った。
そのためアルファードは、でこぼこした道でボディが左右にユサユサと大きく揺れることはあるが、大らかなボディモーションとなるように、乗り心地がコントロールされている。また、ハンドルもグイグイ切れ込むようなセッティングではなく、ゆったりとしたギア比にされている。
据え切りから高速走行まで、ステアリング操舵力が軽いので、操舵感を感じにくい、というネガティブな部分はあるが、高速直進性はしっかりと確保されている。優秀な先進運転支援の恩恵もうけ、乗り心地の雰囲気と合わさって、「アルファードの持ち味」となっているのだ。
車両運動性能エンジニア出身としては腑に落ちないところもあるが、日本で一番売れているクルマは軽スーパーハイトワゴンだ。それを考えると「需要に沿った商品開発」をしたアルファードは、ビジネスとして、正しい選択をしてきたといえる。
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