現行ヴィッツの質感低下と新型が遅れている理由
質感低下の背景にあったのは、2009年に深刻化したリーマンショックだ。世界的な不況で、国内市場に与えた影響も大きい。
国内の販売総数を対前年比で見ると、2008年はマイナス5%、2009年にはマイナス9%で461万台まで下落した。2017年の523万台に比べると88%、国内販売がピークだった1990年の778万台に比較すると59%であった。
この不況はすべての新車開発にも影響を与え、ヴィッツの質感低下、フルモデルチェンジの遅延もこの点に起因している。
ちなみに欧州のヤリスは2012年にハイブリッドを設定したが、国内のヴィッツが用意したのは2017年だ。
開発者は「トヨタは全車にハイブリッドを用意する方針だから、カローラなどに続いてヴィッツにも搭載した」とコメントしたが、あまりコストを費やさずに売れ行きを維持する目的もあっただろう。
世界的に厳しくなる経済環境、安全/運転支援/環境技術などの研究開発に伴うコストアップが、フルモデルチェンジの周期を長引かせている。
エスティマは新型の計画がない?
同様の厳しさはエスティマにも当てはまるが、ヴィッツと異なる事情もある。それは国内におけるミニバンとエスティマの需要動向だ。
エスティマはオーストラリアでタラゴの名称でも売られるが、基本的には国内を重視して開発される。同じプラットフォームを使うヴェルファイア&アルファードは、海外を含めて人気が高まり2015年に現行型が発売された。
しかし、エスティマは今後の販売動向が不透明で、フルモデルチェンジに踏み切れない。少子高齢化が進むと、ミニバン市場全体が縮小に向かうことも不安材料だ。
それでもエスティマのファンは多いから、フルモデルチェンジを行って欲しい。
トヨタの開発者も「仮にヴェルファイア&アルファードのプラットフォームを使ってエスティマをフルモデルチェンジすれば、卵型のボディ形状で空気抵抗が抑えられ、タイヤも細くて済むから、現行型以上に経済性と走行安定性の優れたLサイズミニバンになるだろう」という。
そこで「すでに開発を進めているのか?」と尋ねたら「計画はない。私の妄想だと考えてくれ」とのことであった。
ヴィッツとエスティマの新型に二の足を踏む理由
ヴィッツとエスティマ、さらに基本設計の古いすべての乗用車がフルモデルチェンジされない一番の理由は、メーカーがその商品の将来に自信を持てないことだ。
「魅力のある商品を開発して、想定された台数を確実に売ろう」という具合に考えられない。
特に国内市場については、各自動車メーカーとも軽く見るようになった。世界生産台数に占める国内比率も、ダイハツを除くと20%以下だ。
海外では新型車が続々と発売されるのに、国内では7年以上を経過した古い車種が増えていく。トヨタや日産は、どこの国の自動車メーカーなのだろう。
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