かつては、乗用車やスポーツカーの王道であった、FR(フロントエンジン後輪駆動)車。しかしいまでは、ハイパワーエンジンを搭載する高性能なスポーツカーは、軒並み4WD化をしており、FRは一部のスポーツカーや高級セダンなどに残されているのみで、もはや数えるほどしか残っていない状況です。
日本で最も売れているFRセダン「クラウン」ですら、現行モデルを最後にSUV(FRベースだが4WD)になる、という報道が流れるなど、衰退の一途をたどっているようにみえるFR車。はたして日本のFR車は10年後にも生き残れるのでしょうか。考察していきます。
文:吉川賢一
写真:TOYOTA、NISSAN、LEXUS、BMW、Mercedes-Benz、ベストカー編集部
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FR車でなければならない理屈を説明するのは難しい
日本の主要自動車メーカーにおいて、今日時点、ホームページ上に掲載されているFR車を書き出してみると、トヨタはセンチュリー、クラウン、ミライ、グランエース、ハイエース、スープラ、86、(商用車ピクシストラック)の7車種で、レクサスは、IS、RC、RC F、LS、LCの5車種。日産がシーマ、フーガ、スカイライン、フェアレディZ、NV350の5車種で、ホンダ該当なし。マツダは、ロードスター、スバルBRZの2車種のみで、三菱は該当なし、という状況です。
どれも話題にはなるクルマではありますが、高額車が多いこともあって「売れまくっているクルマ」とはいえないクルマたちです。
「FR車であることのメリット」については、例えば、加速時に後輪へと荷重移動するので駆動輪のトラクションがかけやすく大トルクエンジンが搭載できる(※FFはフル加速時に駆動輪荷重が足りずにスリップしてしまう)ことや、フロントタイヤは操舵でリアタイヤは駆動という機能分離ができるので「自然なハンドリング」になりやすい(※FFは前輪が駆動と旋回の両方を担うため摩擦円限界が狭い)、などがよくいわれる点です。
しかし、トラクション性能に関して言えば、4WDの方が圧倒的に速い加速を得られますし、「自然なハンドリング」ということに関しても、FFのゴルフが実現しているシャープで滑らかなステアフィールを「自然ではない」と表現される方もなかなかいないでしょう。
むしろ、FR車のデメリットである、「リアデフを組み込んだリアサスのため、後席や荷室レイアウトが難しくなる」ことや、「FFと比べてプロペラシャフトなどの部品点数が多くなる」 「クルマ全体が重くなる」 「リアデフが発熱する」 「前後異幅タイヤの場合タイヤローテーションができない」など、ひとことで言うならば、FR車には「無駄が多くて高い」という要素が多く、FRでなければならない理屈を、明確に説明することは難しいです。
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