首都圏を襲った大雪。1000万人以上が住む首都圏であれだけの降雪があれば交通機関はマヒしてしまい、雪用の装備をしていないドライバーがいたこと、また除雪体制が整っていなかったことなど、当日の被害は拡大するばかりだった。
しかし事故予防にばかり重きを置いて、さまざまなシミュレーションが足りなかったというケースもあった。それが10時間以上も利用車がトンネルに缶詰めになったり、除雪が間に合わず数日間に渡って通行止めを余儀なくされた首都高速だ。
東京、神奈川、埼玉などを血管のように張り巡らされた主要道路は通行止めが最善の策だったのか、国沢さんがズバッとお答えします。
文:国沢光宏/写真:Shutterstock.com
ベストカ−2018年3月10日号
■予見できた大雪の兆候
ご存じのとおり1月22日の昼から降り始めた雪により、首都高でスタックするクルマが続出。管理者の『通行止め措置』より前に、まったく機能しなくなった。中央環状線のトンネルなど、10時間も動かない状態となる。翌日の23日は暖かくなったものの、首都高の対策がカンペキな失敗。
残った雪はカチンカチンの氷と化し、通行止めを続けなければならず流通の遅れまで出た。よく「東京は雪に弱い」と言われるけれど、今回の首都高、完全なる人災だ。
以下、ジックリ分析してみたい。そもそも今年の冬は厳しく、私ですら何度も「スタッドレスタイヤの準備を」と書いたほど。
4年前の雪で首都高は大混乱したのだから、本来なら融雪剤を一定量準備しておくべきだった。さらに前日の21日時点で雪が確実な予報となっており、23日の夜半からの寒波来襲も「確実に来る」と判明している。私は21日のブログで「大雪の翌日は暖かいが、夜から猛烈に冷え込む」と書いている。
物流の動脈を担う首都高は、雪になることがわかった時点で優先順位を付けた対応策を行わなければならない。というか、今になって考えてみたら「マニュアルがなかったのか?」と疑問に思う。
ちなみに雪国と違い、首都高全線を除雪することなどできない。そもそも雪捨て場がないからだ。
■前回の教訓をいかせないのはその体質にあり!?
まず最初にやるべきだったのは、当たり前ながらチェーン規制。出口渋滞を招くものの、数日に渡る通行止めを考えたら圧倒的にマシ。
この場合、通行する車両のチェックなど不要。チェーン規制をかけただけで高速に入ってくるクルマは激減するし、チェーンのないクルマなら降りるだろう(チェーン着装しないクルマは違反の旨を電光掲示板に表示)。
同時に、首都高のスリップポイントで重点的に融雪剤を撒く。今回大型トレーラー(チェーン着装車)がスタックした中央環状線の登り坂など典型例。
なにしろ出口である。詰まってしまったため、10時間も閉じ込められることになった。こういった「急所」、首都高に20カ所もない。係員を置けばいいだけなのだ。
もし降雪量が増えて交通が滞ってきたら、その出口だけ通行止めにしたってOK。いずれにしろ充分コントロールできる程度の箇所である。
さらに雪が止んだ時点で融雪剤を全線に散布。16時間ほど気温高い状態だったため(23日の昼間は10度を超えた)、チェーン規制して一定量の車両を走らせたら、完全に溶けたハズ。
その状態で融雪剤を撒いておくと、もはやチェーン規制すら不要になったことだろう。そのくらいは、自動車ヒョウロンカだって簡単にイメージできること。なのに今回首都高はそのような対策をいっさい行わず。
こらもう責任者たる社長の責任だ。首都高の社長、国交省からの天下り。降雪地域の道路管理者のアドバイスを受け、キッチリと指示を出していればこんな体たらくにならなかった。
高学歴のキャリア役人は人の足を引っ張ったり出世争いをやらせたら優秀。けれど緊急事態の対応などできない。次の雪で首都高が混乱するようなら、国交省にお引き取りを願い、民間の優秀な人材を登用すべきです!
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