堅調に売れる車は、発売から5~7年を経過するとフルモデルチェンジを行うハズ。……なのだが、トヨタのヴィッツとエスティマは少し「事情」が違う。
現行ヴィッツは発売から7年以上が経過したものの、2018年2月には登録車中10位の7122台を販売。片やエスティマは現行型の発売から12年近く経過。
2018年2月の販売台数こそ881台と低調気味だが、2016年には全登録車中31位となる年間2万336台を販売。
登場後10年以上が経過したモデルとしては望外に売れていた。なぜ、両車に新型が出ないのか。
文:渡辺陽一郎/写真:編集部
営業マンも苦悩!? ヴィッツが抱える「事情」
まずはヴィッツだが、1999年に発売された初代モデルは、トヨタの海外戦略車にも位置付けられ(海外名:ヤリス)、従来のスターレットとは異なる欧州車風の車作りが特徴だった。
内外装は上質で、居住空間はボディサイズの割に広い。この後2001年にホンダからフィットが発売され、ヴィッツはグレード構成を見直すなど対抗策として買い得感を一層強めた。
2005年にはヴィッツが2代目にフルモデルチェンジされ、内外装をさらに上質にして見栄えはミドルサイズ並みになった。乗り心地や静粛性も向上して、日本車ながらもプレミアムコンパクトカーの雰囲気を感じさせた。
ところが、2010年発売の現行型には驚かされた。車内に入るとインパネ周辺の質が下がり、走らせればノイズが大きく、特に直列3気筒の1Lエンジン搭載車は騒々しい。乗り心地も14インチタイヤ装着車を筆頭に粗さが目立った。
取り扱いディーラーのネッツ店からは「3代目の新型は(質感が下がったために)2代目の先代ヴィッツを使うお客様にすすめられない。セールス活動に支障が生じている」との声も聞かれた。
そこでヴィッツは2012年に内装に改善を加え、2014年には新型エンジンの搭載と併せてスポット溶接箇所の増加、ボディ底面に装着された補強材の大型化、吸音材/遮音材/制振材の追加などを行った。
この時に喜んだのがネッツ店のセールスマンで「ようやく先代ヴィッツのお客様に乗り換えの提案ができる」と語った。
2015年には緊急自動ブレーキを作動できる安全装備のトヨタセーフティセンスCを採用して、2017年にはハイブリッドを設定。この時にもスポット溶接箇所を増やして新しいショックアブソーバーを採用した。
発売後に足まわりの硬さを調節する程度なら理解できるが、スポット溶接箇所を増やして補強材も変更するとなれば話は別だ。
3代目の品質低下を発売後の改良が裏付けており、未熟な商品を市場に投入したことになってしまう。セールスマンに「先代ヴィッツのお客様にすすめられない」と言わせたのでは、新型車として失格だろう。
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